誰にも渡さない




『総悟〜!!早く帰ろ〜よ〜。』



部活で山崎君を相手に稽古をしていた総悟を迎えに
私は武道場に向かった


気付けば外は薄暗く

総悟の胴着も遠くから見て分かるくらい汗で湿っていた



そんなに集中してやってたんだ・・・。




『凄い汗・・・。大丈夫?早く汗拭きなよυ』


少し湿らせたタオルを持ってきて

私は総悟の顔に当てる


「あぁ、サンキュ。」



私と総悟は幼馴染で、家も近いので銀魂高校・・・
略して銀高に一緒に通っている


『じゃ、私外で待ってるから、早く着替えて来てね。』


ふわりと笑うと
総悟を背にして武道場を出た





***




〜、帰るぜィ。」

『うん♪』




外に出ると
が武道場の壁に寄りかかって空を見上げていた




そういえば
いつも一緒だったよな・・・


俺の隣には大抵がいて
の隣には俺がいた


それが当たり前だった




銀高に入るまでは・・・。

土方に会うまでは・・・。







***







「オイ、お前また銀八にいたずらしただろ。」


出た
土方十四郎


自分の席に座ってボーっとしていたに声をかけている

俺はそんな二人をいつも少し離れたこの席から見てんだ



『あ、バレた?』

「あぁ、凄ェ怒ってたぞ、銀八の野郎・・・。」

『ダメだった?』

「ふっ・・・最高・・・。」

『ねっ?あははv』



凄ェ楽しそうに笑ってらァ

前までは俺に向かって笑ってたのに



今じゃ土方に向かって笑いかけてる

全ては・・・


俺が悪いんだけどな。

俺が土方さんなんかをに紹介したのが間違いだった



別に二人をくっ付けようとして紹介したワケじゃねぇ

友達として紹介しただけだ



なのに・・・



何故か二人は予想以上に仲良くなって

最近よく、はアイツと話してる




『あ、総悟ォ!!そんなところで暗い顔してないでこっちで一緒に話そうよ!!』


無邪気に俺に笑いかける

なぁ、お前は俺の気持ち分かってんのか?



