刀じゃ斬れないものがある






―ゴシャッ―・・・


耳をつんざく嫌な様な音が闘技場に響き渡る。

耳を押さえたい塞ぎたい。
真っ当な人間なら誰でもそう思うであろう音を聞いて楽しむ観客はおかしい。


辺りは歓声に包まれ、その中心では人が潰されていく。




『最悪だ・・・・・・』


様子を見るために銀時よりも先に到着した私は
できるだけ高く周りを見渡せるところに登り、奴ら、天導衆の隙を探っていた。



「ククク、こいつァいい」



丁度北の方角に天導衆の上の者だろうか、見苦しい物を見て笑う男を見つけた。

前の様に天導衆が高みの見物をしている背後を、周りに注意をかざしながら隙を探る。




あの人間を次々に潰していく者は"荼吉尼"かな?

夜兎と並ぶ武を誇る傭兵部族・・・だったよね。

大戦でほぼ全滅したと思われていたらしいけど・・・
・・・流石に天導衆。手駒を用意してあったってわけね。




背後から気配を消したまま、天井に上って様子を窺う。
すると男は呟いた。


「・・・鬼道丸も哀れな男よ」


鬼道丸という、奴の発した言葉に耳を貸す。

そして道信さんを馬鹿にした発言に腹に何かがふつふつと湧き上がった。




「おとなしく我に飼われておればよかったものを
侍などもはや前時代の遺物・・・最後までバカな男であった」




"聞き捨てならない"



私は誰にも聞こえない様な小さな声で呟き



次の瞬間





私は天導衆の男の首元に刀を回し

もう片方の刀先を手下に向けていた




「なッ何者ッ!?」

突然の私の登場による敵陣の焦り。
素早い動きで刀を突きつけられ、成す術が無いというとこか。


「何処から入ってきやがった!!」



敵の奴がどうこう言ってるけど私はそんな奴ら気にしていない。

今私はむしょうにこの男を斬りたかった。
むかつく。この男むかつく。


だがその気持ちを抑える。
私は今真選組。
そして、銀時が"今"を堪えてる今、私も堪えなきゃいけない。


すぐにキレて行動しちまう癖を治しておかないと・・・・・・ね。



『侍を愚弄するな』



低く重い声でこれだけ言う。
侍はこんな人間に汚されてはいけないものだ。



「ほぅ・・・お主もおなごの癖に侍と?」



刀を突きつけられているというのに、
何でこんなにも平静でいられるのか?

