男はみんなロマンティスト




土「まぁまぁ遠慮せずに食べなさいよ」




目の前には煙草を吹かす男、土方十四郎。


その隣にしまった!という顔の、沖田総悟。




・・・・・・銀時の横に座る私は冷汗をかいていた。






土方さんにバレた・・・。







第二十八訓 男はみんなロマンティスト









銀「・・・何コレ?」


目の前に置かれた怪しげな黄色い物体を如何わしい目で見る。

どう答えたらいいのか悩む私はとりあえず


『黄色い物体・・・』と答えた。


その言葉に続いてそうにぃが口を開く。
重そうな顔で、しかし隣で煙草を銜える男を一瞥してから。



沖「旦那すまねェ、全部バレちゃいやした」


言い終わるとその視線は目の前の黄色い物へと向けられた。

土方さん以外の三人の視線はそれぞれ置かれたドンブリへと必ず向けられる。

何度視線を逸らそうが、何度も何度も見てしまうのだ。



銀「イヤイヤそうじゃなくて」


そうにぃの言葉に不足していて不満だったのか。

銀時の聞きたい事がよく分からなくて考えてみる。


そしてああ、そうかと気づいた。




『黄色い物体のオンパレードやァ!!』

銀「何も真似しなくてもいいからねちゃん?」






銀時が聞きたいのはそうにぃでもなく私でもない。


銀時を見下ろしてる土方さんだ。




銀「何コレ?マヨネーズに恨みでもあんの?」

土「カツ丼土方スペシャルだ」



イヤイヤ。多分銀時の聞きたいのはそうじゃないと思いますよ。

確かに何これ?って聞きましたけど!


何でマヨネーズ?
何でマヨネーズでご飯埋まってんの?
何で具はなくてオンリーマヨネーズ!?
カツなんて見えないんですけど!



って事ですよ。



銀「こんなスペシャル誰も必要としてねーんだよ」

『何でもかんでも”スペシャル”をつければいいと思ってんじゃねぇっすよ』



銀時の見方をすれば、土方さんの眉がぴくっと動いた。

それに気づかず銀時はウェイトレスのお姉さんにチョコレートパフェを注文している。



土「お前は一生糖分とってろ」



ふぅと白濁とした煙を口からを吐き出して、

今度はそうにぃの方へ向きなおす。




土「どうだ総悟ウメーだろ?」


自信があるのか、心なしか少し胸を張っている様な気がする。



土方さん。
そうにぃに聞いても無駄だって。



沖「スゲ―や土方さん!!」


そうにぃは土方さんの言葉を聞いて、
カツ丼・・・だったはずのものを食べていた手を止める。


え、よく食べれましたねお兄様。




だけどやっぱり続けて言った。

「カツ丼を犬のエサに昇華できるとは」



ほら・・・やっぱり。

首を左に捻ってふぅとため息を零す。
と言っても私がため息を零す事ないんだけど。

土方さんのマヨネーズにかける熱い情熱とかそんなもんに疲れたんですよ、きっと。




土「・・・何だコレ?奢ってやったのにこの敗北感・・・」



少し可愛そうになってきたので声をかけてみる。


土方さんが元気になる様な言葉って言ったら・・・?



『土方さんがそうにぃに勝つのはいつの日にやら…』

土「お前もう黙ってろ!余計イラツク!!」



ほら、元気になった。

あ、逆効果とかそういうのは気にしないの。
いつもの土方さんだからいいのです。







***





とりあえず落ち着いたところで、土方さんが話しを切り替えた。


窓の外から沢山の車が行き来するのが見える。
廃棄ガスまでも見れる此処、江戸の町。
かぶき町はまだ少ない方だけど。


排気ガスが増えるみたいに

だんだん悪い人間も増えていくんだな・・・。




"全部忘れろ"


