大人の階段は一歩ずつ確実に


『あっれ、神楽ちゃん?』

「あっ、!!」



公園でサボ…巡回していたら、定春と遊ぶ神楽ちゃんと出会った。



―大人の階段は一歩ずつ確実に―



「こんなところで何してるアルか?」

『サボ…見回り中だよvV』



にっこりと笑って、神楽ちゃんの頭に優しく手を乗せる。



「どーせサボってたんだろ?」

『ぁあん?』



後ろから聞こえた声に、振り向いて眉をひそめ、一睨み。



「オイオイ、不純異性交遊はダメだって銀サン言ったろ?」

『オイオイ、お前の頭の髪の毛の方が不純異性交遊だよ。』

「え、何?この天パのこと言ってんの?」

『そうだよ。卑猥すぎるから剃っちまえ。生え変わったらストレートになるかもよ?』

「残念だけど、そんな儚い夢なんてとうの昔に捨ててるから。」

『そんなお前の腐った頭を捨てちまえ。』

「うるせぇよ、お前のストレートで長くてキレイなその髪一本一本引っ張ってチリチリにしてやろうか!?」

『やれるもんならやってみろよこの天パ!!』

「あーやってやるよコノ女顔!!」

「銀チャンうるさいアル。」


ゴスッ!!



「私のをいじめるのは、この私が許さないネ。」



傘で頭をど突かれた銀サンは、少しばかり痙攣しながら地面と今日和。



『…ピクピクしてるよ?』

「気にしなくて良いアル。いつものことネ!」



可愛らしい笑顔で小首をかしげる神楽ちゃんに背筋が凍ったのは、此処だけの話。



『いつも此処で遊んでるの?』



近くのベンチに2人で腰を下ろす。
定春は、一人で公園内を走り回っている。
…デカ過ぎて、遊具が恐ろしいほど小さく見える…



「そうョ。此処、広くてすごく好きアル。」

『ふーん…銀サンといつも来るの?』

「うん。でもいつもはコレにもう一人いるネ。」



“もう一人?”と首をかしげると、神楽ちゃんはニコッと微笑んだ。



「ダメガネアル!」

『ダ…ダメガネ?』

「そうアル、ダメガネ。」



輝かんばかりの笑顔を俺に向ける神楽ちゃん。



『そう…今日はいないの?』

「今日は留守番ネ。」



足をブラブラさせながら、ポケットをまさぐる神楽ちゃん。



『…その人に一度会ってみたいね、何か…』

「よろず屋にくればいつでも会えるョ!」



ピョンッと立ち上がった神楽ちゃんは、俺のほうを向いた。



「酢コンブ切れてしまったョ、買ってくるネ!」



“銀チャンをよろしくアル”と言いながら、神楽ちゃんは公園の外へと行ってしまった。



『…酢コンブ、おいしいよね…』



神楽ちゃんという人物が、よく分からなくなった…



『…はぁ、銀サンよろしくって言われてもなぁ…』



俺は未だに倒れている銀サンの側にしゃがんだ。



『…生きてんの?』



チョンチョンっと、人差し指で銀サンの頬をつつく。


ガッ!



『ひっ!?』



すると突然、腕を掴まれた。



「…ちょっ、起こしてくんない?」

『い、生きてたよ…ってか、すごい血だよ?ど突かれただけなのに…』



恐ろしいほどの神楽ちゃんの力に恐怖を感じつつ、俺の腕を掴んでいる銀サンの腕を掴んでよいしょと立たせる。



「いやぁ、すまねぇなぁ…ったく、あのパワフル娘め…略してパワ娘だ“」



アレ、パワ娘って、ノー娘みたい…(詳しくは「そこに棲まう者」を見よう!)