まあいい。
おとなしくしてくれてた方が都合がいい。






だがそうもいかなかった。



「侍は野蛮な生き物だな」




―ギッ―・・・刀に力が入ったのを必死に堪える。
この刀は今まで忘れていたが妖刀。
私の心の内を知っている私の僕であり仲間。


一瞬私の心が揺れたので反応してしまった。
でも、刀だけじゃない。



今、私も実際、斬りそうになった。




『・・・私をとやかく言うのはどいでもいい』


歯がギリギリとなる。
悔しさを噛み締めながら私は言う。


『だけどな・・・』



腕まで少し震えてきた。
落ち着け。落ち着け落ち着け。



『お前等幕府の為に戦い、命を落とした奴らを
・・・馬鹿にするのは・・・・・・気にくわないんだよね!』



再び刀に入れた力が強まった。


先程から右手の刀に流れるもの。
再び力を入れた事でこの緑の液体が地面に滴る。



「ではお主は幕府に裏切られ、敵討ちを狙う攘夷浪士というところか?」


首だげが私の方へ回った。
こいつ、おかしい。
焦りの様子が微塵も見えない。


今まで浪士に沢山会ってきたってわけか。




『・・・そうとも、違うとも言えるな』



そう言うと、初めて男は驚いた。
何をそんなに驚くのか、分からないけれど。



『私は攘夷戦争に出て、幕府に裏切られた。
でもさ・・・・・・今は別に幕府を恨んでなんていない』





・・・・・・奴の・・・おかげだけどね。






微笑む私。
先程までの苛立ちは何だったのか・・・

奴を思い出すと・・・自然と笑顔になる。





「どういう・・・・・・」



―ザワッ―・・・。


天導衆が言葉を言い切る前に観客が騒ぎ始めている事に気が付いた。


「何事だ!?」


刀を下ろさずに、そのまま闘技場を見下ろしてみれば理由が分かった。

鬼の仮面に隠された顔は見えないが

はみ出したふさふさの銀色に自然と笑みが零れる。



『遅いっつーの・・・』



私とは違い、天導衆の者達は焦りだす。
驚きの混じった声が響き渡る。


奴らの目の前に映るのは・・・



「きっ…鬼道丸!?」




鬼道丸の仮面を被った





侍の中の侍


坂田銀時・・・・・・












第ニ十九訓 刀じゃ斬れないものがある












「バ…バカな・・・奴は確かに・・・・・・」

鬼を見つけて恐れを覚える天導衆の者。

ただ一人、一番上の者・・・つまり私が刀を突きつけている者だけは笑っていたけれど。





「ククク、面白いではないか。お主と鬼道丸・・・どう来るか」


私を見て嫌な笑い方をする男。
だが私は遠くを見据えて言う。



『ん?私は・・・・・・一先ず見学さ。
鬼道丸の行方を見てからアンタを潰すだけ』


「ククク、本当に面白いオナゴだ」





周りの歓声は強まり、荼吉尼と銀時が会話を始めた。

遠くて全然聞こえない。


だけど、短く、それでいて大切な会話だけは辛うじて聞き取れた。



自分の耳がいい事に助かったな。






「ここはもう貴様な居場所じゃない。消え去れ」


銀「消えねーさ」




きっと・・・この後続いた銀時の言葉は・・・


そう想像してそれを言葉に出してみる。



『まっすぐに生きたバカの魂はたとえその身が滅ぼうが・・・消えやしねー』



私は奴を信じて今は手を出さない事にした。







二人の戦いが始まる。



歓声が少ない。
凄まじい戦いに、声も出ないのであろう。



素早く刀を打ち合うため音もよく響く。


少しすると銀時の被っていた面の角が折れた。
また、敵からは額から出血している。


鬼は腰から小刀を抜き銀時の面の鼻に指した。




だが銀時は瞬時にしゃがみ

いつもの様にニタッと笑い小手を打つ。







私はこの状況に何故か胸騒ぎがした。







「終わったな」


男の呟いた言葉に焦りだす心臓。


終わった!?どういう・・・



次の瞬間、銀時は―ドゴッ―という音と共に金棒に叩き付けられていた。








『銀時ッ!!』


口から血が噴出し、
静かな闘技場では奴のぜーぜーと荒い呼吸が耳まで届く。



銀時が負けた…?



それは有り得ない。

有り得ないよ。



心拍数が急激に騒ぎ出す。
刀まで震えてきた。


震えてるのは・・・・・・私?


大丈夫。大丈夫だから。



銀時は・・・大丈夫だ。




今まで危険には沢山遭ってきた。




奴はそんなに軟じゃない!









一瞬にして私の顔は絶望から自信に変わった。

心拍も元に戻る。
刀の震えも収まり、笑顔が自然と出てきた。




天導衆は私の表情が変わった事に驚いている。

それもそうだろう。

あっちから見たら仲間が殺された時に笑っている様に見えるんだ。




でも、誰が負けたって言った?





