街中で…



賑やかなかぶき町にある繁華街。

私、はそこに買い物に来ていた。


・・・私の雇い主である、銀ちゃんにお遣いを頼まれて。






『おっ・・・重っ!!』



銀ちゃんひどいよ・・・神楽ちゃんも・・・。



そんな風に思いながらも、
重たい荷物を抱えながら、私は万事屋までの道を歩いた。






何故こうなったかというと、

それは今朝のこと。



銀「なァ、チョコ大量買ってきてくんない?
銀さんもう糖分摂取しないとダメだわ・・・。
今何か変な幻覚見えるもん」


ソファに寝転がり、ジャンプを頭から被りながら言ってきた。


神「それなら私も酢昆布買ってきてほしいネ!!
たっぷり買ってきてヨ、


彼の向かい側に座る神楽ちゃん。
彼女は傘の手入れをしながら頼んできた。


はァ・・・、なんで私が・・・。



不満に思いながらも頼まれたら断れない体質の私。

文句一つ言わず、万事屋を後にした。



『ホント重いよ・・・コレ』



抱えていた荷物を覗き込んだ時だった。


―ドンッ―

『きゃっ!!』


体に重たい衝撃がきた。
体が押されて袋一杯の荷物を落とし
衝撃のあまりは倒れそうになった。


反射的に目を瞑り、
この後来るであろう痛みをただ待った。


だけど、感じるはずの痛みがない。
なかなか来ない衝撃に疑問を感じた。


『ん…!?アレ?痛くない?』


おかしい・・・。
そう思って目をゆっくり開けてみた。


「大丈夫か?」

『んぎゃっ!?』


視界に大きく入ったのは、土方さんだった。

急なことで驚きが隠せない。


冷静になって周りを見てみると


彼は買い物袋を片手で持ち、
をもう片方の手で支えていた。


『ひ・・・じか・・・たさん・・・』

土「ぁあ?」


声と言えない程小さな声で、彼の苗字を紡いだ。

掠れた言葉が耳に入ったのか、聞き返してきた土方さん。


『あっ…ありがとうございます』


未だ支えられている事に気づき、咄嗟に離れて頭を下げる。



土「お前…万事屋の…」


私の顔を見て、思い出した様に言う。

懐から煙草とライターを取り出し、火をつけた。



『はい!っていいます』


その様子を見ながら、
考えてみれば名前を告げた事がなかったと思いながら彼に名乗る。



土「そうか・・・。
そんで、お前は何でこんな重いもん持ってんだ?」



目の前で背筋を伸ばした彼は少し重たそうに荷物を持っている。


ああっ!まだ持たせたままだった!!



『本当にありがとうございました!
……あの…荷物―――」

土「送ってく・・・」


土方さんは私の顔を見ずに、重い荷物を持って歩きはじめた。


『ひっ土方さん!!私が持ちます!!それに・・・送っていただくなんて!!
まだ寄らないといけない所もありますし!!』


焦って追いかけて、荷物を取り返そうとする。

だけど荷物は未だしっかりと彼の手の中にあって、私は混乱していた。


土「まだ何処か行くのか?
・・・なら俺が荷物運んでやる。お前には重いだろ」



土方さんはやっとこっちを向いた。

目を合わせてはくれなかったけど。


折角の優しさを、拒むのもどうかと思った。

だから私は一言笑顔で、ありがとう、と告げた。



土「・・・・・・」


無言になる土方さん。
どうしたのかと困る私。


こっちを向いたままなかなか動かないので心配になってきた。



『・・・あの』



***



が控えめに俺に声をかけてきて、体が一瞬ビクッと動いた。


土「あっわりぃ」


少し焦りながらもなんとか声を出す。


『どうしたんですか?』


見惚れてたなんて悟られたくなくて顔を背けた。


少し熱くなっている顔を見られない様に
前を向いたまま後ろに向かって言う。


土「行くぞ!何処に行くんだ?」

『銀ちゃんにチョコレート買うの頼まれて・・・』



まだ買うのか・・・?


呆れる。それを食べるはずの奴にもだが、目の前で買うものでも思い浮かべているであろう女にもだ。



土「十分買ってんじゃねーか」



思った事を口にしてから少しだけ焦った。

は俺の言葉を聞いてから表情を曇らせたからだ。


『銀ちゃんに頼まれた”ジャンボチョコ”がなかったんです』



なんだ、それでか。

心を落ち着かせる俺。
安堵感によるため息をついた。


アレ?何で俺安心してるんだ?



