疑いを晴らすことは父ちゃんをなだめるより難しい



沢山の星が薄っすらと輝く夜

肌寒い風が頬を撫でる


犬の遠吠えが聞こえる真っ暗な道に

家えと帰りに急ぐ女有り





『あ゛あ゛あ゛〜だるぃ…』


は首を支えて唸った




ったくさ〜
最近忙しいんだよね


唯でさえ情報屋で忙しいっつ〜のに

隊士の扱い悪いよ土方さん…





ぎゅ〜ぐるぐると低く唸った自分のお腹を押さえ
一人むなしく夜道を歩く


『ぅ〜…お腹空いたぁ・・・・・』


無性に何かを食べたいという衝撃が走った。
ん?衝撃?ん?ん!?
ま、いいか。うん。
自分に突っ込むとかむなしいよね。


空で己をアピールするかの様に光続ける星々をただただ見つめ歩くだけ

『・・・何・・・アレ・・・』

その時だった。何か素早いものが視界に入り
一瞬の間に姿を消した。

その正体を探す様に夜空を見渡した。
月を頼りに辺りを見渡す。
見間違えるわけがない。

あれは人だ。


『見つけた!』

大きな月に人影があるのを。

そして気づいた。


その格好はまさしく忍者だったことに。

だがその人影は一瞬にして消えた。




消え…た?

何なんだ…?




ふと気が付けばもう家の前で。
時間は12時を回っていた。

もの凄く眠い。
眠い眠い眠い。


もう皆寝てるな〜。
普通起きてるわけないか。



ガラララ…

『ただいま〜』


誰にも聞こえない様な呟いた声に
当たり前に誰からも反応があるわけがない


分かっていたけど。
少なからず期待してしまう自分がいた。



隣の部屋で寝ているであろう
人間の鼾を微かに耳にし

暗い部屋に灯を灯した。




久しぶりに銀時のPI−に飛び蹴りしてやろうかな〜(第十七訓参照)