銀「ククク」


金棒と自身の間に挟まれた木刀がミシミシと音を発てる。
鬼の金棒を掴んだ腕までもが震えだす。

鬼は驚き銀時を見つめた。




銀「オイデカブツ。
こんなもんじゃ俺の魂は折れねーよ」



口から血を垂らした銀時の目は強く自身を保ち遠くを見据えていた。





あれが本物の侍の目なんだ。

私もいつか持てるだろうか。




そんな考えをしてる暇も無く

敵陣は鬼を倒した銀時に刀を向けていた。






私は一瞬嘲笑うかのように笑い、向けていた刀を下ろした。
私のその行動に天導衆の男達は驚きを見せた。


私はそれに目もくれず、銀時のいる闘技場に足をおろす。


ジャンプするにはかなり高いが、まあなんとかいけるだろう。
そんな風に思いながら飛び降りた。

地面に足をつけると骨を伝って何かが熱くジーンと響いた。
咄嗟に痛みを感じた。
我ながら馬鹿だと思う。どんだけ高いと思ってるんだ。


ま、いいや。この際。
このまま戦ってやろう。少したったら楽になるだろうし。



足の事を考えていると、銀時がこちらを向いていた。

銀時は私に向かって微笑むと、いっちょやるかと大きな声で言った。


『ラジャ』


私も銀時に笑い返しすっとと刀を構え、銀時と背中合わせになる。


懐かしく思う。この感触。
凄く大きくて暖かくて、安心して・・・。
昔から、この背中に護られていた気がした。


銀時に比べたら私は小さい人間だなと思う。
こんなにも暖かくて大きくて・・・人を安心させる何かを私は持ってないから。



だから必死に私はついていくんだ。





「一体どういうつもりだ・・・てめーは何者だ?」



銀時は敵に対してフッと笑う。私もつられて笑った。

そよ風に銀髪を揺らしながら笑う姿を私は何度も見てきた。
けれど、こんなにも侍らしい姿を見たのは攘夷戦争以来だ。


ふわりふわりと、戦場を舞う風は緊張を誘い出す。
だけれど、この銀髪が一緒に揺れていると凄く安心するのは何故だろう?


私自身、否、本人でさえ・・・誰もわからないだろう。







―パンッ―・・・


途端、銃弾が発砲された音が闘技場中に響き渡った。

敵に向かれて降り注ぐ銃弾の雨。


「なんだァ!?」


驚いて私達もその銃口を探し、観客席を見上げる。






其処には、私達の大切な仲間がいた。
大きな強い瞳を持った二人の少年少女。

まだまだ体は成長しきってないのに、
心はそこら辺の大人よりもずっとずっと大きな二人。



二人は自身の面を外し、力強く芯の通った声で言葉を発する。


新「ひとーつ、人の世の生き血をすすり」

神「ふたーつ!!不埒な悪行三昧」



続いて「みぃーっつ!!」と叫び、銀時と私を指差し促した。

銀「…ったく」



私達に言えって?何を?


そんな感じに私は考えていたら、
隣では銀時も頭をかきながら三つ目を考えていた。


私は自身にセリフを求められるとは思ってなかったから少し焦る。



銀「えー、みーっつ・・・み…みみ」



銀時が無理矢理言葉を発しようとしている中、ひとつの言葉を見つけた。


あ、あった!!あれだ!!


銀時のセリフと被るだろうが、とりあえず言ってみよう。
これしかないよ、「み」と言ったら・・・。



「『淫らな人妻を・・・』」



あ、ダブった・・・。



新「違うわァァァ!!」



瞬間に銀時の顎めがけて新八の蹴りが飛んできた。

素早すぎて銀時の悲鳴すら聞こえなかった。
きっと本人も驚いていただろう。



『おぉ・・・鋭い蹴りだ』


ぼこぼこにされている様子を眺めながら、思っていた言葉を無意識に呟く。
それを、叫んでいて周りの声なんて気にならないはずの新八はしっかりと聞いていた。


新「感心してる場合かァッ!!何二人でボケてんだよッ!!」


自分までなんか怒られて、ちぇ〜、と足を交差させて下を向く。
そしてみっつめに当てはまるものを探し出す。


『みーっつ……』

と此処まで言うといつもの様に自然と湧き出した。
もちろん、湧き出した理由はあるものと関係しているから、だけど。


『・・・醜いハゲ頭の鬼ジジイを!!』



新「何成し遂げた感じな顔してんだァァァ!!
上手くねェよ!だいたいなんでいつもハゲネタ!?しかもおしいしッ!」




いつもいつも、長いセリフをよく噛まずに言えるな〜っと思います。
ツッコミに心込めてます、的な感じですかね。


とにかく、私と銀時の対応の仕方に不満を持ったのだろう、
新八は自分で本来のセリフを叫ぶように言った。


新「みーっつ、醜い浮き世の鬼を!!」



あ〜それか〜、と新八の言葉に頷く三人。
・・・あれ?三人?神楽まで!?


神楽は知っているとばかり思ってたので軽く驚く。
そして、三人全く同じ行動をしている事にも驚いた。



新「退治してくれよう」


声に力が入る。
この後のセリフは決まってる。
私、このドラマ見てたし。


あ、さっきのセリフが分からなかったのに〜とか言うな。
説明とか面倒くさいから。うん。




「『万事屋銀ちゃん見参!!』」



万事屋四人組の高さの違う声達が一つに重なる。
右手を高くあげ、片足の腿を腹に近づける。

銀時の鼻に刺さってる、本来白であるべき赤いティッシュが気になるが、決まった!



