逃げたいと思っても口には出さない それが武士道だ
第三十訓 逃げたいと思っても口には出さない それが武士道だ
”それでは結野アナのブラック星座占いでございます”
あの戦いの翌日の朝、近藤さんが歯磨きをしながらテレビを見ていた。
私も少し離れた所にいるそうにぃの隣に座り、テレビをぼーっと見つめていた。
テレビには銀時の大好きな結野アナが映っている。
アレ、見てるかな。今頃・・・
とふと思った。
”今日一番ツイてない方は・・・”
結野アナがとびっきりの営業スマイルで伝える運勢。
前では先程からシャコシャコという音が絶えない。
”乙女座のアナタです”
シャコシャコと止まる事のない音がだんだん耳障りになってきた。
『近藤さん、煩い。消えて』
近「、お前口辛くなった?」
歯ブラシを銜えたまま此方を向き言う近藤ゴリラ・・・・・・じゃなくて勲。
テレビでは、乙女座の人は何をやってもうまくいかないと言っている。
近「なんだよ〜朝からテンションさがるな〜」
『安心しなさいゴリラさん。
アンタが何かを成功した事がありますか?』
運勢とかそういうの、ハッキリ言ってどうでもいい。
当たった事ないし、適当にでっち上げたものだし。
ついでにいうと、同じ月の人同じ誕生日の人が皆一緒の運命とかありえないだろう。
近「んんん〜、一応あるもん!!」
横目で近藤さんの方をチラっと向くと、説明できない様な表情というか・・・行動?をしていた。
『・・・きもい』
近「んんん〜」
冗談でそう言ったんじゃない。
真剣にそれは気持ち悪い。
神楽とか、可愛い子がやるなら似合うけど、ゴリラは流石にヤバイ。
『大体、お妙さんに振り向いてもらえてないから成功とは言わないでしょ』
近「お妙さんはいつか振り向いてくれる!!
それ以外で俺に不満があったら言ってくれ、直すから!」
そう言われて答える事は一つしかない。
何を分かりきった事を・・・。
『全て』
私はテレビの方を向いたまま無表情で言った。
近「・・・本当にそれ言いそうだったから
逆にそう言ってもらえてすっきりするからいいや」
だって言い始めたらキリ無いよ。
ゴリラ、顎鬚、ケツ毛、オッサン、加齢臭、ストーカー・・・etc
止まらないもんね。
考えている間にも、乙女座に向かって言われる不幸な事は続いている。
”特に乙女座で顎鬚をたくわえ、今、歯を磨いてる方
今日死にます”
うわ〜・・・此処まで来ちゃったね。
近「え゙え゙え゙え゙え゙え゙!!」
『え〜っと・・・”ラッキーカラーは赤、赤いもので血にまみれた身体を隠しましょう”だって』
近藤さんは冷や汗をかきながらテレビの電源を消した。
私は気づいていた。
今日の近藤さんにはこうなる可能性がある事を。
ははは・・・昨日暴れすぎちゃったから・・・。
近「バカらしい。世の中の乙女座が全て消えてみろ。
世の中オッサンだらけになるぞ・・・な、総悟?」
するとそうにぃは立ち上がって近藤さんの前まで来た。
沖「ハイ、コレ俺がガキの頃使ってた赤褌。」
大丈夫、洗いやしたから。と言いながら赤褌を渡して静かに出て行った。
確かに洗ったけど、、流石に渡せるものでもないような・・・とふと思ったがあえて言わない。
近「総悟の奴め、意外と心配性な奴だな。なァ、トシ?」
いや多分土方さんも・・・。
土方さんの方を向いてみると、やはり彼も同じく立ち上がって近藤さんのところに来た。
土「・・・コレ、俺が昔使ってたマフラー」
同様に赤マフラーを渡して静かに出て行く。
やっぱり今度は私の番だよね?
