――‥‥「貴方がさんですね‥」‥―
生まれてから何度自分の親を憎んだ事か。
生まれてから何度自分の将来を憎んだ事か。
――――――‥‥・・・
「‥あそ。つまりあたし‥‥いや俺はその人間を食らうっていうバケモノを倒せばいいんだな」
「ええ‥簡単に言えばそうです」
「詳しい事は教えてくんないんだろ、なぁ‥彼岸人」
「渡し守‥と呼んで頂きたいですね」‥‥――
この血のせいで。
この身のせいで。
鏡に写る屍を見てはため息をついた。
――‥‥「ああ、構わねぇよ。なんたって‥‥
俺もバケモノだし」‥――
何度死のうと思っただろう。
ZOBIE-LOAN ―another way―
生と詩 生きて紡ぐ詩
「葬送完了‥‥」
光がふわりと昇っていった空を見上げながらは呟いた。
先程まで自分が戦っていたのは、ゾンビと呼ばれるバケモノらしい。
ぱっと見た感じでは分かりにくいのだが、俺には分かる。
生物だろうが静物だろうが全ての物に波動はあり、
その波動の違いを察知する能力が俺にはあった。
離れていたら分からないが、少なくとも視力2.0の視界が届く範囲なら、だいたい感じ取れた。
俺はバケモノだから。
俺は人間ではないから。
だがもちろんゾンビでもない。
俺はただのバケモノ。
獣と言うには己の弱さは程遠く、
かと言って気の狂った犯罪者ってわけでもない。
自分自信‥‥
自分が何者なのか分からないんだ。
数日前、一学期が終わり明日に夏休みを迎える夜。
夜更かしして友人と遊んだ帰り道に奴がやってきた。
彼岸人。
俺は彼岸人が嫌いだ。
俺の父親は彼岸人。
だが母親はただの人間。
普通なら特に変わった事など起きなかった‥‥はずなのに。
俺、は違った。
俺の魂は異世界のものらしい。
邪悪な念を吹き飛ばす力のある巫女の心の半分が俺の魂に封印されてると親父は言っていた。
俺は生まれつき魔力があり、まだ1歳にも満たない赤ん坊の時に空間に歪みを作ったと言う。
その力の開放を恐れた彼岸人は‥‥
俺の力を発揮させない様にと巫女の力を封印した。
だが巫女の力は余りにも強く、全ての力は押さえられなかった。
俺は時々異世界に自らの力で渡り、弱い人間を助けては旅をした。
それくらいなら、残された魔力でもできたのだ。
つまり俺は‥
無駄に長寿で不思議な力の使えるただのバケモノとなった。
生きる事は何の意味も成さない。
だからこそ、人を助ける事によって自分の生きる意味を作ってきたのだ。
――‥‥「さん、貴方‥‥その力にあった
とびっきりの仕事してみる気、ありませんか?」‥――
猫背の彼岸人だった。
表情は暗く、いかにも『怪しい奴』という面影である。
この彼岸人の名前は、鼈甲と言うらしい。
丁重に渡された名刺にそう書いてあった。
「本来なら、威勢のいい死人としか取り引きしないのですが、貴方は別。
どうです?命の融資は必要ない様なので、貴方に生きる意味を与えると言うのは」
「アンタに得があるだけで、俺には何の得も見出だせないんだが」
「直に分かるでしょうよ。さあ、どうします?」
「・・・・・・」
親を憎み
血を憎み
生を憎み
そんな俺でも・・・
生きる意味を見出せるのか
「融資なんていらねぇ」
「ああ、そうですか」
「だが・・・」
ふっと笑い、猫背の男を見据える。
「ボランティア・・・・・・やってやらぁ」
こんな怪しい取り引きに・・・
俺は承諾をしてしまった。