 「ってアレ?神楽の奴何処に行った?」

『んあー?酢コンブ買ってくるってさ。』



俺は近くの水道で手ぬぐいを濡らしながら答えた。






「またかよ。定春置いて行きやがって…ってむおぉぉっ!?ちょっ、定春おいっ!そんなトコでオイタすんなっ!!!やめっ、そんなトコで大な方出しちゃったら近所のガキんちょ共が肥やしまみれになっちまうだろうがあぁぁぁっっ…あー…」



ひんやりと湿った手ぬぐいを持って振り向くと、脱力したカンジにベンチに座る銀サンと、スッキリした様子の定春と…遠くに見えるほっかほかの物体は見なかったことにしよう。



「あーくっそー…だから母さん言ったのよ、犬を飼いたいんならちゃんと世話しなさいって。結局全部俺がやってんじゃねぇかよ…。」

『銀サンお母さんだったの?』



銀サンの前に屈んで、血だらけの顔を手ぬぐいでそっと拭く。



「うおっ!?」

『ちょっ、動くな!!』



出血は思ったよりひどくなく、血を拭うだけでも大丈夫そうだ。



「あ〜、なんか…」

『ん?』



首まで流れた血を拭いていると、銀サンがおもむろに口を開いた。



「調子狂うなぁ…」

『何でさ?』



頭をガシガシと掻く銀サンを見上げると、死んだ魚の目みたいな目が、一瞬きらめいた。(気がした。)



「お前、なんかなぁ〜」

『ぅおっ!?』



手ぬぐいを持つ俺の手首を、銀サンはがっしりと掴んだ。



「手ぇ小っちぇし手首も細ぇ。チビだしほら、こんなに華奢だ…」

『やっ、やめろ離せこらっ///////』



銀サンはそのまま俺の腕を引っ張って、腰に腕を回した…否、抱きしめた。

…くそぅ、今俺の顔は真っ赤だろう。



「首も細ぇなぁ…」

『はっ離れろばかぁっっ/////;』



俺の首元に顔を埋める銀サンは、後ろで一つに結われた俺の長い髪に触れた。



「真っ直ぐでキレイな髪だ…」

『はっなっれっろっこの変態いぃぃぃぃぃっっ(怒)』



俺は思いっきり、銀サンを突き飛ばした。



「いって〜…お前なかなか力あんなぁ。」

『うるせぇこの変態!!お前ホモかっ!?』

「あー、銀サンのこのバッチリな容姿なら、BLもありえるね。」

『…テメェ…そんなに俺に抜刀して欲しいのか、そーか、そーなのか………………腹ぁ括れや白髪アタマアァァァァッッ(激怒)』



俺は腰の刀に手をかけ、勢いよく抜こうとした。



「ばっ、ヤメヤメヤメっ!!すいませんでした思いとどまってくださいさんっ(汗)」



銀サンはすばやく俺の懐に入り込み、刀を抜こうとした俺の腕を押さえた。



「ごめっ、ホントマジゴメン!!ちょっとからかっただけだからさっ、ジョークだってアメリカンジョーク!許して、な?」

『はぁ、はぁ…次やったら確実にお前の腹には風穴が空くからな…』

「はい、もうしません、この天パに誓ってもうしませんからこの手離してください!」

『………。』




俺は刀から手を離し、その場に落としてしまった手ぬぐいを拾って水道へ向かう。



「アラ、何処行っちゃうの?」

『コレ洗ってくるんだよ!アンタ自分の頭よく見てみろハゲ!!』

「…俺、ハゲてないって。」



銀サンのアタマからは、再び血が流れ出していた。
…きっと、さっき思い切り突き飛ばしたせい…だと思う。



『いーから、おとなしく座ってろ!』



俺はプイッと前を向いて、走り出した。










「…顔真っ赤にしちゃって…可愛いなぁクソッ///////」




『あ゛ー、バレたかと思った…一体なんなんだよもうっ/////』



俺は手ぬぐいを洗いながら、ブツブツと独り言。



『はぁ…早く神楽ちゃん戻って来ないかな…』



よいしょっと腰を上げて、ぐっと背伸び。

くるりと後ろを向いて、ベンチに座る銀サンの元へと歩き出す。



「おー、戻ってきたかー。」



早く拭いてくれといわんばかりにこっちを見る銀サンを、激しく凝視する。



『………。』

「なんもしねぇから、な?信じてくれよ;」



お手上げというカンジに両手を軽く挙げ、肩をすくめてみせる銀サン。(お前はアメリカ人かっ!!)