そうにぃがどうだとか、なんか言ってたけれど
結局土方さんが言いたいのはそういう事。


その応答として、銀時は全て知っているようだと言った。

鼻を穿りながら言葉を発するのはやめて欲しいんだけども。





二人のやり取りの中、土方さんの様子を見ていて気づいた。


『・・・・・・しくじった』

・・・あの時後ろにいたのは土方さん関係だったのか





私が調べにいろいろな屋敷に入って行くとき、

いつも後ろに誰かの気配を感じていた。



そいつはきっと土方さん・・・もしくは

土方さんに私を追う様に仕命じられた隊士の者だろう





銀「大層な役人さんだよ。
目の前で犯罪が起きてるってのにしらんぷりたァ。」


ピンッと鼻に突っ込んでいた指をはじく銀時。


ちょ、汚いって。



なのに土方さんの表情は変わる事なくただ、いずれ真選組が潰すと言った。




土「だがまだ早ぇ」


腐った実は時が経てば自ら地に落ちるもんだと言う。

確かに実はそうだけど、
そういう人間は放置しておけばする程粋がって大きくなるものだ。


そんな甘い考えていいのか、土方さん?





土「オイ、今土方スペシャルに鼻クソ入れたろ。謝れコノヤロー」


やっと気づいたのか怒り出す土方さん。
さっきの冷静さは何だったのでしょうか?



『え?何?黄色い物体に?スンマセンマヨネさん』


土方スペシャルに向かって頭を下げる私。
その姿を見て悩む土方さん。


土「・・・どういうコメントしていいのかわかんなくなってんだけど。


とりあえず話進めていいか?」




聞いておきながら、土方さんは私の答えを聞かず話し出す。



話し出すと言っても、

カツ丼と言っていいのか分からない物を
口の中に駆け込みながら喋っているのではっきりと聞こえない。


というか、やはり話すたびに口から飛んでいるわけで。

汚いんですけど!!




土「テメーら小物が数人刃向かったところでどうこうなる連中じゃねェ」



下手すりゃウチも潰されかねねーんだよ、と思い声で呟く様に言う土方さん。

そして感づいた私とそうにぃ。



沖「・・・アンタひょっとしてもう全部つかんで・・・」

『やっぱ似たもの同士ですねぇ』



真選組という組織がなければ、
きっと土方さんは今にでも乗り込んでいるであろう。

副長という役職はんとも重いものだと改めて思った。




土「…近藤さんには言うなよ。
あの人に知られたらなりふり構わず無茶しかねねェ」


『言うワケないじゃないですか〜
今は近藤さんに無理させたくないし』


土「わかってるじゃねぇか」



ふわりと笑う土方さん。
そうだね。そういう風にずっと笑ってたらきっともっとモテモテだったのに。


だがその爽やかな笑みはすぐに消えた。
重く苦しい空気が漂い、重い声で私達に言う。



土「天導衆って奴ら知ってるか?
将軍を傀儡にしこの国をテメー勝手に作り変えてる」


天導衆・・・か。
その名前に聞き覚えのある私の声もやはりトーンが下がる。



『・・・やっぱり土方さん…私の後ついてきたんですね』

土「まぁな」


先程の推測が確信に変わった。
普通自分の部下をつけたりしますかね?