近「・・・まさか・・・?」
『ホラ』
私も立ち上がると、赤いハンカチを近藤さんに投げる。
そして二人の後を追うように出て行った。
それからの近藤さんは知らないけど
きっと三人の行動に焦ってると思う。
確か松平のとっつぁんが来てたみたいだし・・・。
少し自分も不安になりながらも、触れないで置く。
私がどうこうする事でもないだろう。
私は屯所内をぼーっと歩き出し、風通りと日当たりのいい場所を探し出す。
『あ〜此処いいかも』
其処には大きな木があって、少しだけ木陰ができている。
その大木の前で寝転がってみた。
『懐かしいなァ・・・昔こーゆー木の下で寝てたっけ・・・?』
木の声を聞いて
動物の声を聞いて
自然の声を聞いて
あの頃はそれがとても心地よかった。
今でも・・・やはりそれはとても気持ちがいい。
でも此処は前の場所とは違う。
人―仲間―の声って奴も耳に入ってくる。
前より凄く騒がしいけど心地よい。
私は暖かい陽の光に見守られウトウトと目を閉じた。
同じような木の下で私は自分の過去の夢を見た。
まだ十歳になってすぐの頃に姉と兄に自分の隠された能力を明かされて重みを初めて知った。
私が見たのは皆に護られていた頃の夢。
『ミツバ姉、行ってきま〜す』
ミ「行ってらっしゃい、気をつけるのよ」
『うん♪』
いつも外に遊びに行くのが習慣だった。
自然が大好きだった。
自然と一緒に存在する空間や匂いや動物が大好きだった。
この能力を恐れて誰も私に近づこうとする人はいない。
だからいつも一人ぼっち。
でも寂しくなかった。
動物が
自然が
私の友達だった。
それにミツバ姉やそうにぃがいる。
ただそれだけで幸せだった。
だけど年が上がるにつれて少しずつ寂しさが沸いてきた。
いや、もっと前から寂しいという感情を少しだけ持っていた。
皆とままごとしたり
あやとりしたり
まりつきしたりしたかった。
最近の私は同年代の子達が楽しそうに走り回って
楽しそうに話している姿を見て
一人でいる自分が切なくなった。
そんな時一人で大木の下でよく寝てた。
寝てると何も考えないですむから。
気持ちの良い環境の中で眠ると凄く安心したから。
今日も寝ようと思っていつもの木の下に着てみた。
だけど其処には先客がいた。
銀色のふわふわした髪を持った奴がすやすやと寝ていた。
見た感じ15〜7ぐらいだ。
私よりもかなり上。
だけど不思議と怖いという感情は無かった。
「・・・ん?」
じっと見てたらその男は起きてしまった。
焦ってキョロキョロとしていると
その人は此方を真っ直ぐ向いて優しく笑った。
「あぁ、悪ぃな。お前いつも此処で寝てるもんな」
申し訳なさそうに頭を下げる彼。
私は知らないのに
あっちは私を知ってる
『・・・・・・』
「あ、俺の名前は坂田銀時。お前は?」
『沖田』
「な、いい名前じゃん」
『・・・ありがとう』
私は口数が少なかった。
人としっかり触れ合った事が無かったから・・・。
でも銀時とのこの出会いが
私の運命を変えた。
「ま、座れよ。」
隣に促されて座る。
いつもなら無言で逃げるのだが
なんだかコイツは安心した。
なんでか傍にいるとホッとする。
そこら辺の奴と違った雰囲気がしたんだ。
「でよォ、この前掃除のババアが俺の髪をベタベタ触って髪切れって言ってくるワケ、たまんねーよ」
私は何も喋らない。
何を喋ればいいのか分からないし、人とどうやって接し合えばいいのか分からない。
私が無口でいる間
銀時と名乗る男はずっと話し続けていた。
その時の私はその言葉一つ一つを聞いてるだけでも凄く楽しかった。
「おっと・・・もうこんな時間か・・・。悪ぃな付き合わせちまって」
私の頭をクシャッと撫でてゆっくり立ち上がった銀時。
「じゃーな、また明日。」
『・・・うん。』
本当は来るなんて思ってもいなかった。
”また明日”なんて私にとっては幻想にしかなかった。
どうせ、もう来ない。
私の能力を知っているならもう来ない。
たまたま私に見つかって、逃げるのは無理だから取り合えず我慢して一緒にいてくれただけだろう。
もう、彼は来ないだろう。
そんな風に思ってた。
思うと凄く切なくなった。
だがその男は次の日も
また次の日も其処へ来た。
来るたびに私は驚いて、何だその顔?と頭をくしゃくしゃにされた。
その男の話にちょっとずつ、
本当にちょっとずつだけどコメントを入れるようになってきた。
「、3丁目の薄っすらハゲ知ってるか?あの頑固そうなオヤジ。」
『・・・うん』
「そのハゲがよォ、この前柿くれたんだ。
友達にもあげたいっつったら、つれておいでってよォ
お前、行く?」
『・・・うん・・・・・・行きたい』
ちょっとずつだけど
笑えるようになってきた。
ミツバ姉やそうにぃ以外に笑った事などなかった。
ましてや、外で笑った事などなかった。
銀時は既に私の中で大きな存在になっていた。
でも、一つ気になる事があった。
なんでこの人は私に良くしてくれるのだろうか?