俺は用心深く近づいて、額に流れ出していた血を拭く。

ちらりと銀サンの顔を覗き見ると、今まで見たこと無いくらいの笑顔でこちらを見返してきた。



『んなっ!?;』

「んー?」



♪マークが飛んできそうな笑顔の銀サンを見て、俺は一歩後ずさり。



『きっ、キモイ…;;;』

「なっ!?人の笑顔をキモイとは失礼な!!人間、笑顔と寝顔と感じてる顔が一番萌えるんだよ!!」

『うっせ、お前じゃ萌えねぇよ下ネタはヤメロ禿!!』

「ちょっ、なんかハゲって漢字で書かれたほうがダメージ少ないって今気づいた!!」

『だったらいいじゃねぇか文句言うなハゲ!!』

「はげはげ言いやがって…俺まだ禿げてナイからね、ふっさふさだよもう!!」

『何がふっさふさだよこの天パ!!お前、どうせ下の毛も白いんだろ!?ふっさふさなんだろ!!?』

「白髪じゃない、銀髪だっっ!漫画のタイトルも俺の名前も銀じゃん!!ってか、俺はもう大人だから下の毛なんてとっくの昔にふっさふさだよ!!そういうお前はどうなのさ!!大人か?もう大人なのか!!?」

『俺はまだ16だっ、大人の階段駆け足で上ってる真っ最中なんだよ!!』

「ほぉ、じゃぁ生えてるな?生えてるんだな!?どーれ、お兄さんに見せてみろ。きっと大人の階段一段飛ばしくらいで上れるから。」


『うるせえぇぇぇっ!来るな寄るな近づくなド変態!!顔がエロいんだよこの天パめぇ!!!大体俺くらいのお年頃だともう大人の階段3段飛ばしぐらいで上ってきてんだよほっとけコラアァァァッッ(怒)』



じりじりと近づいてくる銀サン、じりじりと後ずさりする俺。

…あぁ、一体なぜこんなことを真昼間の公園で叫ばにゃなんらんのだ俺は。



「…ムキになるところが妖しいなぁ…お前くらいの年ならだれでも、友達同士で見せ合ってデカイやら黒いやらとキャッキャキャッキャするだろう。」

『しねぇよ馬鹿!!お前の青春一体どんなだよ、寧ろ見てみたいわっ!!ってかいつまで引っ張るつもりだこのネタ!!』

「安心するネ、今終わらすアル。」

ゴスッ!!

ドサッ…



「大丈夫アルか?」




気づいたら、銀サンは白目を向いてその場に倒れて、その後ろには傘をさした色白の可愛い女の子の姿。




『神楽ちゃん!!』

「まったく、一体何を考えてるアルかこの男は…よりにもよって私のに猥褻行為を働くなんて…」



ゲシッッと軽く銀サンに蹴りを入れた神楽ちゃんは、定春を呼んだ。



「定春、そろそろ帰るアルよ!銀チャン加えるヨロシ。」

「わんっ!」



可愛らしい鳴き声とともにやってきた定春は、銀サンを咥えてサッサと歩き出した。



、銀チャンが迷惑かけてしまったアル…すまなかったネ。」

『え?あ、いや、いーよ別に…それより酢コンブ、買えた?』

「うん!」



にっこりと笑った神楽ちゃんは、俺の手に一箱の酢コンブを乗せた。



「お詫びに、一つあげるョ。」

『あ、ありがとう…いいの?』



“もちろんネ!”と笑った神楽ちゃんは、手を振りながら定春の後を追った。



「今度はよろず屋に来るアル!きっとダメガネ紹介するョ!!」

『分かった、じゃぁまたね!!』



遠ざかっていく神楽ちゃんと定春を見ながら、俺は大きなため息を一つ吐いた。



『…銀サン、変な奴…』







→おまけ










よろず屋にて。



「銀チャン、今度結夜に変なマネしたら許さないアルよ!!って聞いてるアルか!?」


「…可愛い奴だな、アイツ…」

「…このクサレ天パアァァァッッ!!!」



ドゴオォッ!!



「ぐふぅっっ!!」





NEXT




あとがき



うはぁ、なんじゃこりゃ…(汗)


リトちゃん、こんなのしかできなかったよぉ<(_ _;)>

くっそぅ、せっかく素晴らしい夢をもらったのに…(切腹

こんなんでよければ、もらって欲しいですたい(泣)
ってか、もう押し付けですよ(超笑顔

…ごめんね…



〜afterword〜

銀ちゃんありがとね!!(銀汰なので銀ちゃんと呼んでます)
十分いいよwコレ面白いし…ってか…二人の会話が…ヤバイっす…

俺っちもそんないいもの渡してないんでェ…もうすっごく嬉しいよ!!