もちろん、そんな舐められた光景を見て平然としている敵ではないわけで、
怒り出した敵さん方はそれぞれ思い思いのセリフを吐いた。

「ふざけやがって!!」「やっちまえ!!」



それらをいとも簡単に薙ぎ倒す万事屋軍団。
大きな音と共に吹っ飛んでいく天人達を眺めるのも、戦いにおいての楽しみの一つだった。

刀を交じり合っているのも楽しいけれど、敵が吹っ飛ぶと勝ったという優越感にも浸れる。
何より、物を殴ったり蹴ったりするとすっきりするという原理と同じものだ。


『久しぶりの闘いだけど調子いいわコレ』



良かった。
動けなかったらどうしようか今更だけど考えていた。



最近体が鈍っていたから、正直思い通りに暴れるか心配だった。
それでも少し動きにくい体には変わりない。
帰ったら鍛錬しようっと。




銀「オメェら死んでもしらねーぜ!こんな所までついてきやがって
本当はだって連れてくるつもりなかったってェのによォっ!!はァ・・・υ」


神楽と新八に向かって叫ぶ様に言う銀時。


『私はっ・・・自分の、意思で・・・来たんだから、関係ないッ!!』


向かってくる敵を斬りながら、
それでいて敵に向かって走りながら喋ってるワケだから余計に息が上がる。


普通に言葉を紡ぐだけでも大変だった。
やっぱり私、鈍ってる。


そんな大変な中、銀時についてきた二人の意見はこうだった。


“今月の給料を貰いに来た”


・・・・・・ん?
・・・別に後でもいいじゃないか・・・。



新「、少しヅレてるからッ!!」


遠くの方で新八が木刀を振りまわしながら言ってきた。


『何、ヅラがッ!?』


何を言ってるのか分からないが、
とりあえず"ずれてる"という言葉だけで判断し、答える。


新「違うわボケェ!!何真顔でボケてんスかァ!!」



つまり、二人が言いたかったのは


“給料を貰ってないのに死ねるか”


