疑われてそうな時はとりあえずNOと言っておけ
第四訓 疑われてそうな時はとりあえずNOと言っておけ
翌日、俺は7時に目覚めた。
隣ではまだ銀時が静かに寝ていたけど、意外にも眠気が無かったので起き上がる。
そして二人を起こさない様に歩き、顔を洗いに行った。
まだ人通りの少ない外に出て、
軽く朝の準備運動とやらをして戻ると、
いつの間にか新八がいた。
『・・・おはよう、新八』
***
『行ってきまーす!!』
9時頃やっと二人は起きた。
それまでなかなか起きない二人を他所に、俺は新八の今までの話を聞いた。
知ってたけど、結構苦労しているみたいだ。
そんで銀時が目覚め、身支度を済ました後。
さあ、行こう!!
銀時と一緒に買い物へ!
という事になったのです。はい。
現世の格好でも大丈夫らしいけど、
やっぱり毎日同じじゃダメだしね。
今朝また少し小さめの着流しを貸してもらい、デパートへ買い物に向かう。
ねえ、この着物銀時が着てたものだよ?
いやぁ!!
変体発言!!変体の神様到来!!
うん、ヤバイよね。
今銀時の匂いが俺の体を・・・
ぶふっ!!
って、俺相当ヤバいな。
怪しい人間だな。
警察に捕まらないように気をつけなきゃ・・・。
そういえば俺、明るくなった?
昨日まであんなに暗かったのにさ
今ハシャギMAXよ!?
『うわ〜すごい!天人いっぱい!!』
デパートまでの道のりにも沢山見かけたが、
デパートに行くと本当に沢山の人がいた。
そして沢山の天人がいた。
銀「やめろ静かにしてくれ!」
ただでさえ注目の的なのによぉと銀時は言う。
だけど俺は何のことかわからない。
分からなくてもいいのかもしれないけど。
が天人に目を奪われているうちに銀時は呟く。
銀「やっぱお前・・・モテるだろ・・・」
やっぱりの耳には届かない。
帰り道。
人通りも少なくなった頃だ。
目先の遠くの方で人が集っている。
銀「何だ?」
何か不安がよぎったのか、銀時が呟く。
ギリ、キンッと鈍い金属音が聞こえた。
金属――多分刃物だろう――が重なり合う音。
少なからず、悲鳴も聞こえる。
銀「・・・はそこにいろ!!」
銀時は走ってその場へ行ってしまった。
走って行く大きな後姿に向かって叫ぶ。
だけど、聞こえてないみたいだ。
『え、待てよ!俺も行く!!』
俺も行きたい!
なによりも銀時の戦うとこみたい。
そんでもって足を引っ張るつもりもNothing!
なんたって俺は〜
元剣道部主将だからさ!!
走って野次馬のいる場所へ向かう。
だが、野次馬がいる場所はその現場から離れてるみたいだ。
まあ、近かったら危ないわな。
どんどん中に入っていく。
人だかりも減っていく。
そして様子がやっと見れた。
その中心には斬り合う真選組と攘夷浪士がいた。
真選組だァア!!
咄嗟にある人間を探す。
もちろん、沖田と土方だ。
キョロキョロと辺りを見渡せば、沢山の黒い服の人間の中から二人を見つけた。
ちょうど二人は敵と戦っていた。
その様子に見とれていると、銀色が視界に入った。
銀「!!何で来たんだ!!」
遠くの方だったが、浪士と戦っている。
そんな声をかける程暇あるんですか・・・。
スゲェ〜流石ぁ〜
素早く動く姿を追っかけながら、俺は叫んだ
『すっ…助太刀?』
銀「クエスチョンマークじゃねぇか!!
邪魔だから安全なところにいろ!!」
銀時に怒られた・・・。
微妙にショックを受ける俺。
ちぇっ…つまんねーの。
とぼとぼと歩く俺。
そこで青白く光る何かが俺の目の前に飛んできた。
「何故餓鬼がいんのか知らねーが、邪魔だ。死ね」
ある浪士がに斬りかかった。
振りかざされた刀の影が俺の頭上に来たと同時にかけられた言葉。
頭が真っ白になるはずなのに。
恐怖で怯えるはずなのに。
その時の俺は妙に冷静だった。
男装してから初めてだよ、俺のこと若いって言ってくれたの!!