『天導衆っていやぁこの国の実権を事実上にぎってる連中ですよね』


隣で銀時が真剣に話を聞いている。



いつもはだらしなくてもこういう時はとても真剣なんだ。
どういうところがこいつのいいところなのかな?とふと思った。




土「あの趣味の悪い闘技場は・・・」




何やらこれから大変な事になりそうだと思った。

不吉な予感がする。


誰かが・・・誰かを失ってしまう様な気がする。



誰かの命が。

尊い命が失ってしまうような気が・・・。











「ククク・・・」


闘技場を上から見下ろし、上から楽しんでいる男。

相も変わらずこれは盛況ぶりらしい。



血塗れた戦いは古より人の血を滾たぎらすもの。



「またとない"見せ物"よ」
















その日の夜。木の茂みに隠れて見張る者が二人。


「おぅパスタ刑事、アンパン買ってきだぞ」


振り向けば其処には張り込み刑事のモノマネ最中の神楽が。
新八がコンビニの袋をしぶしぶ受け取る。


「張り込みは体力勝負だ。無理矢理胃袋に詰め込んどけィ」



どうやら、道信を張り込んでいるようだ。

新八は袋の中をのぞきアンパンを取り出す。


新「なんだよパスタって・・・僕に何も縁もないじゃないか神楽ちゃん」


パスタはアンパンに噛り付き、神楽に問うた。
パスタは神楽が答えるまでアンパンを一口、また一口とほお張る。


新「え・・・ちょっ待って!!何でナレーションも僕が”パスタ”になってるの?
ねぇ?ちょっと!?ねぇこれってがやってるの?ねぇってば!!」


神「静かにしろパスタ。
何かパスタっぽいだろ生き様が・・・それから俺のことは山さんと呼べ」



ナレーターはパスタの言葉を無視し、
変わりに山さんはアンパンを半分食してパスタの問いに答えた。



新「だからなんでナレーションでの僕の名前が”パスタ”なんだよ!?」




・・・・・・・・・・・・。


伸びたパスタは弱弱しいから。





パ「どーゆー意味だコラァ!!
って、発言の時の名前まで”パ”になってんじゃねぇかァ!!


パスタは伸びてなかったら堅いんだぞ!!」



空に向かって怒鳴るが、ナレーターが空にいるという事自体間違いである。


パ「うっせぇ!!」



パスタは茹でる前はすぐに折れる。

袋から出すと大抵何本か折れてるのが例である。

どんな時も脆いところが同じなのでパスタなのである。




新「何このナレーター・・・マジでムカつくんだけど!!」

神「山本神楽って言うんだよホントは…」

新「ウソつくんじゃねーよ!!今関係ねーだろ!!
一時のマイブームで設定ねじってんじゃねーよ!」





煩ぇ!!


新「ぐぇっ!?」



ナレーターの叫びと、拳が、何もないところから飛んできた。
凄い現象だ・・・。



新「何それ、アンタがやったんでしょ!?」



煩いんじゃボケェ!!

お前それでも張り込んでるつもりか?

もろバレバレなんだよ




新「さっきから本当に人の心を痛みつけるナレーションだなオイ」


諦めたのか、一度ずり下がったメガネを上げてため息をつく。



神「それより奴さんはどーだパスタ?」


真剣な顔になった神楽だが、結局口調は変わらない。


新「全く動きナシだよ神・・・山さん。
は今日中、銀さんは二、三日中に動きを見せるって言ってたけど

…っていうか銀さんとは何やってんの?」


結局新八も神楽に乗ったみたいだ。


神「ボス達はあのムセー連中に目ェつけられて動きがとれん」


俺達がやるしかないんだパスタ、と言う真剣なセリフも
今の神楽が言えばひとつのジョークに聞こえるのは気のせいだろうか?


いや、気のせいじゃないな。




―ザッ―・・・

神新「!?」


二人の後ろの茂みが一瞬動いた。

振り向かず、小声で会話する二人。



神「バレたかパスタ!!」
新「ちょっとヤバイんじゃないの!?」


敵がいるかもしれないのにそんなんでいいのかと
思いたくもなるがそんな事は今はどうでもいいな。



「オイ」


二人は同時に肩を叩かれた。

体がビクっと飛び上がって、

「「ぎゃぁぁぁあああ!!」」

大きな悲鳴を上げた。





『ちょっ・・・バカ!私だよ私!!』


二人の口を両手で塞ぎ、声を漏らさないようにする。

張り込みじゃないの!?コレ張り込みなんでしょ!?
大声出してどうするよ!?



新「!?」
神「なんでがいるアルか!?」


私の声と顔を確認して安心した様子を見せる二人。
それくらいで驚かなくたっていいのに・・・。


『・・・逃げてきちゃった』



あの連中から目ェ逃れるなんて容易い事よ。

赤ん坊をあやす方が難しいっつーの



新「そういえばさ、今更なんだけど、って性格変わってない?」

『え?そう?』

新「うん」



出合った時よりもクールになった…って感じかな?






新「そういえば銀さんは?」

私が隣に腰を落ろすと、新八は問うてきた。


『まだアイツらの檻の中・・・牢屋じゃないよ?視野に入ってるって事』


神楽・・・じゃなくて山さんに貰ったアンパンをかじりながら答える私。


新「って事は取り調べでも受けてるのかな。
取調べと言えばカツ丼・・・
いいな〜パスタとか食べたい…あっ!パスタ刑事じゃん」



あ、自覚しちゃったよ新八・・・。

あ〜あ〜もう一生パスタ・・・?

ん?



背後から何か気配を感じる。

だが一般人の気配じゃない。戦いに慣れている者の気配だ。




神「成長したなパスタ、俺の背中は頼むぞ」

新「ハイ山さん」


暢気に二人は話しているが、、本当に大丈夫なのか!?

