生きて紡ぐ詩
「んなっ!?テメェゾンビかッ!?」
ビシッ―と刀の先を向けてくるチカ。
はそれを指先で摘んで払うと、3人を見渡してこう言った。
『ゾンビはそこの2人っしょ』
「えっ‥‥υ」
その言葉に驚く3人。
みちるは思わず口を開いた。
対してチカ、シト両者はを睨み付け、今にも襲いかかりそうである。
『何その目?‥‥警戒モード全開って奴?』
右手の炎を見つめ、軽い調子で言ってみれば
2人の表情がより険しくなった。
めんどくさ‥‥。
心の中でため息をつくと
両腕をだらんと下げ、無防備なのをアピールする。
だがその場の空気は変わらなかった。
「先程のエクトプラズム‥‥貴様違法ゾンビか?」
「おっ。なら手っ取り早く始末しようぜ」
「だっ、ダメですよ!!まだそうと決まったわけじゃ‥‥」
2人を抑えようと必死になるみちる。
3人のやり取りに少し笑いが込み上げてくる。
思わず吹き出しそうになったが、それを堪えた。
『あーごめん。残念ながらゾンビじゃない』
見える?これ・・・、と首元を緩めて見せた。
みちるが小さく、あれ?と呟く。
「どうした、みちる?」
「あ、いや。無いんです、黒い輪」
「はぁ??お前もっとちゃんとやれよ」
「や、やってますよっ」
また笑いそうになった。
ホント、この対照的な奴等は何なんだろ。
『君達さ、Zローン?』
その単語で一気に空気が張った。
橘が一歩前に出て、あたしを睨み付ける。
「何故それを‥‥。いや、その前にだ。貴様は‥‥」
『だけど』
「んなの今更言われなくたって分かるっつーの!」
『へー。赤月君、あたしの名前覚えててくれたんだー』
覚えそうもないのに。
付け足して言うと、何だと!?と怒鳴られてしまった。
「だからね、さん。君がしっかりと説明してくれれば危害を加えないつもりだよ」
本日2度目の営業スマイル。
やっぱ作りもんっぽい上に信用ないな、この笑顔。
『そういうの、あんたらの雇主に聞いた方が早いんじゃねーの?』
急にの口調が変わった事に、3人の眉がピクリと動いた。
だがは気にせずに続けて言葉を発する。
『俺はゾンビじゃねーけど、君らの仲間‥‥とだけ言っておくよ』
「俺?仲間?」
橘が何を言ってるのか分からない‥‥と言った顔で見てきた。
紀多さんも頭に疑問符を浮かべている。
『あ、俺ってのは気にすんな。仕事モードの時自然とこうなっちまうんだ』
「そうなんですか!私てっきり‥‥」
「どうでもいいだろ、そこはよっ」
問題は仲間の方だろうが。
赤月が俺を睨みながら言った。
「で、結局オメー何?ゾンビじゃねーなら何でエクトプラズム使えんだ」
「納得のいく説明お願いできるかな、さん?」
チンピラ1人とにっこにこしすぎて逆に怪しい奴が1人‥‥俺に迫ってきた。
『口で言うの面倒だろ』
気だるそうに言い放って、は後ろを向いた。
そしてすぐに振向いて、辺りに散らばってるものを指差す。
『その辺片付けて、そいつ送っといて』
それだけ言うと、は歩き出した。
「おい!何処に行く!?」
「てめっ、逃げる気かっ!?俺から逃げられると思ったら大間違いだぞー」
「ちょっとチカ君。近所迷惑ですよ」
追いかけようとするチカをみちるは押さえ込む。
案外あの中では紀多さんが一番冷静なのかもしれないな。
「あの、さん。明日学校来ますよね?」
ほら、やっぱり。
意外とこの子、冷静だ。
『また明日ね、紀多さん、赤月君、橘君』
はシトの様にニッコリと笑うと、その場から消えた。
「なんだってんだアイツー!!あーもー面倒くせぇッッ」
地面を何度も蹴りながら叫ぶが、特に意味もなく
疑問とイライラが募るばかりだった。
「仲間とは何だ?それに渡し守に聞けと言っていたな」
顎に手を添えて考え込むシト。
チカとは大違いだ。
「うーん‥‥明日鼈甲さんに聞いてみます?でもその前にさん本人に会えますけど」
「まあ、本人から直接聞いた方がいいだろう」
「渡し守は全て言うわけじゃねーしな」
。
本人自身、自分が何なのか分からないのだから
この3人も分かるわけがなかった。
エクトプラズムの様なものを扱う、ゾンビではない人間‥‥。
一体何者なんだ?
シトの脳裏に先程の炎が焼き付いていた。
「だーぁッ!!考えてても埒があかねぇッッ!!」
頭をガシガシと掻き乱し、チカはみちるの手を引っ張って歩き出した。
「出直すっぞ!明日だ、明日!帰るぞ、オラ」
「え、あ、はい。ってチカ君痛いですよッ!!無理矢理引っ張らないでください!!」
「赤月、お前はもうちょっと考える事を学ぶべきじゃないのか?」
「うっせッ!!お前は考えすぎなんだよ」
そう言うチカだったが、頭の中はの正体についての疑問が広がっていた。
――‥「また明日ね」‥‥――
やってやろーじゃねぇか。
明日、全てを明かしてやる。
だから、、
。
逃げたらひゃっぺんブッ殺すッ!!!
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