彼はまだ私の能力を知らないのだろうか?
もし、この人が私の本当の事を知ってしまったら・・・?
その時は恐くて聞けなかった。
でも、オジサンから貰った柿を食べながら勇気を出して聞いてみた。
『ねぇ、銀時。』
「あ?どうした?」
『銀時ってさ、なんで私に良くしてくれるの?
他に友達いるんでしょ?』
良く見かける。
大勢のお友達と笑いあう銀時を。
彼の周りには沢山の友達がいて、凄く楽しそうだ。
「なんでって・・・
俺と似てるからだよ」
何処が?って思った。
私みたいに一人じゃないし、明るくて、話が上手で
何よりも幸せそうで・・・。
でもその時の銀時の顔が酷く寂しそうだった。
「なんでかなァ・・・何処か、似てたんだよ
目とか・・・・・・同じ様な目してるしよ。」
目・・・か
似てるとか初めて言われた、そんな事。
「俺、親いねぇから。寂しさっていうの結構知ってんだ」
無理に笑うその姿が、とても辛そうに見えた。
『・・・いないの?兄弟・・・とかは?』
私にも親はいない。
物覚えの付いた時には既にいなかった。
でも、私には二人がいる。
でも、銀時は?
「兄弟も・・・いねぇ・・・」
そっか。
銀時は辛いんだ。
私よりも、辛い思いしてるんだ。
「でもお前よりはマシかもな」
にっと笑う銀時。
そんな事ないよ・・・。
銀時の方がきっと・・・。
『あのっ・・・さ、
銀時は、私の能力の事知ってる?』
今まで恐くて聞けなかった事。
もし知らなかったとしても
いつかは私の事が知られるのは分かっていた。
知られて恐れられるかもしれない。
でも
銀時には分かっていて欲しかった。
「ああ、知ってる。」
表情を一つも変えず、カリッと柿をかじる銀時。
『え・・・。』
知ってて・・・?
知ってて私を恐れずに一緒にいてくれるの?
「風を、動物を操れるからなんだってんだよ。何か恐いモノあるかよ、なァ?」
ま、喧嘩した時に狼呼ばれちゃたまんねーけど、と笑って付け足した。
この日から
銀時は私にとって何でも打ち明けられる人になった。
銀時に出会って良く話すようになったし
よく笑うようになった。
人と触れ合うのが楽しいと思えるようになった。
銀時につれられてある広場に向かった
其処には男の子が3人いて、
刀の稽古をしていた
その時
女の子みたいな、桂小太郎と
まるで毛玉みたいな、坂本辰馬と
少し恐い性格の、高杉晋助
に初めて出会った
彼らは銀時みたいな純粋さを持っていて
私はすぐに仲良くなった
坂「オイ、。アレとれるかが?」
『どれ?』
坂「ホラ、あのミカンじゃき」
高「ありゃダメだ。チビなには無理だぜ」
『うっさい黙れエロ杉!いつかお前なんて抜かしてやるぅ!!』
高「はんっ、無理だな。お前はいくら年をとっても俺には勝てねェ」
桂「エロ杉は否定せんのか」
