恥ずかしがらずに手を挙げて言え



サクサクッ

大江戸マートに広がるサクサクという音
その音はコンビニには相応しくない音だった。
コンビニの中で食する場所があるのは一部だけ。
このコンビニにはそんな場所はなかったのだ。


では何故そんな音が?と言えば話は簡単。

神「いらっしゃいませヨ〜」

その音は神楽によって発せられていたのだ。

神楽の手にはうまい棒。
ソレをずっと食べ続ける彼女の口からはボロボロとカスが零れ落ちてゆく。



男「・・・・・・おぬし勤務中であろう。何故うまい棒を食べているのだ?」

神「うまいからでございますヨ〜」


いや、理由になってないよ・・・。
と突っ込んでもそれは無意味だ。


男「…おぬし、私をナメてるだろう。」


そう聞いた瞬間
神楽の食べるスピードが上がった。

先程よりも大量のカスが袋に落ちて行く。


男「食べクズが袋に入ってるだろーが!!ちょっ…ましな奴はおらんのか!?」

『は〜い。どーしたんでしょーか?』

呼びました〜?と元気よく愛想笑いをする私。
はっきり言って接待とか苦手なんだけどな。

男はそんな私の姿に安心しているみたいだ。
一見普通そうだもんね、私。

男「この店員なんとかしてくれんかの?」

『うちの神楽が何をしたんですかね?』

男「勤務中のクセにうまい棒を食べてるのだが」

『何が悪いんでございましょう?
あ…アレですか?分けて欲しいですか?オススメですか?』

男「いや…違うから…」

『オススメはですね〜”テリヤキバーガー”です』

男「聞いてねェ!!」

『うっせぇ!!』

男「ウボェッ!?何で殴るの!?何で殴られなきゃいけないの!?
え!?ちょっ…何でジャンプ破いてんの!?」

頬をグーパンチした後、袋に入っていたジャンプを破っていく。
もう代金を貰っているというのに。
いや貰っているからこそ破っているのだ。


男「ちょっとォ!!店長ォォ!!店長を呼べェ!!」


男が店長を呼び、そして出てきた。
私の後ろから・・・


「店長の坂田です。お客様何か不備でもございましたか?」


チョコ棒を食べている店長…基銀時が現れた
銀時からもまた、サクサクという音が絶えない


男「不備はお前らの頭だァァァ!!」

『まーまー。そう気を落とさずに』

男「誰が落とすかぁ!!」



三人はレジの裏に座り込んだ

銀「・・・なんかエライ怒ってんじゃねーか。」

お前ら何やったんだよ、と銀時

神「来た時からずーっと怒っているであります。店長」

『私はお客様にうまい棒のオススメ教えてあげたっス』

銀「親切してやったのにキレてんの?あの親父…」

こうしている間にも、サクサクやビリビリという音は絶えない。
一言話す度に、サクサクッ、ビリリッと音が鳴るのだ。



すると、聞こえてたのか
そのお客は私たちに向かって怒鳴った。

銀「僕等臨時で入った者なんで難しい事わかんないっス」

『私ら良くわからんままこの仕事押し付けられただけなんで何にも知らないっス
でも頑張ってやるんでよろしくお願いしや〜す』


男「一生懸命やらなくていいから其の棒とれっていってんだよ!」


男が話している時、神楽は袋をレンジに入れて暖め始めた。

男「オイちょっとそれ何あっためてんの!?」
神「自分わかんないっス。」
『・・・私もどうしたらいいのか分からないっス。
このまま爆発を待つか、このままジャンプを破り続けるか究極の選択をさせられてるッス。』

