じろじろ見られてたら試しにニッコリ笑ってみろ もし笑い返されたらそれは好奇の目だ



pi-pi-pi-
目覚まし時計が朝早くに鳴り響く。
真選組に入る前まで聞こえていた小鳥の囀りは聞こえない。


真選組の朝は早い。
夏なのにこんな薄暗い時間に起きて、ミーティング。
それから市中見廻りを何回もやって・・・。

他にもいっぱい仕事があるわけだ。
だてに税金貰ってねーって。


つってもさ、
全て真面目にやってる奴が言える事なんだけれど。




『ふぁ〜〜〜眠ッ』


どーもおはようございます。
です。


真選組に入って1週間。

この生活は毎日楽しいです。

ええ、毎日生きがいがありますしね。


いつも皆のアイドルと一緒に過ごせるし、
何より弄りがいのある個性的キャラが揃ってる。


うん。スゲェ楽しいよ。




ちなみに俺、
昨日は真選組に泊まって夜遅くまで仕事をしていました。


顔を洗ってから常時持ち歩いているワックスで髪を軽く立たせる。


『ワックスめんでぇ!!』


昔は難しかったが
今では結構慣れてきた。





第六訓 じろじろ見られてたら試しにニッコリ笑ってみろ
    もし笑い返されたらそれは好奇の目だ







「コラァ!!!待てェエエエ!!!
また俺のマヨネーズどこかに隠しただろォ!!!」

「いやでさァ。隠したんじゃなくて捨てたんでさァ」


襖越しにいつもの二人の喧嘩が聞こえる。

今日も沖田の部屋で暴れているようだ。



ガラッ――

沖「準備できたかィ?」


土方さんから逃げ切ったのか、
沖田隊長が俺の部屋に入ってきた。




準備というのは、今日は俺の刀を買いに行くからだ。

一週間経ったって今まで書類整理やこの辺の市中見廻りしかしていなかった。

そろそろ大きな仕事がしたいと思っていた時、誘いがあった。



初めての自分の刀・・・。
すっげぇ楽しみだ。


土「総悟ォ!!マヨネーズをからしとすり替えたな!!」


沖田隊長の後ろから土方さんがやってきた。
残ってたマヨネーズをからしに変えられていたようだ。


ご愁傷様です。



沖「めんどくせェ奴がきたぜィ」


ちっと舌打ちを打つ沖田隊長。
それにキレた土方さんが抜刀する。


土「誰がめんどくせェだ!!刀を抜けェエ!!」


今にも俺の部屋で暴れだしそうな土方さんを俺がなだめるしかねぇな。


『ほら、そんなに瞳孔開いてたらハゲますぜ!

・・・肘肩さん』


ポンっと肩を叩く。


土「ハゲねぇし、土方だ!!」


思ったとおりの反応に俺はにやりと笑う。
ふと爽やかな青年を見れば彼も同じく笑っていた。



『ささ、行きましょう!!』



キレる土方さんと笑い続ける沖田隊長の背中を押して俺は屯所を出た。




今俺は何故か隊長格と同じ制服を着ている。

俺が一番隊に配属になった翌日届いたもんだ。
でも本当に何で同じなんだろう?