アレ結構叫びが快感だったんだよ

感触は最悪だったけどな

叫びが…な





でもやっぱり考え直す
色々考えた末


『今日は寝かしてやろうか』



今日はソファで寝てあげよう。
折角幸せそうに寝てんだもんな。
邪魔しちゃ・・・ダメか。


そしては眠りについた。


心の奥底に違和感を感じて…







翌日早朝




新「おはよーございます」

『ん・・・んぁ?・・・』


新八が居間に入ってきた事で目を覚ます。

ソファで寝ていた私は目を摩りながら起き上がった。


『あ〜…新八おはよ〜』



新「おはよう。
でもはまだ寝てていいよ、昨日は遅かったでしょ。
大体、ソファで寝なくてもいいよ。あの人に気遣いは必要無いって。」


『ん〜…今日も仕事あんの…』

優しい言葉を貰えて嬉しいけれど、
私には今日も明日も仕事がある。

まだボケた顔つきの私は返事を返すのが精一杯だった。

寝起きの私には目を開く事すら難しかった。



新「大変だねは…
グータラな連中はまだ寝てるのか…。」



新八にそう言われ、私は一度をあたりを見渡す。

そして自分達しかいない事を確認して頷いた。



『そーみたい』






なかなか起きてこない二人を新八が起こしに向かう。

新「ハーイ起きてェ〜朝だよ〜」


まずは場所が近い神楽の押入れを勢い良く開いた。

眠そうな神楽が体を起こして目を擦るのが見える。
あ、おはヨ〜と一言唸るように言った。


そして新八が銀時の部屋の襖に手をかける。

その時何か・・・嫌な予感がした。



『あ、新八待って――』



遅かった・・・


新八は中を見て何も言わずに襖を閉じた

『?どーした?』


やっぱり変な違和感は当たってたみたいだ。

でも、何があったんだろう・・・



神「?何やってるか新八――」

新「来るなァァァ!!」



目を擦っている神楽が俯いたままの新八に問うが

新八はそのままの体制で叫び、神楽が来ることを拒んだ。




神「銀ちゃんに何かあったアルか?」

何があったか知らない私達は興味津々。
違和感など忘れて私も新八に問う。


『どーせストパーだろ?
朝起きたらあら吃驚サラッサラストレートォ』

神「何?そーアルか?ストパーアルか!!」



好奇心が湧き上がった神楽が無理矢理襖を開けようとする。

焦った新八がそれを阻止するが、神楽には敵わないだろうな。



新「止めろォォ!!あっちには薄汚れた世界しか広がってねーぞ!」


自分のキャラ変わってるのにも気づかないツッコミ。
うん、もうだめだ。
寿命だ、奴は。



思ったとおり、数秒後。
新八が神楽の力に叶うはずもなく襖は開かれた





「う〜ん…」


体が固まる。
時間が止まる。
喋ろうと思って薄っすらと口を開いたまま、私は動かなくなった。

また神楽も同じで・・・



襖が開いた先には…


大の字で寝ている銀時と

忍者の格好をして銀時の上にかぶさっている女がいた。



銀「ん?」


物音に気が付いたのか銀時が目を開ける。

そして目の前で眠る女を目にして私達同様固まった。








第二十六訓 疑いを晴らすことは父ちゃんをなだめるより難しい







ねりねり くちゅくちゅ


納豆を練り続ける女

部屋にはその練る音しかしなかった。



銀「………で…誰この人?」



長い沈黙の中

やっと銀時が口を開いた。



『オメーが連れ込んだんだろーが』


私の口調は自然と荒々しくなっている。
その事に気が付いたのか、新八が私の方を向いた。


新「……(…怒ってる…)」



目の前では銀時が昨日のことを思い出すのに必死になっているが
一向に思い出せない。

しっかりせいや、おまん。



心の中では明るくても
実は物凄くイライラしていて・・・


三人の会話を聞きつつ私はずっと黙っていた。





むしゃくしゃする…

銀時が女を連れ込みやがった

私がいるこの家で

同じ屋根の下に二人も女がいるのに堂々と






せめてラブホ行けコルァ!!!


新「其処かァ!!」

『心の突っ込みをありがとう』




まぁとにかく銀時がそんな奴だったなんてな


裏切られたっていうか・・・

なんか・・・私達を気遣う意志が伝わらないってか・・・


とにかく。

イライラすんの。



目の前で繰り広げられる会話を私はただただ聞き

たまに助けを求める目をして此方を見る銀時を睨んだり。




銀「…あの〜俺何か変な事しました」

「いえ何も」

銀「俺ァてっきり酒の勢いで何か間違えを起こしたのかと」


『酒の勢いででも、それは自分の本心のした事だろうが』


銀「……」



私は無意識に銀時にキツく当たる。

分かってるけど、止められない。




『ケッ…やってらんねェ……じゃ仕事行くから』


新「キャラ変わってるよ…」



はソファから立ち上がり、部屋を後にした。

未だに話し続ける二人ちらりともを見ずに。






新「ったく…このバカが……


………」



の出て行った方を見つめながら呟く新八。

そしてそのまま視線は天然パーマの男へ向けられた。



目が合った銀時は新八に訴える。



銀「なぁ、みんなの銀さんが納豆女に取られちゃうよ!」


焦っているのか、ふざけているのか。
必死とは思えない口調で言う姿に新八は苛立ちを覚える。



新「知るかよ…」

銀「…・・・新八ってそんなキャラだっけ……?」


その言葉に焦りを感じる銀時。
危ない感じ。
珍しく新八が本気で怒ってる気がする。



新「がいたら言ってるかな〜って・・・

勝手にしろよカス」


銀「なんか沁みてくるねその言葉…」




新八までも出て行ってしまった。
残った銀時と神楽と納豆女。

銀時は二人の出て行ったドアを見つめた。




銀「…はぁ…」


大きなため息をつきながら銀時は頭を抱える。





銀「冗談じゃねーよ…」












***




私は今、真選組屯所にいる。
そして顔を少し上げて見えるいつもと変わらぬ空が
何故かやけに曇って見えた。


小鳥が囀り風は穏やかに頬を掠める。

いつもなら煩く感じる隊士達の活気溢れる声も
日常的に溢れかえる他人の会話も

今は耳に届かなかった。




『あ゛〜うぜェ……』



の右手には酒の入ったコップ。

今は仕事中だというのに酒を飲んでいた。

真昼間。
しかも副長の目の前で私は一杯、また一杯と次々にコップを口に運んだ。



土「…何かあったのかよ」



隣で書類整理をしていた土方が話し掛ける




普段なら怒ってるところだが

コイツが怒ってる事なんて少ないから気になる





『別にぃ何もありゃーせんよ』

土「口調変わってんぞ…大体オメー未青年だろ」

『そうにぃだってじゃん』



そうして指で指す方向には


沖「…へ?…///」



沖田総悟が既に完全に酔っている姿があった。




土「なんで総悟がいんだよ」

『知らね』

土「てかよ…オメーホント酒に強くねーか?」

『前は弱かったんだけど、最近強くなった』


「・・・・・・(強くなったって・・・何?そんなに飲んでんの・・・?)・・・」



一瓶平らげてコップを机に置く。

再び空を見上げて呟いた。



『…今日も暇だね〜…』


土「…ならお前もコレ手伝えェェエエエエ!!!」




『ヤダ』

そう言った瞬間
土方さんの堪忍の緒が切れた音がした。



土「たたっ斬る!!」


土方は刀を抜き、私に向かって振り回す。

が、

ひょぃっと軽々と体が勝手に避けてしまうわけで


『こんなん楽勝ォ〜』


口から勝手に出てしまう言葉が余計に土方さんのイラつきを増さす。



『土方さんみたいな奴に私は倒せませんよ〜あっはっは』

土「てんめェ!!」



土方さんの攻撃を避けるたびに口から次々と言葉が発せられる。
それが全て相手を傷つけるものばかりで

私はイラつくと人に当たってしまうタイプなんだとつくづく思う。



『土方さん…瞳孔がヤヴァイですよ。
いつもの二倍開いてます…スゲェ…私には到底できない

土「黙っとけェエ」


『土方さん…なんでいっつもそんなに怒ってるんですか?
イメチェンしたらどーです?気分転換になっていいですよ?