男「どうでもいいから止めて!!
その究極の選択肢の中に"止める"という項目を入れて!!」


『爆発数秒前〜・・・10、9,8・・・』


そしてカウント2秒前になった時、レンジの中が爆発した。
爆発してもなお、私のカウントは止まらない。


男「爆発した!!なんか爆発した!!
てか君っ!!もう遅いから!カウントしなくていいから!!」

『黙れオッサン。耳痛ェんだよ』

は瞳孔開いた目で見下ろした。



男「…スンマセン…って何で私が誤ってんだァ!!」

『知らねーよハゲ。チッ…作戦失敗でござる店長』

銀「仕方ねーよ。は上手くやったさ」


男「何を!?」




店内は万事屋メンバーのおかげで煩くなった。


その時、一人掃除をしていた新八は、一人深くため息をついた。


新「だから僕等には無理っていったんだよ」


マダオが知り合いに任されていたこの仕事。
だが野暮用で出れないらしくコンビニを任されたのだ



ふと見ると店の棚の前でもぞもぞとする青年が視界に入った。

その光景はなんとも怪しい。
腰には整髪料やら育毛剤やらの瓶が括りつけられていく。



新「何やってんの君」

新八はその青年の腕を掴んだ。
そして互いの顔を見合わせ唖然とする。


タ「しっ…新ちゃん?」
新「タカチン?」







第二十四訓 恥ずかしがらずに手を挙げて言え




『高屋八兵衛16歳…か』

新「知ってるんですか?」

『ちょいと族を調べに行った時にね』




銀「このたくさんの整髪料どーするつもりだったんだ?」

心配しなくても、キマってるよ。と心優しく慰める銀時だが
あんま効果ないから。


『育毛剤だってあんないるん?まぁ其の髪なら三十路超えたら透けてくるだろうけど
自信持って!ホラ、最近はリー○21とか育毛専門店あるんだから。オススメ教えるよ?』

タ「コレ全部俺が使うわけねーだろうが!!育毛剤は俺じゃねェ!!」


銀「じゃぁなんだご飯か?
ご飯にかけてサラサラいくつもりだったのか?」

『育毛剤でサラサラなんて甘いな┐(´ー`)┌。粘々としたご飯になるよ。
家が貧しくて納豆もろくに食べれないのか?
そんな事しなくてもホームレスやりゃあ十分粘々としたモノが手に入るよ』

タ「腐ってんじゃねェか」

『納豆も腐っとるわ。豆腐だって腐っとるわ。感じもろくにできないの?可愛そうにね〜』

タ「なんかムカツクんだけど…」



机を睨む男、確かタカチン・・・だったよね?
先程から目を合わせようとしない男に、新八は口を開いた。

新「…タカチンなんでそんな事…。」

タ「あれから何年たったと思ってんだ?
もう俺はオメーの知ってるタカチンじゃねーんだよ!」


はんッ…弱虫が何を言う。と思ったが其処は抑える。
私は弱虫が嫌いなんだ。心の弱虫が。
人は誰でも怖いものはある。私はそういう人間が嫌いなんじゃない。
それを言い訳にして、逃げてばっかの生活を送ってる人間が嫌いなんだ。




結局私達はタカチンコとか言う男を新八の意見で解放してやる事にした。

タ「お前だけは何があっても友達だと思ってた。あの頃裏切られるまではよォ。」

別れ際に口を開く高屋。


タ「ま、てめーのおかげで俺も少しはたくましくなれたがな。」

”舞流独愚”という族に入っていつと告げる高谷。
俺は変わったんだ、強くなったんだと言うがそれは本当に強くなったのかな?