ま、いいか。


でも、この服装=真選組というのが有名だからか、、
道を歩くたびに見られるのが嫌だ。







今も、鍛冶屋へ向かう途中
只ならぬ量の視線を感じた。



うっわ・・・二人ともめっちゃ見られてるよ・・・。

流石イケメンなだけあるなぁ・・・。



俺は二人の服を引っ張って耳打ちする。


『お二方凄ぇですね。
女の視線が全て吸い込まれる様に・・・』


すると沖田隊長が俺に向かって言った。

沖「全てが全て土方さんじゃねぇぜ」

分かってねぇなぁ、と哀れな目で見られる俺。

『ええ。半分は沖田隊長ですもんね』


そう言いましたよ?と俺が言うと今度は土方さんにため息をつかれた。


『・・・俺今日は二人と歩いて失敗だぁ・・・。
もっとごついおっさんと歩けば俺もモテたかもしんねぇ・・・』


くぅ・・・と拳を握り締めていると
何故か二人に変な目で見られた。


土「・・・お前ってさ・・・」

『・・・なんですか?』


何か言おうとして止める土方さん。

なんか気分悪いな。
最後まで言ってくれ。


土「・・・いや」

『何ですか!
言ってくださいよ、気になるじゃないですか!!』


だが、結局教えてはくれなかった。





ちぇっと拗ねて顔を背けると綺麗な女の人と目が合った。

その人は俺からすぐ視線を逸らすと下を向いてしまった。


『あ、危ない!』


下を向いて歩いているもんだから、
その人は前を見ていなくて看板にぶつかりそうになる。

「きゃぁ」

なんとか咄嗟に避けた姿を見て一安心。


のつもりがその人は避けた反動で体をよろめかせた。



『うわっ・・・

だ、大丈夫ですか?』



後少しで地面につきそうなくらいで何とか俺は支える事ができた。



「だっ・・・大丈夫です///」

『そうですか・・・よかったです』


にこっと笑う。
でも本当に良かった。

綺麗な人には汚れて欲しくないからな。








俺が笑った後、周りざわめき等が消えた気がした。


え、俺そんな顔が引きつるような笑顔した!?
え、気持ち悪かった!?


き、傷つく・・・。


そしてもっと傷つく事が・・・。


体を起こしてしっかり立ってから、
女の人はいきなり逃げてしまった。




『うえっ…ぇえ!!』



宙に浮いたままの腕を下ろして二人の下へ戻っていく。



『うわーん土方さーん!!俺、相当嫌われてますか?
さっきの人なんて、顔赤くする程怒って逃げたんですよ!?』


俺の発言に再び怪訝な目で見てきた二人。


誰もが鈍い奴だと思っただろう。









それから暫く歩いた。

こんなに遠いのならパトカーで連れて行ってくれったっていいのにな。
と思うが此処は我慢。


連れて行かれた場所は少しボロい鍛冶屋。

何でも、昔からの常連らしい。



『へぇ〜ここが・・・』



そういえば俺刀なんて持った事ねェから見立て方とかわかんねーな。


立てかけてある沢山の刀を眺めながらふと思う。



沖「俺が見立てやしょうか?」

にっこりと笑う隊長。

か・・・可愛い。



『お願いします!』


助かった。


それきり辺りはシンと静まってしまったが・・・。



「・・・・・・」

二人とも凄く真剣に俺の刀を選んでくれている。


流石侍。刀を見る目と普段の目が違う。

・・・刀は武士にとって命だもんな。
俺も見習おうっと。



沖「コレなんてどうです?」

『へ?』


無言になって数分後。
差し出された刀はずっしりとしていて、それでいて俺を魅了するものがあった。


試しにそれを掴んで鞘から抜いてみる。


鞘から開放され、己を映し出すそれは
青白く光り、凄く輝いていた。


数秒、目が釘付けになっていた。


沖「構えてみなせぇ」


隊長の言葉に俺は構えてみる。

何故か手によく馴染む。
それ程重すぎず、刀先も良かった。


扱いやすい。


『・・・コレがいいな』


刀を鞘に戻しながらぼそっと呟いた声を、
鍛冶屋のおっさんは聞き逃さなかった。
はいよ、と一言言っておっさんは奥へと戻って行った。


沖「それじゃぁもう一本は・・・」


その言葉で思い出す。

そっか、俺二刀流だったか。



土「これなんてどうだ?」


今度は土方さんが差し出してくれた。
鞘の装飾がなんともカッコいい。
先程の刀と同じくらいの大きさで、重さも同じくらいだった。


それを構えてみると、凄くしっくりきた。


・・・スゲェいい。


『この二つにします』



凄い凄い凄い。
凄いよこの人たち!


俺の手の大きさ、力量、体力。
そして癖までしっかり見ないと分からないはずなのに。
一発で俺に合うものを見つけてくれた。


本当にスゲェや。


『おっさん…コレくれ』

「はいよ」




現世から持ってきた金を此処で使う。

何故か俺のいた世界とここは同じ金らしい


確か本当は両じゃなかったけか?