高「お前はどーでもいいんだよヅラ」
桂「俺はヅラじゃない桂だ!」
銀「お前ら話がヅレてるぞ、がミカンとれるかが話しの種じゃなかったのかよ」
桂「ヅレてなどいない!!俺は桂だ!!決してヅラなどではない!!」
銀「いいからヅラ、何処か行け」
私には身長なんてなくても
風を操ればそんなもの簡単に取れた
でも、そんなに能力は使いたくない
私は私自身の力で取りたかった
取って高杉を見返してやりたかった
いつかは一緒に刀の稽古をしてもらって
素振りと見せかけて殴った事も何度かあった
4人の教え方が上手くて
私はすぐに上手くなった
いつまでもこんな楽しい生活が続いて欲しいと思った
銀時達に出会ってから一年・・・
『嘘でしょっ!?ねぇ、嘘だよね!?』
銀「悪いけど・・・暫く会えなくなるな」
『ヅラっ!アンタ、そんななりじゃ無理だって!!ねぇ!』
桂「悲しいが・・・またいつか会えるさ」
『毛玉ァ!!』
坂「すぐに戻ってくるきに」
『高杉ぃ・・・。』
高「泣くな。泣くと余計ブスになるぞ」
泣きそうだった
4人共侍の子供
武士となって戦いに行くと言うのだ
攘夷戦争に参加すると言うのだ
『止めてっ!行かないで・・・私を一人にしないでっ!!』
銀「無理言うな。幕府の命令なんだ」
『じゃぁ・・・
もし4人の誰かが死んだら、私は幕府の人間を襲いに行くよ』
その時の私の目は赤くなっていたと思う
本気になると、偶にそうなるのだ
銀「安心しろよ。誰も死なねェって、な?」
桂「おう」
坂「の泣き顔見たくないじゃき、元気で帰ってくるき」
高「・・・俺が負けるワケねーし」
『ぷっ・・・高杉、それ自意識過剰。』
皆と別れるのは悲しかった
でもこれは絶対命令だ
私は笑顔で見送った
***
銀時達が戦いに出て数日後
家に幕府の人間が来た
「沖田さんですね」
バレた!!
ヤバい!!
焦った。
幕府の人間に能力がバレるのは良い事ではない
同じ寺子屋の人間にだって何故バレたのかも分からない
ミツバ姉は病院にいる
そうにぃは道場だ・・・。
沖「!!」
『そうにぃ!?』
吃驚した
いきなり開いたドアからそうにぃが飛び込んできたのだ
沖「お前、幕府の人間か。なんの用だ?」
私の前に立ちはだかり
私を護る
「これは失礼。私は幕府の命により、
さんに手紙を渡し、説明するために此処に参りました」
沖「手紙?」
「これです。」
私は自分で受け取り
中を読む
『っ!?これ・・・。』
中には
攘夷戦争に出て欲しいと書いてあった
沖「なっ!!こんな小せェを戦争に出すつもりか幕府はっ!」
『そうにぃ止めて。』
今にも飛び掛りそうなそうにぃを止めて
ゆっくりと歩き出す
『今からですか?』
「できれば。」
『・・・すぐに支度します。』
沖「っ!!」
支度を始めた私を必死で止めるそうにぃ
沖「何考えてんだ!