一人背中に気配を配っておく。



そのときだ。


「スイマセン、背中ががら空きですが」

新「ギャアアアアア!」


後ろから道信さんが現れて、新八は驚いて転んだ。



やっぱり…道信さんだったか・・・




神「落ち着けパスタァ確保だ確保ォ!ゲホッ!あんパンがのどに!」

『・・・神楽大丈夫か?』


神楽もアンパンが喉につまって苦しそうに転び回る。

そんな神楽を見ながら、新八は気づいた。

道信さんを越した向こう側に馬車がある事に。



新「道信さんアナタ…」

『このまま江戸を出るつもり?』


その問いに一言、ええ、と言った。

間を開けて再び話し出す道信さん。



道「君達がどういうつもりで私を張っていた知りませんが、見逃してほしい」



新八とが道信の話を聞いてる間

神楽は生死の危機に達してい。た



『神楽…顔怖い…』

神「た…助けてくれェ…グォッ」





道「…勝手なのはわかっています。

今まで散々人を殺めてきた私が・・・



でも、もうこれ以上・・・

・・・殺しはしたくない」



神楽はうずくまっていたが、残りの二人は真剣に聞いている。。

道信さんが静かに話す。



道「何年かかるかわからない。

でもあの子たちに胸をはって



父親だと言える男になりたい…」



新「……道信さん」



『道信さん…アンタはもう十分父親と言えるよ。
ただ、胸を張る、張らないは自分の気持ちの問題だよ。


自分が胸を張れると思うのならそうすればいい。
何年もかけて本当の父親と胸を張って言えるようになりたいってのは…さ。


アンタからしたら胸を張れないのかもしれない。
でもさ、アンタの子供達からしたら



もう自慢の父さんだよ』


にこっと笑う。
すると道信さんも笑ってくれた。

悲しそうな、笑顔。



道「……さん…ありがとう」





『!!』
神「しッ!!」


先程まで苦し紛れだった神楽が復活して、
私と同様、神楽も殺気を感じていた。


現れたのは天導衆の手下共。
結構の人数だ・・・。



神「・・・早く行くヨロシ」


神楽が道信さんに言い放つ。
その言葉を聴いて驚く道信さん。


『そうそう!早く行っちゃいなって』


私に続いて新八も木刀を構えながら言う。



新「何が正しくて、何が間違ってるのかなんてわかんないけど」

『銀時ならきっとこうすると思ったから……だよね?』

新「うん」



道「・・・・・・・・・すまない!」


ザッという音が近くに茂みから聞こえた。

消えた道信さんを見届け二人を見る。


『戦闘開始だ、神楽、新八』

神「ラジャーネ!!」




夜の所為で馬車の音が良く響く。

流石に敵はソレに気付かないわけはなく。


「追え、逃がすな!」
「始末するんだァァ!」


敵は走って追いかけるが、何かの衝動で吹っ飛ばされた。


『邪魔なんだよ、チンピラ』


唾を吐き散らす。
もちろん、 吹っ飛ばしたのはだった。



「女の癖に生意気なガキだ…やっちまえ」

『見くびんじゃねぇよ』


同時に二本の刀を抜刀し、土を踏みしめる。


『オラァァ!!』


刀を構え、手前の敵に向かって瞬時に駆け出した。





神「行くぞォォパスタァァ!!に続けェェエエ!!」

新「おう山さん!!」



二人もに続き、敵を倒して行く。






「お前ら、道信の仲間か?」