俺歴史苦手だからわかんねぇ〜



まいいや。
金払えたんだから。



刀は予想以上に高くて、
こりゃキツイなと思った。


何度も何度も買えるもんじゃない。


これだけで俺の金は尽きた。


「まいどぉ〜」




新品の刀を腰に差して、帰り路を歩く。

早くこの刀を使いたいととてもわくわくしていた。







沖「試しに斬ってみたらどうです?」



屯所に戻って早々、
隊長が俺に言ってきた。


土方さんは既に仕事に出かけてしまった。
お忙しい人だ、あの人ぁ。



『そうっすねェ〜』


斬るにしたって、何も斬るものがないじゃないか。

辺りを見渡しても、綺麗に整えられた庭があるだけだ。



沖「コレ斬りなせェ」


そう差し出されたのはマネキンだった。

アレ?これさ・・・


『隊長・・・コレどこかで見た事があるのは気のせいですかね?』


この目つきの悪さ
黒い髪の毛に銜えた煙草。


リアリティありすぎてねぇか?


沖「そうですかィ?ちょ〜っとニコチンマヨ中毒で、"ひ"と"じ"と"か"と"た"がつく人に似てるだけじゃねぇか?



つまり、土方さん似のマネキンという事ですね・・・


・・・・・・。


『グハッ 煤i ̄□ ̄;)』



俺に土方さんを斬れとォ??
そういう事ですか、隊長!!


でもま、、マネキンだし・・・な。



でも本当・・・


めっさリアルぅ〜!!



本当に、瞳孔開き気味なとことかそっくりじゃん!

マヨネーズも持ってる…


ってかコレ・・・



沖田隊長がわざわざ作ったんじゃね?




「早くしなせェ(黒笑)」


なかなか動かない俺に、笑いかける隊長。

逆に怖い・・・


絶対わざとだ、コレ。
俺に土方さんを殺させるつもりだ、コレ。



『俺、知りませんよ』


仕方なく、隊長を裏切ると後が怖いので刀を抜く。

鞘と刀が擦れる音と、金属音が鳴った。


一瞬で抜刀と同時に俺はそれを真っ二つにした。



そして斬れたものを見て唖然。



ゲぇェ!!!


中身もめっちゃリアルなんですけどぉ!!!



刀を握っていた手から力が抜けてストンと手から滑った。




中にトマトジュースとか入ってて


心臓まで作り物だけど・・・
ちゃっかりいろんな器官とかあるしィ



沖田隊長見ると、


すばらしい笑顔が見えるしィ!!!



そんでもって、
「がんばって作ったかいがあったぜェ」
とか呟いてるしぃ!!



沖「これならいつでもが土方をやれる



聞こえてますよォォオオ!?


凄い黒い笑いが表情に出てますよぉ!!


俺に何させようとしてんだァこの人!!







土「オイ、総悟しらねェか?」

げェ!!


このマネキンにあたふたしていると、
運悪く其処に土方さん登場。
もちろん、いつもの様に煙草を銜え、瞳孔が開いている。


タイミング悪ッ!?
ホントタイミング悪っ!!




土「何だそれ・・・」

土方の眼には自分が斬られてる様に映っているだろう。


ヤバイヤバイヤバイ。
殺されるっ!

どうやって言い訳すれば・・・


「てんめェ!!!そんなに俺に死んでほしいかァ!!」


ひぃい!!

瞳孔開いてますよォ!!

怖い!目の前に今鬼がいます!!


『コレは沖田隊長が・・・。
試しに斬ってみろって言われてコレ出されたんすよ!!』



必死に弁解する俺。
でも、これ言わない方が良かったのかもしれない・・・



ブチッ


堪忍の尾が切れた音したもん。
ヤバイよ、これ。



「総悟ォオオ!!!ドコ行きやがったァアア!!!」



ダメです!!


もうすぐ土方さんが逝きます


そんなに瞳孔開いてたら戻らなくなりますよォ!!




今日は暴れる土方さんを止めるのにほぼ半日を費やしてしまいました。

本当に騒がしい一日でした。







夕方になってふらふらした足取りで万事屋へ帰る。


『ただいまァ』

久しぶりだった。
久しぶりの万事屋はとても懐かしい気がした。



銀「おぅ!!お帰りィ」

神「お帰りアル!!」

新「おかえりなさい」



ほのぼのとした感じですっごく癒された感じがしました。