お前見たいな小せェガキが戦争なんか行って・・・死にに行くようなもんだろっ!」
『お兄ちゃんっ!!』
妹が珍しく叫んだのに吃驚する
『私はもう護られるのはウンザリ。
自分で自分を護る。そうにぃはお姉ちゃん護ってあげて。
まだまだ私は弱い
でも、自分を護るくらい、できるよ』
ニコっと笑って兄に抱きついた
『戦争の途中途中の合間に会いに来れるんだよ
すぐ会える。待っててね
じゃーね、お兄ちゃん』
沖「・・・・・・分かった。
絶対生きて帰って来いよ」
『もちろんさ』
急いで支度した荷物を持ち
幕府の車に乗って戦場地へ向かった
そう・・・
これが・・・
私が戦争に行った理由
その時
私は本当に帰ってこれるか心配だったんだ
***
銀「なっ!?!?」
『やっほ〜銀時』
坂「なんで此処にいるんじゃ!?」
「幕府の命により、さんは攘夷戦争に参加なさいます」
私を向かえにきた幕府のおっちゃんはそう説明し、出て行った
高「お前・・・バレたんだな。」
『・・・ってかバレてた。』
高「どっちも一緒だろ。」
桂「こんな子供まで巻き込むなんて・・・幕府は正気か!?」
『仕方ないよ。
ん?17歳だって十分子供じゃないか。』
ガキ扱いすんなよ。はいはい。
久しぶりに会ったのに、昔と同じ様に話した
初めての戦い・・・
とっても恐かった。
鞘にきちんと収まった刀を強く握る。
二刀の刀は手入れがしてあり、綺麗だった
銀「恐いか?」
『・・・恐い』
銀「だろうな」
坂「安心するき、最初は誰だって恐いもんじゃ」
『坂本も?』
坂「そうじゃ。じゃから、わしらが護ってやるぜよ」
『あんがと。
でも、護ってもらうのは嫌だから。』
すると同時に戦闘開始の合図が鳴る
一斉に走り出す侍と馬
刀と刀が弾かれる音
ギリギリと刃が軋む音
どれもこれも初めて聞いた音だった
一瞬
この地で一人で立っている感覚に陥った
仲間が誰もいない
他人に頼りたくない
そう思っていても
孤独感には耐えられなかった
目の前から襲ってくる敵をただただ恐怖のあまりに倒していく
逃げたい
そう思った
足が竦む。
助けて・・・
声には出さずにそう思う
自分で決めたじゃないか
自分で戦うと決めたじゃないか
なのにっ・・・
銀「力むなっ!前をしっかり見ろ!!」
『っ!銀時!!』
棒立ちで立ちすくみ
辛うじて腕だけ動かし身を護っていた私を元に戻す銀時
ザッと一番近くにいた敵を斬ると
私と背中合わせになる
銀「まだ恐いか?」
背中越しに問う
恐いよ・・・そりゃ
銀「恐くても恐がるな。
無理だって言うなよ」
今度は相手の胴を狙う
銀「戦場に辛うじて仲間はいる
でも戦ってるときは、皆自分を護るのが優先なんだ。分かるだろ?
甘えるな。
自分で決めたのなら甘えるな、助けを求めるな。
恐がるな。意思で負けたらおしまいだ
だが、安心して戦って来い
リラックスしろとは言わねェ
だが、そんなガチガチじゃへたばるぞ」
ふっ・・・
『銀時・・・。』
銀「んあ?」
『ありがとう』
ザッと土を強く踏みしめ
思いっきり走る
そのスピードのまま敵と戦う
一対一の戦い
そう思えばいい
囲まれなければ
一対一なのだ
その初めての戦いから
私は黒蝶と恐れられた
銀「”桃色の髪が風に揺られ
幾世をひらひらと舞う姿は まさしく蝶”だから黒蝶だってよ」
数日後、戦いにも慣れてきて頃に
銀時に教えてもらった
銀「黒蝶の黒は闇を表してんだ
お前が恐いんだろうな(笑)」
『あんま嬉しくない。』
高「だろうな」
人がいなくなる戦い自体好きじゃなかった
喧嘩とか、格闘技とか、傷程度で終わるものが好きだった
戦争をする度に誰かがいなくなる
そんな悲しみに浸って涙を流す銀時をいくつ見てきた事か・・・
それでも護るためには戦わなくてはいけなかった
***
初めて戦争に出て数年がたったある暇な日
自由な日は姉や兄に会いに行っていたが
今日は行かなかった
最近そうにぃとその友達が真選組という
幕府の特別組織を作ったらしくて忙しそうだからだ
邪魔したくない
そう思ってラジオを聞いていた
すると思いがけない放送が流れた
『皆ァ!!静かにこれ聞いてくれっ!!』
”只今幕府が開国しました”
銀「マジかよ・・・。」
高「幕府が俺達を裏切ったってェのか?」
”数日後、侍を消滅させ・・・攘夷の者は追放・・・”
ブチッ
ヅラがラジオの電源を切った
『ヅラ・・・』
桂「幕府など信じられぬ・・・幕府は俺達を裏切った」
高「・・・ヅラァ。俺もお前と似たような意見だぜ」
手を取る事はねぇがな、と高杉は言った
『じゃ、明日の戦いが最後になるね』
銀「あぁ、明日で皆お別れだ」
静かに部屋に戻る
皆と別れる事が辛いとは感じなかった
また会えると思えたから
そういえば坂本・・・今頃何してるかな?