刀と刀が重なり、鈍い音が耳を劈く中立ち向かう敵が私に問う。


『仲間じゃない・・・。
でも、邪魔はさせない!』


―カンッ―・・・



足で相手の刀を払いのけ、低い位置で素早く動き相手の懐に入る。
その動きに驚いて拍子抜けな声を出した。

「んな!?」

『遅いんだよ怪物ヤロォ』


腹を思いっきり蹴り飛ばし、他の奴にぶつけてやる。
そいつは仲間を巻き添えにして気絶した。


だがまだ敵はいっぱいいる。
倒しても倒してもまた別の奴が襲い掛かってくる。




「ガキの癖に強いじゃねぇの」

『アンタらは怖いのは顔だけなんじゃないの?』

「とことんムカつくガキだぜ…」

『じゃぁ倒してみろよ、カス』




―キィィッ――・・・


刀がすり合い、気持ちの良いとはいえない音が発する





「人間はこの音が嫌いだ。天人も嫌いな奴はいる」


『……何が言いたい?』


耳を押さえたい一心だが、刀を緩めばこちらが危ない。
我慢して相手の刀先を見つめる。



「だが俺は、この刀がすれる音を快感に思うようになった。


人を斬る前兆の音だぁ…。
このまま刀を滑らせれば相手の肩からスパッと斬れる……。


特に女子供を斬る時がまたたまらねェ…」



ギリギリと刀が唸る。

後で手入れしなきゃ・・・。



『イカれてるよね・・・。
そんな奴は私が懲らしめてやるよ』



足に力を入れ左足を軸足に地面を強く踏み

右足を高く伸ばし相手の首筋に足を入れ込む感じに叩きつける。




「ぐあっ…」


そのまま体をひねり、今度は右足を軸にして反転し左足で踵落としを決めた。

そのまま男は倒れ気を失った。



『お前らなんか素手でも勝てるっつーの!』


見下ろして呟いたときのの瞳は真っ黒だった。

瞳孔が、開いていた。









そうだ神楽は!?新八は!?

どうしたんだろう?




周りを見渡してみるが、
戦いに没頭していたせいで無意識に遠くまで来てしまったらしい。
倒れた奴以外誰もいない。


神「ァァア!!」

『神楽!』


少し泥が頬についた神楽が遠くの方から駆けてきた。

『無事?』

息を切らせる彼女を心配して顔を覗き込む。


神「私、あんな奴等に負けるタマじゃないネ」

『そうだね』


神楽が無事という事は分かったが、新八は・・・?




新「!神楽ちゃん!」

「『新八!』」


二人とも私が心配すると出てくるんだ・・・。
ある意味超能力者じゃないの?


新「遅れてゴメンね…ちょっと手間取っちゃって」



『遅いから心配したよ』

神「メガネは私と違って弱いから、心配するアルな」

『そ!その通り!』


二カッと、神楽と笑いあった。





新「道信さんは?無事に江戸を出れたかな?」

『出れるといいね……』




・・・一人だけ、何処か違う気配の奴がいた。


そいつは私達と戦っていない。
きっと道信さんを追っていったのだろう。





もしかしたら…もう……







R-R-R-R-R♪

自分の携帯が鳴った。
すぐに懐から取り出して出る。

『ハイ?もしもし』


か?”


声で分かった。兄の、そうにぃだ。


『そうにぃ?どうしたの?』


心なしか、暗い。
もしかして・・・と不安になる。


沖”早く帰って来い・・・・・・。
オメェも現場にいたと思うが、知らせなきゃならねぇ事がある。
道信の事だ・・・ならわかるだろ?・・・俺が何を言いたいのか…”