俺は、
お前の事好きなんだぜィ




だけどその気持ちに気付いたのも
が土方さんとよく話すようになってから


が俺から少しずつ離れていく様になって
俺はどんどんを見るようになった
いつも追いかける様になった


『ホラ、総悟!』


頭の下に敷いていた腕を引っ張り
は俺を自分の席へと連れて行く


「総悟、お前何しけた面してんだよ。」

「別にそんな顔してませんぜ。」

「オイ、お前・・・。」

「何ですかィ?」


土方さんが口を開きかけた時


「あ、土方、ちょっと保健室に行ってゴリラ連れてきてくれ。」


銀八が土方さんを呼んで、
土方さんは俺の顔を一度見てから席を立った



『近藤君も懲りないねυ』

「あの人の心はまっすぐだからねィ。」

『あはは、言えてる!
でも、ちょっと度が過ぎてるけど(笑)』



さっき土方さんに笑いかけた様に
俺にも笑いかける

のその顔を見ると
少し落ち着く


『あ、総悟。
今からさ、国語準備室行かない?』

「何で?」

『暇だから。
授業サボったっていいでしょ♪』



からこんな言葉をもらえるとは思わなかった

結構真面目な

授業などサボった事が無かった



「分かった分かった。行くぜィ。」

『よし、行こう〜。』




暫く騒がしい廊下を歩くと

国語準備室が見えた



其処に入ってソファに座る

『あ〜やっぱ此処落ち着くね。』

「そうかねィ・・・?
此処は何もねーんでつまらねーやぃ。」



「ちょっと・・・いい加減にしてよね!!」



「『?』」

準備室の外から、女の声が聞こえた

俺達は興味本位でドアに耳を近づけ、声を聞く



「大橋先生、私はもう・・・。」

「何言ってるんですか前原先生、俺はまだ・・・。」




『・・・・・・ねぇ総悟?』

二人の会話を聞きながら
が口を開いた


『コレって保健の前原先生と体育の大橋先生だよね?』

「二人は恋愛関係にあったんだなァ。初耳でィ。」

『私も・・・。』


まさか二人が付き合っていたなんて、と耳をもっと近づける

「だけど、もう破局なんだろィ?」

『それは・・・。』



「もう近づかないでください。
私はもう貴方の事なんてなんとも思ってないの。」


声がどんどん近付いてくる


『ねェ・・・ちょっ・・・。』

「やべェっ、こっち来るぞ!!」


辺りを見渡す

話を聞いていたとバレたらヤバい


すると少し大きめのロッカーが目に入った

ドアの前に人影が写る


っ、こっちでィ。』


グィッと後ろから引っ張り、
抱き寄せる様にロッカーの中に入った







ロッカーが閉まったその時
資料室のドアが開いた

「前原先生っ。」


先に入ってきた前原先生を追いかけて大橋先生も入ってくる



狭い・・・
流石にロッカーに二人も入るのはちとキツかったか?

って・・・
がスゲェ近くにいる・・・
当たり前か・・・
ロッカーに二人で入ってんだもんなァ
しかも俺抱き寄せてるし



「大橋先生・・・?」

二人の様子を伺っていると
前原先生が深刻そうに口を開いた


「なんですか、考え直して・・・?」

「違います・・・・・・今、誰か此処にいました?」




「『っ!?』」


バレた!?



「え!?」

「なんか、生暖かいんです。先ほどまで人がいた様な・・・。」

「でも誰ともすれ違いませんでしたよ?」

「・・・おかしいですね・・・。」



・・・」

『ひゃっ!!・・・んっ。』


耳元でできるだけ小さい声でに声をかけると

は悲鳴を上げた

急いで口を押さえて悲鳴を抑える


・・・我慢しろよ。」


俺はをもっと近くに寄せる

できるだけ気配を消すためってのが大きな理由だが

がこんなに近くにいると、
なんか安心する


授業中に此処で話を聞いていたとバレたらいけなくて
今危険な状況にいるのに


何故か心が落ち着いてる


「ま、いいでしょう。」


前原先生は本を一冊棚から抜くと
その本を持って資料室から出て行った


「あ、前原先生、待ってください!!」



その後を追うように小走りで大橋先生も出て行った


バタンッ


倒れこむように外に出る

『はぁっ・・・はぁっ・・・。』

「はぁっ・・・意外とロッカーの中って苦し・・・。」


四つんばいになっていた体を起こし、
足を放り出して手を横について首を少し上げる


『ふっ・・・・・・あはは。』

「?・・・何がおかしいんでィ?υ」

『だって、私たち今すっごく危なかったじゃん!!』


乗り切ったよ、と無邪気に笑う


「確かにあの状態でバレたら怪しまれるよな・・・。」

『凄い体制だったもんね。///』



そういうの顔は少し赤みがかかっていた

そういえば、を抱きしめたのって初めてだったな・・・

って・・・何言ってんだろ、俺。

変態かよっ。



『そっ・・・そろそろ戻ろっか!』

「そうだな。」





俺達はあまり喋らず教室に戻った

部活が終わってからの帰り道も

口数は少なかった


何やってんだろな、俺ァ。





***







翌朝、俺は日直だったので
を置いて一人で早く行く事にした


メールでにこう送る



To
Sub はよ!
――――――――
今日俺日直だから
先行くぜィ

    ―総悟―
――――――――


すると、意外にもすぐにメールの返事が返ってきた

From
Sub Re: はよ!
――――――――
うん!分かった
頑張ってね!!
Σd( ̄^ ̄●)