坂本は1ヶ月ほど前に宇宙へ旅立ったのだ
逃げたのではない
皆の未来を思っての選択だった
その事を皆が理解しているから
坂本は何も思わずに宇宙へ飛んだのだった
座ってボケーッと空を見上げていたら
視界に高杉が入ってきた
高「よォ」
缶ジュースを手渡されら
『どうした?』
プルタブを引っ張って
缶を口元に持っていく
高「別に。明日別れるから今のうちに言っとこうと思ってな」
『何を?』
高杉の目を見ると高杉も自身の目を見ていた
ただ顔はいつもと変わらぬ感じだった
高「。俺、お前の事好きだぜ」
『ぶふっ』
高杉が変な事を言うもんだから口に含んでいたジュースを噴出してしまった
『急に何!?高杉の所為でベタな事しちゃったじゃんか///』
高「お前なァ・・・」
高杉の方を見ていたのでジュースは高杉の顔面直撃
てっきり怒るかと思ったのに
高杉は普通に顔を拭くだけだった
高「、お前俺についてこないか?」
『え?』
高「分かるだろ?俺ァ今の幕府は許せねェんだ」
高杉の気持ちは分かる
でも・・・
『・・・・・・悪いけど・・・行かない』
高「分かってたぜ。お前が断る事」
『流石数年付き合ってた相棒だわ』
高「でも俺ァ諦めねェからな
お前を連れて行くことも、お前を手に入れる事も」
真剣な目だった
少し恐いとも感じた
『何言って・・・』
私が全部言い終える前に高杉は出て行った
何なんだよ・・・
高杉・・・何か変だ
高杉が出て行ってから
ヅラと銀時は私の部屋の前で話していた
何の話をしていたのかは分からなかったけど・・・
桂「先を越されたな、銀時」
銀「・・・あぁ・・・ま、まだ時間はたっぷりあるさ」
桂「明日別れるんだぞ銀時?」
銀「俺はまた会えるって信じてるからな」
私は二人の話に耳を澄ましている間に眠っていた
次の日起きたら
張り詰めた空気が漂っていた
『皆、今までありがとう!!
最後の戦い、頑張ろうな!』
緊張を解し
いざ、戦争に参る
最後の戦いは敗北に終わった
武士の大半は捕まり
その後は分からなかった
私は最後の戦いで行方を晦まし
皆と挨拶をしないまま別れた
自分の気持ちを伝えぬまま帰ってきた事に少し後悔を感じながら
家族の元へは行かず
知り合いの情報屋の所へ行き
自分も情報屋になった
本当は、ただ職をつけてミツバ姉のために働こうと思って
まずは情報屋に相談してみるか・・・という気持ちだったのに
そのまま仕事が忙しくて
全然帰る余裕が無かった
気付けばもう16歳
ミツバ姉に会ってから
江戸で働くそうにぃに会いに江戸へ向かった
沖「オイ、そんなところで寝てたら風邪引くぜィ」
『んぁ?ふわぁ・・・あ、そうにぃ・・・おはよ。』
もう辺りは少し紅くなっていた
『今まで仕事?』
沖「桂追っかけてた。お前は暢気に昼寝かィ」
『・・・昔の夢見てた。攘夷の頃の夢』
沖「・・・あぁ・・・
あん時はホント・・・大変だったもんなァ」
『最初、そうにぃが護ってくれた時、カッコ良かったぜ』
フッと笑い、親指を立てた
沖「何言ってんでィ。俺ァ必死だったんだぜィ。
大事な妹を死なせてたまるかってな」
『ありがと。お兄ちゃん』
私がこんな明るくなったのも
元はと言えば銀時のおかげかな?
銀時もありがとう
銀時のおかげで
私には沢山の友達ができたよ
今は寂しくない
とっても幸せだよ
〜後書き〜
はい、シリアスですね。
ギャグ期待していてくださった方すみませんでした。
やっぱヒロインの過去はシリアスなんですよ。
では〜次回は・・・ギャグ目指します!!(あくまで目指す