私はそう思えなかった。

そんな見た目だけの男が何を言う・・・。






***






妙「タカチンコ?だぁれそれ?」

その後お妙さんがやってきて、
風呂敷に包まれた四角いものを差し出して優しい笑顔で下ネタを発した。

新「ホントに覚えてないんですか?」
妙「昔の事は忘れたわ。私、前だけみて生きていく事に決めたの」


そしてすぐにそんな事より・・・と話を変えた。

妙「差し入れ持ってきたんです。」

姉御ォと雄たけびにも聞こえる声でお妙に抱きつく神楽。
食いモンかと喜んで、銀時はおにぎりの棚の前に座っていた。


『え…ちょっ…もしかして…』 


は冷や汗を流した。私は知っていたから。

だがお妙さんはそんな私の心境を知ってか知らずか
風呂敷の結び目を解き中の重箱を出す。

妙「今回は新しい料理に挑戦してみたんです〜。ハイ、出し巻き卵。」


お妙さんが出したものはただの黒い塊でしかない物体。

それを見た瞬間私は一番最初に走り出した。

『いや〜喉渇いちゃったな〜』

続いて神楽も逃げ出す。

神「私飲み物買ってくるヨ!」

そんな神楽に張り合う私と銀時

『じ…自分で行くからいいよ〜』

銀「いいって!俺が行くから座ってろ!」





だが結局三人の足は止められた。
お妙さんの力に敵うわけも無く・・・捕まれた腕は解けない。


妙「ここはコンビニよ。飲み物ならそこに腐るほどあるわ〜」



姉御…怖いです。
誰か、助けて・・・。

助けも絶対に来ないこの場所は地獄にも見えた。


私も銀時も神楽も3人揃って泣いてるよ。
声を出さずに…しくしくという音と、鼻水を啜る音だけが聞こえてきた。


妙「新ちゃん。こっちに来て食べなさい。」


お妙さんは新八を呼ぶが彼は無言で立っていた。
再び名前を呼ぶが新八は黙ったまま俯いている。

『新八?』

新「…姉上……」

やっと口を開けた新八は続けて言う。


新「確か”舞流独愚”っていえばここらで一番タチの悪い連中ですよね?」

『”舞流独愚”?窃盗だの侵害だの平気でやる連中?
タカチンって奴ァ確か其処に入ってんだったよな〜』


新「タカチンがあんなになったのは僕のせいなんです。」


新八はゆっくりと過去の話を話し出した。







時は数年前の寺子屋…
高屋八兵衛は隣の席の新八に話し掛ける

うんこを漏らしてしまったと、新八に助けを求める高屋


だが新八は寝てるふりをして高屋を無視する


「新ちゃん!新ちゃんってばっ!!」







その話を聞き終わった時、ふと銀時を見ると鼻の穴に指を挿して鼻を穿っていた。

銀時と神楽とはあきれているようだった。


新八はそれからすぐ借金のせいで寺子屋に通えなくなったらしい。


『あのさ…新八…』

新八の話の途中で口を挟む私。
だが新八は何かを思いつめた様な顔だった。


新「…あの時僕は一体どうすればよかったんですかね。」


どうすればタカチンを救えたんですかね。と訴えてくる瞳が私の目に入った。


銀「……いや無理だろ」
神「無理無理」

『あ〜私だったら面白いから皆に大声で叫ぶけどな。でも何とかしろというのなら無理だ』


三人は無理だと言い続けるが一人、お妙さんは「無理じゃないわ」と言った。


友達が泣いている時は一緒に泣いて上げればいい
友達が悩んでいる時は一緒に頭抱えて悩んであげればいい



妙「友達が脱糞した時は…あなたも脱糞しなさい新ちゃん」

銀時は冷や汗かいて引いていた。
私には無理だ、絶対。


妙「もし友達が間違った道に進んでしまった時は友情を壊してでも友達を止めなさい。それが真の侍の友情よ」


お妙さんの言葉で新八は俯く。
私にできる事は、今ひとつだけだよね。



新「………すみません店長。用事がありますので早退させてもらいます」


ゆっくり歩いて新八は出て行った


銀「・・・どーなってもしらね〜よ俺ァ」

『私もしらね〜何にもしらね〜』



知らないと銀時には言ったが
やっぱりソレは気になるという事で・・・。


元々私は自分がこうするって分かってたけど。



『ちょっと行ってくるねぇ。』