土「・・・まったく万事屋の奴、根っからの甘党じゃねーか」


『失礼ですけど、私にはあなたもものすごいマヨラーだと思いますよ』


土「んだと?」

『すみませんυ』





***




土「土方スペシャルだ!食うか?」


目の前に差し出されたマヨネーズの塊。

いや、正確にはご飯の盛られた丼のはずなんだが、黄色い物で埋まってる異常な状態。


『いえ・・・遠慮します』


あの後私達は、休憩しようって事でファミレスに寄った。


丁度昼飯時だったため、お腹も空いていた。

何を頼もうか悩んでいたら、既に土方さんは自分の名前のついた物を注文していて

へえ〜常連さんなんだ・・・

と思っただけだった。



そして注文した物が運ばれて唖然。


そして冒頭に至るわけだった。



―ポツッ―

窓の外から小さな音が聞こえ出した。
ふと外を見てみると、小さな水滴がぽつぽつと空から降っているのが見えた。


『あッ!雨…』


私がそう呟くと、土方さんはマヨ丼をかき込んでいた手を止めて私に向かって言った。


土「もう少し…雨宿りしてくか・・・」






***




『雨…止みましたね』


暫く外を見ながら待っていると、雨が止んだ。

のその言葉を合図に俺は、行くか・・・と呟く。




ファミレスから数分歩くと、階段にたどり着いた。

其処は雨で濡れてて、滑りやすそうだ。


土「滑らねーよう気を付けろよ」


そう言ってやると、はへらっと笑って、はい、と言った。


・・・・・・。


俺ァどーにかしてやがる。
どーしたってんだよ俺・・・
なんでこんな気持ちになるんだ?


の笑顔を見てから、俺は毎回赤面してる。


思春期のガキか、俺は。


『ひっ』


小さな悲鳴が耳に入った。

言ったそばから転びやがった、アイツ。


土「おッ…オイ!!!!」


咄嗟に手を引っ張って体勢を整えようとしたが、

俺はそのままと一緒に階段から転び落ちた。



『いったァ・・・アレ?怪我してない?
アレ?土方さん?何処行っちゃったんだろ、土方さーん!!』


上からの声がする。
その声を呆れながらも聞いていた。

バカなコイツにも、俺自身にも。
今スゲェ呆れてる。


土「…ココだ…早くどけ」

『ひッ…土方さん!!どうして下に?』



下から声をかけると、驚いて飛びのいた


土「巻き添えくらったんだよ」


起き上がってから泥を制服から落とし、煙草を銜えた。







土「・・・俺を巻き込むなよ」


”俺を巻き込むなよ”…か…。

自分でそう言ったが、
自分で巻き込んで行ったんだよな、俺。


ふとを見ると、ふふっと静かに笑っていた。




***



自分が下敷きになって私を護ってくれたんですね。



『ありがとうございます』
土「ァあ?」


私よりも酷い汚れを服につけてしまった彼に頭を下げる。


『護ってくれて・・・ありがとうございます』


ふわっと笑う。
作り笑いとかじゃなくて、自然と笑みがこぼれた。



***



土「・・・べっ別に護った訳じゃねーよ。
勘違いすんな!巻き添え食らっただけだ」


分かった・・・自分の気持ちが・・・。
さっき感じた違和感はこれだったのか。


俺は・・・が好きなんだな・・・。

俺が咄嗟にコイツを庇った理由がわかった。

好きな奴を護らねーなんて・・・男じゃねーよ。



頭ン中がすっきりして、俺は歩き始めた。

は呆然と俺の後ろに立っていた。



***



土「置いてくぞ」

『はっはい!!今行きます!!』



なんか・・・土方さんにドキドキする。


胸の辺に感じる、この気持ちは何だろう・・・。




私がこの気持ちに気付くのはもうちょっと先。


”好き”という儚くても大きい存在・・・

私はいつ・・・気付くのだろうか・・・



でも

遠くはないと思う・・・。



END


〜後書き〜

久しぶりに書きました・・・甘く…なったかな?

一応土方の片思いで、さんはもうちょっと先に気付くってゆー設定ですね!

土「オイ」
管「ひっ!!この声は土方!!」
土「なんで中途半端なんだよオイ」
管「え〜?あたい甘いのとか激しいのとか苦手ってゆーかァ
とにかく恋愛モンって難しいんだよね、シャイだから」
土「シャイとか使ったらカッコ付くとか思ってんじゃねーのか?」
管「土方さんよォいつもいつもうるさいんだよねェ。
はァ眠ッ!寝よう…  グーグー」
土「寝てんじゃねェ!!仕事中に惰眠を取るたァどういう了見だ!仕事舐めんじゃねェよ」
管「コレ仕事じゃねーし。まだ俺仕事やる年じゃねーもん。まだ学生だもん。それに・・・
俺がなめてんのは土方さんだけでさァ!!」
土「総悟と同じ事言ってんじゃねェ!!!」
管「同じ事言ったのはお前が先だろっ!」


管「さん!夢の後にこんなむさ苦しいの読ませてしまってごめんなさい!!
なんで甘い夢の後にこんな変なコントが出んのォ!?って思ったら・・・・・・とりあえずごめんなさい」
土「全くだ」
管「ブチッ…(いかん…折角さんが読んでくれてるんだから)」


でゎまた会いましょう!!