そうだ。白鳥タイツなんてどーでしょォ?
真っ白なピチッピチタイツに白鳥…てかアヒルの首がついてる奴。


今なら3000円です!お得価格!どうだァ!!』

土「どうだァ!・・・じゃねぇ!!誰が着るかァそんなもん!!」




『ぇえ〜着てくれたっていいじゃないですかァ…

・・・・・・折角土方恥写真集作って売ろうと思ったのに…


土「聞こえてんだよ!何考えてんだオメェ!!」


『何って…そのまんま。土方の恥ずかし面白特集です。
今のトコ100枚はそろえてんですよ。凄いでしょ〜流石私ですね情報屋が役立ってる』


土「何でそんなあんだよ!そして何で俺気付かないんだよ!!」



『中には…入浴シーンも…アラ…ちょっ……


ココまでしか言えませんな』


土「オィィイイイイ止めろォ!!頼むから止めてくれェ!」


『やなこった。目指せ1000枚ですもん目標ですもん
そして売るんです。攘夷の人も買ってくれるんだろ〜な〜』



一部始終を見ていたそうにぃが私達を見て言う。



沖「ぷっ…流石俺の妹でさァ」


『でしょ〜vV』


流石に疲れたのか、土方さんは
刀を下ろして腰に挿し胡坐をかいて座った。


私も続いて腰を下ろす。
と同時にそうにぃが私に言う。


沖「元気になったようだなァ」

『・・・へ!?』


驚いた。
怒ってはいたけど、元気がなかったわけじゃ・・・・・・。
ないつもりだったけど、、実はそうなのかな?


沖「なんかずっといつもの元気なかっただろィ」

『そうにぃ…』


沖「何があったかしんねェけど…俺はの見方でィ」

『…ありがとう///』


沖「おぅ」





よぉし

帰ったら銀時懲らしめよう

確かあの人、元お庭番のさっちゃん・・・だっけ?
見たことあると思っていたけど、今気が付いた。

冷静にならないと気がつけないんだな・・・。
勉強になった。


なんか・・・忘れてないか・・・私?
ま、いっか。


そのさっちゃんとかいう人の為にも浮気とかしないように懲らしめてやるか!




・・・・・・・・・っ!!


『どあささあああ!!!』

「!?」




忘れてた!!


今日闇商人”根津三屋”の宿に侵入するんだった…



『ちょっ…仕事あったんでさらば!!』



ドロンッという音と共には消えた。

正確に言えばただ走っていっただけなのだけれど。


残った二人は同時に叫んだ。


「古ッ!?」







***



『アレ?』


コレは…どーゆー…事なんだ?


早速仕事の場所へと向かった私。
だけど様子がおかしい。




散らかった部屋…


倒れてる人たち…




『何が…』

ま、いっか。



あ、しめた…

コレで難なく情報が取れる!







私はそれから気楽に情報をいっぱい集めた

沢山の有力な情報を、これでもかってくらい。





***



『ただいま』


時間は10時。
昨日ほど暗くはないが、夜は夜。

今日も暗い中仕事から帰ってきた私は凄く疲れてた。



神「おかえりアル!」

そんな私を元気な笑顔で迎えてくれた神楽に少し癒される。



『アレ?まだ起きてたの?』


神「待ってたネ!
もしかしたら帰ってこないんじゃないかって…」


『くすっ……神楽を置いて何処にも行かないよ』


神「!」




力強く神楽に抱きつかれて疲れた体が倒れそうになる。
気づいた神楽が慌てて私から離れてごめんと一言言った。



神「そうだ!銀ちゃん何もなかったアルヨ」

『へ?』

拍子抜けな声をつい出してしまった。


神「さっちゃんは始末屋らしくて、
仕事して屋根の上走ってたらこのボロ屋敷に嵌ったらしいネ」


『へぇ〜…』



あ、そういえばあの人始末屋だったな・・・忘れてたよ・・・。

今度情報探して売ろう(黒)



ガラッ
襖が大きな音を立てて開いた。
其処から銀色が見えて、ゆっくりと近づいてくる。



銀「あ……今帰ったのか?」

『うん、まあね』

銀「散々疑っといて謝罪もなし?」

『銀時が一番認めてたと思うんだけど』


銀「……スンマセン」


『よろしい』



態度がいきなり小さくなる姿に自然と笑えてくる。

朝まであんなに怒っていたのが嘘見たいだ。



神「ァ!お腹空いたネ!何か食べさせてヨ!」

『はいはい』




何かあっても

結局何事もない一日が続く


それっていいことだよね




〜後書き〜

今回ギャグがないですね
まぁ微妙にありますが〜微妙です。笑えませんよね〜はっはっは
お優しい方は慰めてください(オイ