『・・・・・・・・・』



そっか・・・

やっぱりそうなんだ…


『わかった…戻るよ』



一言そうにぃ伝えると電話をきった。

『帰ろっか』


神「どうしたアルか?」
新「?」

疑問を浮かべる二人に答えを何も言わず歩き出す。


『とにかく帰るよ』


二人を無理矢理引っ張って万事屋に向かい。


二人と別れ、それから一人


真選組に向かった






真選組に行けば、そうにぃが玄関で立っていた。

そしてそうにぃから詳しく話を聞いたあと、
土方さんを連れて三人で万事屋に向かった。



言い出しにくかったけれど、

何も劣らずに全てを三人にありのまま伝えた。




万事屋ではしんみりとした空気に

激しく窓を打つ雨の音だけが耳に流れている。





銀「あ〜嫌な雨だ」



皆に背を向け手を後頭部で組み、窓越しに空を見上げる。


銀「何もこんな日にそんな湿っぽい話持ち込んでこなくてもいいじゃねーか…」


『・・・・・・・・・。』


沖「そいつァすまねェ。
一応知らせとかねーとと思いましてね」


そうにぃも表情はいつもと変わらないが、声が低い。
こんなそうにぃは珍しかった。


神「ゴメン銀ちゃん」
新「僕らが最後まで見届けていれば…」


自分の所為にする二人の頭をなでる。


『二人の所為じゃない……私の所為なんだ…』


道信さんがやられるかもしれないと察する事はできた。


でも


きっと大丈夫だって思ってた


甘く見ていた私の責任…








銀「オメー等の所為じゃねーよ。野郎も人斬りだ。
自分でもロクな死に方できねーのくらい覚悟してたさ」


先程からずっと同じ格好の銀時。
銀時も隠してるがとても暗い。


そうにぃは刀を手に立ち上がった。


沖「ガキどもはウチらの手で引き取り先探しまさァ。
情けねェ話ですが、俺達にはそれぐらいしかできねーんでね」


目をつぶり自分を深く追い詰めてる様な姿。

さっきから言ってるが、兄貴のそんな姿はそう見ない。



の心は少し痛んだ。



沖「旦那、いろいろとすいませんでした。この話はこれっきりにしよーや」



―ガラッ―
そうにぃの言葉が合図になったのか、あの子供達が部屋に入ってきた。
そうにぃは驚いている。


『皆・・・・・・。』


沖「オメー等ココには来るなって言ったろィ」



そうにぃの言葉を無視して通り過ぎる。

「兄ちゃん」

一人の男の子が銀時に話し掛けた。


「兄ちゃんに頼めば何でもしれくれるんだよね?万事屋なんだよね?」


必死に問う子供。その子供に続けて女の子が叫ぶ様に言う。

「お願い!先生の敵、討ってよォ!」

自身に向かって泣きじゃくる子供達。



銀「!」

小さな男の子が銀時の所に歩み寄って一枚の紙を差し出したのを見て驚く銀時。


「コレ…僕の宝物なんだ」


他の男の子が大きな風呂敷を机の上に広げた。




「お金はないけど…みんなの宝物あげるから」

「だからお願い…お兄ちゃん」



そんな子供達を見てそうにぃは何かを考えていた。


沖「いい加減にしろお前ら、もう帰りな」



そうにぃが怒る。だけど、やっぱり聞かなかった。


「…僕知ってるよ」


何かを言い出す子供。
何を知っていると言いたいのかなんとなく分かる。



「先生、僕たちの知らないところで悪い事やってたんだろ?」



"だから死んじゃったんだよね"

そういう彼らがとても悲しそうに見えた。
実際、もっと辛いんだろう。

お父さんが、、死んでしまったのだから。



皆知ってたんだ、道信さんのこと。



「でもね僕たちにとっては大好きな父ちゃん。




立派な父ちゃんだったんだよ…」





も言ってたその言葉。

銀時はその言葉を自身に強く噛み締めた。





銀「オイガキ!」

小さい男の子に向かって言う。


銀「コレドッキリマンシールじゃねーか?」


「そーだよレアモノだよ。何で兄ちゃん知ってるの?」


シールを見て微笑む銀時。

あーあ。結局こうなるんだ、と先がなんとなくつかめる私も微笑んだ。



銀「何でってオメー、俺も集めてんだ…ドッキリマンシール」



まるでその言葉を待ってたかのように立ち上がる。



銀時はシールを口元に持っていき、子供に笑いかける。


「コイツのためなら何でもやるぜ」




銀時のバーカ。

昔っから変わってない。



嘘までついちゃって







ゆっくり歩き出す銀時に、そうにぃと神楽が止めに入る。


沖「ちょっ…旦那ァ」

神「銀ちゃん本気アルか」



銀時を止めようとしていた二人は
私は風呂敷の中から縦笛を一本掴み立ち上がったのを見て驚く。



沖「!!」


そうにぃが私を止める。
いくら兄のいう事だって聞かない。



『さぁ行こう、銀時』

銀「オイ……」

『分ってるでしょ?』



にかっと笑う私。
銀時はその顔を見てもどかしく笑ってから、今度は呆れたかの様に笑った。



銀「………フッ…オメェは昔から変わんねーな」

『そーゆー所はお互い様だっつーの』



銀「行くぞ」

『はいは〜い』


 