という事らしい。



『普通此処ってシリアスじゃね?』



ザッと斬り倒しながらツッコむ私、場違いだと思う。
こんな雰囲気を作った私、ナレーターのが原因ですが

ま〜ま〜・・・気楽に行きましょう。





とまあこんな感じに、
万事屋メンバーは関係ない話をしながら戦っていた。



目の前でバッタバッタと倒れていく自身の仲間を見て、驚くお上のお偉いさん。


「…な……なんだコイツら」


驚いたあまり、拍子抜けした声を出した。
誰かに囲まれているという事にも気づかずに。



―チャキッ―・・・


後ろから首に冷たい刀を向けられる。


「理解できねーか?」


そうにぃだ。私は本人を見ずにそう思った。


遠くからでも目立つんだ。
格好が目立つのではなく、気配が大き過ぎて。


『凄い殺気・・・』


つい気配のする方を見てしまった。
やっぱり予想通り兄だった。

殺気乱れたその姿をずっと見つめる私。



あ、イカン、イカン。
戦いに集中しなくちゃ・・・



そうにぃが何を言っていたかは、聞こえなかったから知らない。

でも最後の方の言葉は聞こえなくてもなんとなく分かる。

自分でもそう思ってるから。



『ここで動かねーと、自分が自分じゃなくなるんだ』



兄の口が同じように動いているから確かだろう。

ガッと言う音と共に目の前の男を借りた木刀で殴る。





その時、ある気配を掴んだ。



ニヤりと自然と口角が上がる。

私は戦闘から逸れ、全身を黒く纏った仲間の所に入った。

私の姿を見て少し驚いた表情を見せた奴ら。
私はその様子を気にもせず、其処から二人の会話を静かに聞く。


「俺達のバックに誰がいるかしらねーのか」


そうにぃに刀を突きつけられた男は言う。
声には恐れと自信が入り混じっていた。


沖「さァ?見当もつかねーや。一体誰でィ」


無表情のそうにぃ。
恐れも自信も・・・感じるものは何も無い。無だった。


そうにぃの言葉を合図に敵の周りを真選組が囲う。


「なっ!!」


冷たい刀先が男の首筋に当たる。


否、当てると言った方が正しいか。
私が二刀の刀を首を挟むように交差して構えてるのだから。


土「オメー達の後ろに誰がいるかって?」

『私達真選組だよ〜』

沖「アララおっかない人がついてるんだねィ」


笑顔の私とは違って、無表情の二人、そうにぃと土方さん。


「ヤベェ幕府の犬だ!!」


私達三人と、自身を囲む黒い集団を目に入して一目散に逃げ出す天導衆の奴ら。

私は逃がすまいと刀を両手に構えて追いかける。



『誰が犬だァ!!私はどっちかっつーと猫だァ!!』


刀を握った右手の拳に力を入れるた。


土「どっちでもいいわボケェ!!」




結局殆どの敵は捕まえた。
だが、大事な客には逃げられた。



後始末を終え、ふと相棒を探してみりゃあ・・・
真選組二人に腕を掴まれて激怒している銀時が。


『あ〜そのまま連れてっちゃってください』

満点の笑みを浮かべてぶりっ子する私。
・・・正直気持ち悪いかも。



銀「何言ってんのちゃぁあん!!」



私の行動に冷や汗をかきながら助けを求める銀時。

その様子を見て私は本当の笑みを見せた。







***





辺りは日も暮れ、空は紅く染まっていた。
白い雲も灰色のかかった雲も赤く染まっていた。



沖「結局デカい魚は逃がしちまったよーで」


悪い奴程よく眠るとはよく言ったもんだ、と呟く。


銀「ついでにテメェも眠ってくれや、永遠に」


散々利用されたあげく、収穫無し。それを聞いて銀時は怒り気味だ。



『私は楽しかったけど?』



だから別に金無くてもいいや〜と軽く回りながら走る。
そして橋の柵となっている台の上にジャンプして座った。



沖「もこう言ってやすし。
それに助けに来てあげたじゃないですか、ねェ土方さん」

『そーなの?』

土「しらん」


あっそ。と思いながらも土方さんをからかう。


『まったく照れ屋なんだから』

そう言ってやると顔を少し赤めて、違ェッ!!と叫んだ。



土「件のせいで真選組に火の粉がふりかかったら」


少し落ち着いてから土方さんは静かに言った。
その言葉に耳を傾ける私達。


頭上を飛ぶカラスがカァーっと鳴った。



土「・・・全員切腹だから」



時が止まった。
というか、時間が長く感じた。


「『「え?」』」


一瞬間を置いて万事屋メンバーが問う。
だがその問いに誰も答えない。


途端に銀時が騒ぎ出した。


銀「ムリムリ!!あんなん相当ノリノリの時じゃないと無理だから!」


『ノリノリだとできんのかよ。
ま、安心しな銀時、アンタは私が介錯してやっから』


沖「そうそう、心配いりやせんぜ。
チャイナ、てめーの時は手元が狂うかもしれねーが」


そうにぃがそう言った時、
神楽が“コイツ私の事好きアルヨ”と言っているのが聞こえた。


マジでかッ!?


あ、そういえば新八を介錯する人がいない。
あ、土方さんか。



そんな事をのんびり考えていたら煙草を銜え、煙を吐き出した土方さんが言った。


土「総悟、。言っとくけどてめーらもだぞ」

「『マジでか』」



そんな感じで帰っていく二人。



新「僕らも帰りましょう」

銀「ん?おお」


何か考えてたのか、銀時の無心でそっけない返事を疑問に思い、
先を歩く二人を行かせて銀時を待つ。



銀「こいつァもう要らねーな」


鬼の仮面を空に向かって高く投げ、木刀で叩きわった。
仮面は真っ二つに割れて、川へと落ちて行く。



銀「あの世じゃ笑って暮らせや」


『じゃ、帰ろう銀時』

銀「ああ」


待ってたのか、と私に言う銀時。
私は何も言わずに銀時の横に並んで歩いた。


暫く歩きながら私は聞く。


『今日は夕飯何?』

銀「アレ?お前当番じゃなかったっけ?」

『何言ってんの?今日は銀時が当番だから』

銀「え…?
・・・うぇっ・・・ちょ・・・っ!」


私は慌てる銀時を一人道に残し、万事屋へと走って行った。






いつもと変わらない


笑顔絶やさない



私の大好きな場所へと




〜後書き〜
ギャグ無いから楽と言えば楽だが、つまんない(コラ
次回はアンケ結果の過去話です