新八が向かったであろう場所へ向かう。
走り、走って目的地に到着した。


丁度ついた時、私の司会に入ったのはバイクの前に立ち憚る少年。

その少年は木刀で向かってきたバイクを斬った。


新「俺は寺門通親衛隊隊長志村新八だァ!!」


もう暴れちゃってんのかぁ・・・
なら、私も参戦しないとねぃ


近くにいた男二人の後ろに忍び寄り
腰に挿していた木刀を抜く



一瞬だった。二人の男が倒れたのは。

驚く人々。新八もまた、私の登場に驚いていた。


『私は泣く子も黙る沖田だァ!!』

新「!?」

『ひとっ走りしてついてきちゃった』

新「ふっ…」


顔を見合わせ笑いあう

『新八の友達は私の友達だから!!』






高屋が「ここはお前らなんかが来るところじゃない」と叫ぶ。

だが新八の表情は曇らないどころか意思が強まった。




新「スイマセーン!この中の頭は誰ですか?」

『え、何?この中で一番ハゲている人は誰かって言いたいの?あ、アレじゃない?』

新「何言っちゃってんのォ!!?違うでしょ!頭=ボスって事でしょォ!!」

『アッレ〜?そーだっの?知らなかった〜私てっきり頭=ハゲだと・・・』

新「アンタ分かってて言ってんだろォ!!」

『ま、私の意見はこう。
”頭=ボス”で、大抵”ボス=ハゲ”でしょう!!だから頭=ハゲ!』

新「いやいや、ふさっふさで若いイケメンなボスも居るから。」

『もうなんだっていいや。ボスは?』

おいっ!!と突っ込む新八だが、私はその言葉を無視した。
敵が目の前に居る時に遊んでいる場合じゃない。

ま、今さっきまでしてたわけだけど。



「総長がテメーらなんかに合うわけねーだろ!何の様だテメー等!!」

新「高屋八兵衛を引き取りに来た。」

タ「何勝手な事言ってんだァ!!」


嫌がるタカチンコ。
やりきれない気持ちも分かるが、かと言って今更引き下がれない。


新「タカチン・・・強くなる為の近道なんてない。
外見だけ強く装ったって、そんなハリボテすぐにはがれ落ちてしまう。
タカチンの求めてた強さなの?
そんな格好悪い奴にタカチンはなりたかったの?」

『強さは人には見えないところにある。見た目で判断したりするのは本当の強さじゃない。
それは弱気人間が見栄張っているだけ。見栄張るなら本当の強さで見栄張ろうよ。
高屋…アンタはそーゆー事を分からずに、下だけを見て生きてきたの?これから下だけを見て生きていくの?』


私たちが高屋に話している時、舞流独愚の奴らが口を挟んできた。

「ワリ―がなウチは仲良しこよしでこんなことやってんじゃねーんだ。簡単にいく組織じゃねーんだよ!!」

『だったら力ずくでも。』

笑ってみせる。私の態度にキレたのか、敵は怒鳴ってきた。


「オイあんまりナメんじゃねーぞクソガキが!!」


『そっちもナメんじゃねーよハゲ軍団が!
仲良しこよしなのはどっちだよ。強い仲間に護ってもらいたい弱虫だろが!
格好つけて髪をセットしてんじゃなくて、髪が薄いのを隠したいからそーしてんだろハゲ!
私等ガキはガキでもそんじょそこらのクソガキとはワケが違う!!』


「んだと?たった二人で何ができるってんだ!?」

「一人じゃねーぞ!!」


後ろで聞こえるバイク音。と同時に聞き覚えのある声がした。


「隊長ォやっぱバイトなんてかったるくてやってられませんわ」


この声は・・・


銀「ホラよ


銀時!!



銀時は私に向かって黒いモノを投げる。


『ん?』

それをキャッチし見てみる。
そして、笑った。


『くすッ…』


投げられたものは、親衛隊の服だった。

それを羽織り三人の中に入る。




神「寺門通親衛隊特攻部隊”魔流血頭”見参!!」



お妙さんにはマスクをつけ、
神楽は巣昆布を食べ
バックは夕日擬。



銀「そーゆー事で次回は血煙乱闘編だぜ。


そこんとこ夜露死苦ぅ!!」



NEXT





〜後書き〜

時間かかってやっと前編更新です
マジスンマセン。しかもギャグ少ないってかほぼ無いし、つまらないですね…
次回は〜乱闘でヒロイン大暴れ!?(予定)