    ―
――――――――



メールを見て携帯を閉じ

ポケットにしまう




バスに乗り、席を探す

「・・・・・・ねェな。」


ふと目に入った仲の良い男女
見た感じカップルでは無さそうだ

何かを話していて
笑いあって
凄く楽しそうだった


俺とも、あんな感じだったな
今まで考えた事も無かったが
今思うと俺らはいつも笑ってた
どんな所でも一緒に笑ってた


だけど何だよ
今の俺・・・

最近、変わってきてねーか?
前まで楽しかった事が当たり前になって
隣にいない事に不安を感じる



学校に着き
朝の日直仕事を終えると、部活に向かった

部活では土方さんが近藤さんと稽古していた

「おはようございまさァ。」

「おう総悟、お前日直だったか?」

「ええ、まぁ。」

「そうか、よし、手合わせに俺と一本やろう。」

「お願いしまさァ。」





***



「はぁっ・・・はぁっ・・・。」

「そ、総悟・・・お前強くなったな・・・はぁっ。」

「こ、近藤さんこそ。」





「じゃ、此処で切り上げるか、、」

「「はい。」」




教室に戻ると
は土方さんと二人っきりで何かを楽しそうに話していた


何故かそれを見ていると
どうしようもない感情が湧き出る


が他の男と楽しそうにしてるとムカムカするが

土方さんと楽しそうにしていると
余計いら立つ



「なんでよりによって土方なんでィ・・・。」



ドアからじっと睨み付けた



『あ、総悟。おはよ〜。』

いつもの様にが俺に声をかける
いつも先に声をかけるのはだった



その日部活が終わるまで
普段通りが続いた

は俺とも楽しそうに話すし
土方さんとも楽しそうに話した



『じゃ、帰ろう!』

「あぁ・・・・・・ちょっとその前にいいか?」

『え・・・?』




今日も辺りは薄暗く

早めに帰りたいだろうが俺はを連れて武道場の裏に回った



『どうしたの、総悟?』

「なァ・・・・・・。」


真剣に話す
今までの気持ち
よく分からないこの気持ちをに話す


が他の奴と楽しそうに笑ってるとムカつくんでィ。」

『総悟・・・?

・・・それって嫉妬?』


はためらいながら口を開いた


「嫉妬・・・?」

そうか・・・
嫉妬か・・・


「なのかもしれねーなァ。」


俺はに嫉妬してんのか

土方さんに対して嫉妬してんのか


『え?』


を壁に追いやり
素早く両手をの顔の横につく


『ちょっ・・・総悟!?』


顔の距離がかなり近いため
少し動揺して赤くなる


今はの目が俺を真っ直ぐ見てる
また安心感が湧いた



「やっと見れた。」

『・・・え?』

「最近、目を見て話す事が無かっただろィ。」





寂しそうな顔で呟く


・・・好きでさァ
俺は誰にも渡したくねーんでィ」


少し俯き
から目を離す



『そ・・・ご・・・。

そんな寂しそうな声で言わないでよ。
そんな急に言われても・・・。』



答えられないよ・・・。






『総悟は・・・ずっと幼馴染だと思ってた。』



幼馴染か・・・


「今までも・・・これからもか?」

『っ!?』



顔を上げてをもう一度見る

は辛そうな顔だった

俺の顔を見た途端、泣きそうになる



俺もなんだか泣きてェよ


は・・・・・・」


一番聞きたくない事を聞いてみる


「土方さんが好きなのか?」

『・・・え?』


俯きかけた顔が俺を真正面で捉えた


『ちっ・・・・・・違うよ。』

「じゃ、誰なんでィ。」

『私が好きなのはっ・・・

・・・・・・。』



言いかけて口を瞑る

は無言で俺を押しのける


「!?」


そのまま俺の右から抜け
走り去って行った




「・・・・・・・・・。」



ふられたか・・・。

ま、元々ただの幼馴染にしか思われてないのなら

仕方ないか・・・




「っ・・・。」

マジで辛ぇ・・・。。。



ダンッ

壁に腕を叩きつけ
流れ込むようにしゃがみ込んだ



・・・。」




明日からどうやって会えばいいんでィ?