「最強な野郎だとは思っていたがここまでくるとバカだな」



扉まで歩み寄った時、一人の男がもたれかかっているのが目に入った。


「小物が二人刃向かったところで潰せる連中じゃねーと言ったはずだ・・・死ぬぜ」



いつもいつも、私の邪魔をする上司、

土方十四郎だった。



銀「テメーらにゃ迷惑かけねーよどけ」

『一応真選組には所属してるけど、
あくまでバイトの様なモノだから迷惑かけないし、死ぬ気もない』


真剣な顔をして言う。
土方さんは私達を静かに見つめた。


土「別にテメーらが死のうが構わんが、ただげせねー。

わざわざ死にに行くってのか?」



沖「土方さん、死なせたらぶっ殺しますぜ」



遠くからそうにぃが口出しした。
いやいや、土方さん関係ないからね。



『私はそんなんで死ぬタマじゃないっスよ?』

沖「わかってらァ、ただ土方を殺す口実みたいなモンでィ」



あ、私を利用するわけですか。
酷いですね、お兄様。




銀「行かなくても俺ァ死ぬんだよ」



意味の無いコントをしていたら銀時が口を開いた。



銀「俺にはなァ心臓より大事な器官があるんだよ。
そいつァ見えねーが確かに俺のどタマから股間をまっすぐブチ抜いて俺の中に存在する。
そいつがあるから俺ァまっすぐ立っていられる。フラフラしてもまっすぐ歩いていける」







「ここで立ち止まったら、そいつが折れちまうのさ」












「魂が














折れちまうんだよ」







そのまま銀時は土方さんの前を通り過ぎた。

その姿を後ろから見つめ、銀色が視界に見えなくなってから下を向いた。



『私は銀時の魂を折りたくないから止めもしない。
私は昔から銀時のそーゆー所に助けられたから私はそれを保ちたい。


何言ってるのかは自分でもわかんないけど・・・
私にも魂と言うなのプライドってェものがあるんだ』



銀時を追うように部屋を出た。

廊下を歩いていた銀時が言う。




銀「心臓が止まるなんて事より俺にしたらそっちの方が大事でね
こいつァ老いぼれて腰が曲がってもまっすぐじゃなきゃいけねー」




そう言うと万事屋を後にした。

土方さんは二人の後姿を見届けてから、煙草を指に挟んで呟く様に言った。


土「・・・己の美学のために死ぬってか?…とんだロマンティズムだ」





新「なーに言ってんスか?男は皆ロマンティストでしょ」

神「いやいや…女だってそーヨ新八」



風呂敷の上のおもちゃを探り、自分のお気に入りをひとつ手にとる二人。


新「それじゃバランス悪すぎるでしょ?男も女もバカになったらどーなるんだよ」


そう言う新八の頭にはゾウの人形がくくりつけてあった。


二人の姿を見て驚く土方さん。
いつもの瞳孔が倍に広がった。


神「それは今から試しに行くアルヨ」


ピーッと神楽はピロピロ笛を吹きながら、二人は部屋を後にした


土「オッ…オイてめーら…」



二人を止めようとするが、既に二人は行ってしまった。



土「……どいつもコイツも…何だってんだ?」


呆れている土方さん、ましなのは総悟だけかと思った時だ。



沖「全くバカな連中ですね」


そう言う沖田の手には鼻つき伊達めがね




沖「こんな物のために命かけるなんてバカそのものだ…」


そうにぃはメガネをかけて歩き出した。

土方さんはまだ気付いていない。



土「全くだ。俺には理解できねェ……ん?
ってお前何してんだァ!?何処に行くつもりだァァ!!」



やっと沖田の状況を把握し沖田を止めようとする。

しかし沖田は既に玄関の扉を開いていた。


出ようとして
後ろを振り向く。



沖「すまねェ…土方さん





俺もまた






バカなもんでさァ」




出て行った部下に呆れる土方。

どいつもこいつも・・・アホばっかだな・・・。











皆の強い意志が終結し

己の魂を貫く思い








先頭を歩く銀時と

土砂降りの中をただ歩き続ける











NEXT

〜後書き〜

更新滞納すみません。今回はシリアスですね。
やっぱりちょっと苦手ですねェ…。暴走しちゃいます。
あ、すみません。既に暴走してました。さて次回は万事屋メンバー大暴れ!
……とか言って其処まで暴れてなかったり…
新「どっちだよ!最後くらい締めくくれよ!」
はいはい……ったく煩ェんだよメガネ
新「……もういいよメガネで…(諦」
では次回もよろしくお願いします<(_ _)>