勇気を出して会いに行って避けられたら



俺はもっと辛くなりまさァ





は土方さんに会いに行くのかねィ

はやっぱり・・・。






***







「・・・・・・。」


帰りも次の日も
またその次の日も



俺は無言で過ごした


とは、
まだ一言も口が聞けてねェ・・・。




そんな日が続く



ある日
日が落ちる時

部活でかいた汗をタオルで拭く



拭きながら思い出す
が渡してくれたタオル・・・


まだ返してねーや。



「オイ、総悟。」

いすに座って下を向いていると
土方さんが俺の目の前にやってきた


「土方さんじゃねーですかィ。何の御用で?」

「・・・・・・の様子がおかしい。」

「っ!?」


という名前だけで反応した
俺の体が言う事を聞かねェ・・・。


「最近元気がねーんだ。
同じ時からお前の様子もおかしい。

お前と何かあったか?」


「土方さんはいつも一緒にいるからの事よく分かるんですねィ。」



嫌味だった
思いたくも
信じたくも無い嫌味だった



「総悟、お前何か勘違いしてねーか?」

「勘違い?」

「お前・・・


俺に妬いてるだろ。」

「なっ!?」

「・・・図星だな。」



吃驚だった
鈍感な土方さんが気付いてるなんて



と俺が話してる時、
スゲェ顔して睨み付けられてんの、気になんだぜ。」

「・・・・・・。」





「安心しろよ。」

「は?」


下を向いていた顔を上げると
土方さんは穏やかな笑顔を見せていた


こんな笑顔もそう見れるもんじゃねェ



「俺とアイツが仲良くなったキッカケはなァ・・・お前なんだよ。」

「そりゃ、俺が紹介したから・・・。」

「違ェよ。


アイツ、お前に何かプレゼントあげたいからって、
好みのもんとか知らないかと聞いてきた。」

「えっ!?」

「特に誕生日とか特別なもんでもねーけど
お世話になったからって。

土方君なら総悟に詳しいでしょ?って言われてな
お前の方が付き合い長いだろ、って聞いたら
アイツなんて答えたと思う?



”いつも一緒にいるのに、弱みとか何にも言ってくれないんだ。
疲れてるのに無理して、私の前ではいつも笑ってる様な人だから・・・本当の気持ちが分からない”ってよ」


「・・・。」


「アイツはお前に自分の事もっと言ってもらいてーんだよ。
アイツは、お前に弱みを言ってほしいんだよ。


知ってっか?
は、お前といる時が一番笑ってる。」


「!!」


「俺といる時も笑うぜ?確かに笑う。
だけど、お前といる時は最高の笑顔を見せんだよ。

すっげぇ幸せそうな顔すんだよ。
アイツが本当に好きなのは・・・・・・
ま、いい。自分で聞いて来い」

「・・・え?」

「行って来い、なら今教室にいるぞ。」


日直だからな。と土方さんは笑う


「・・・土方さん、
俺、行ってきまさァ。」

「おう。」



勢い良く立ち上がり、
部室を飛び出した


「何やってんだろな、俺。」


頑張れよ、総悟。



部室に残った土方は
自分の思いを閉じ込めて、沖田の出て行ったドアを見つめた




教室まで速く走り
ドアを強く横に引く



っ!!」

『ぇっ・・・総悟?』


何やってんの、こんな所で。と吃驚している

の手には閉じた日誌とシャーペン

ついさっきまで日誌を書いていた様だ



「お前を探してた。」

『何か・・・・・・用?』


まだの態度はギクシャクしていた

前みたいに笑って話してくれると嬉しいんだけどな




「なぁ、返事聞かせてくれィ。」


の前まで歩いて行き

前のいすに反対向きで座る



の顔を真正面から向きなおし

真剣に言う


が好きでィ。」

『・・・・・・あの・・・ね。』



顔を下に向ける

耳が赤くなっている事から、赤面している事が分かる

『総悟・・・なんでそんなに素直に言えるの?

・・・どうしたら・・・?』



の言っている事が分からなかった

何が言いたいのか分からなかった



『私はどうしたら素直に言えるかな?』

「・・・?・・・ぷっ。」


俺は意味が少し理解できて
思わず笑ってしまった


『え、ちょっと笑わないでよ!!///

私は真剣なんだからっ・・・。』




「悪ぃ・・・。
もし言いたい事があんなら、
回りくどい事しねーで自分の思ってる事をそのまま伝えりゃいいだろィ。」

『・・・・・・今の総悟はそうなの?』

「あぁ。まぁねィ。」

『・・・・・・総悟。』

「何でィ?」



下を向いていたの顔がゆっくりと上がり

の目が俺の目と重なった



『私もっ・・・・・・好きだよ。』


そういうの顔は少し赤かったが
顔は笑ってた


ああ、俺はこの顔が見たかったんでィ。




「当たり前だろィ。」



してやったりと笑ってやると

『もう!!何それェ!!
とっくに分かってたみたいじゃん。』

「そうだけど?」

『サイテーυ』

「それで結構。」



俺はもう一度ニカッと笑うと

を抱き寄せた



『ひゃっ!!』

はもう俺のモンだぜィ。」



幼馴染には変わりないが
幼馴染以上になれた

はもう俺一人のモノ
物ではなく、
俺のモノ。



「誰にも渡さねェ。」


顔が赤くなっているの耳元で
こう呟いた





END

〜後書き〜

いや〜駄文ですみません!!こんな物でよかったらどうぞ、お持ち帰りください
甘くないですね・・・υしかも微妙な嫉妬。あぁ・・・甘いのは苦手だ