銀「!!」
くそっ!!相手が多すぎる!!
振りかざされた刀。
遠くの方の野次馬の誰かの悲鳴が聞こえた。
鳴り響く金属音と切断音。
ガキンっ――
その場にいたすべての者が固まった。
息を呑む人、人、人。
ガスッ―と音がして何かが地面に突き刺さった。
地面に刺さったものを見れば、
鋭い刃の折れた先。
の姿は、刀の傍にはなかった。
銀「・・・・・・・・・?」
『あーあ、折れちゃった・・・』
「なっ・・・――」
に切りかかった男の後ろから聞こえた声。
咄嗟に振り向けば其処ににやりと笑ったがいた。
『言っただろ、助太刀だって』
右手に持った刀の峰を肩にもたれさせ、
顔を軽く上げて見下ろしている。
「小僧ォその刀・・・いつ!?」
先ほどまで持っていなかったはず。
銀時もそれが謎だった。
『いつ盗ったと思う?』
左手で顎を支えて見下す俺。
この挑発に乗るか?
「・・・テメェ・・・・・・我等をなめるなァ!!!」
男は俺に折られた刀で、俺に再び斬りかかった。
にやっとは笑う。
かかった。
『お前なんか金貰ったってなめるかよ!!』
ざっと後ろに回り込み、刀の峰で腰を打つ。
「がッ!」
ツボに当たったのか、あまりの激痛に男が倒れた。
『ちなみにコレ、さっき近くに来た男から奪ったんだ』
倒れた男に向かって言う俺。
あ、こいつこいつ。とまだ近くにいた男を指差す。
その指先には確かに焦ってる男がいた。
沖「あの一瞬で!?」
土「何者だあの男」
いつの間に来たのか、其処には俺の会いたかった二人がいた。
ぜんぜん息が上がっていないところがまた凄い。
『あ、どうも。です』
言うと同時に丸腰の男に素早く近づいて腕を刀の峰で叩く。
鈍く大きな音が鳴った。
『これで刀は握れないでしょ』
微笑む。
いつの間にか周りも殆どかたがついているようだ。
真選組のパトカーに浪士達が入れ込まれていた。
それでもまだ他の隊士達は悪戦苦闘している。
此処でのんびりしている程暇ではないと思うんだけど・・・。
いつの間にか銀時も俺の傍にいた。
銀「…お前そんな強――」
『アレ?言ってなかった?俺剣道だけじゃなくて武術はたいていできんだぜ。
ちなみにテコンドーもやってた』
「(マジかよ…)」
周りの人間が黙った。
アレ?なんか俺おかしい事言った?
そんな風に和んでる時だ。
「てめェ!!!」
先ほど気絶したはずの男がに向かってきた。
落ちていた刀を拾って俺に振り下ろされる刀。
土「峰うちなんかじゃダメだ!斬れ!!」
『が、ガッテンでぃ』
俺はまた近くに倒れていた浪士から刀を奪い、そしてもう一本刀を拾った。
二つの刀が重なり、チャキッと音が鳴った。
『・・・アレ?何で二本も抜いたんだ?』
銀「おい、危ねぇ!」
銀時の言葉は不要だった。
向かってくる刀を、刀で受ける俺。
何度も何度も、互いの刀が触れ合う。
弾き飛ばされる様な感触だった。
でも、俺は押してる。
何でだろう…
体が勝手に動く
なんか…
そうアレだよ…
体が最初から知ってるような…
二刀流なんて初めてなのに…
銀「…」
銀時は別の男と戦いながらの姿を見て懐かしさを思う。
をかつての戦友と照らし合わせていた。
銀「誰かと似てる…」
そう呟いた言葉は刀の音にかき消された。
数分が経った。
当たりは致命傷を受けずに倒れている男達ばかり。
はふぅと小さくため息を漏らすと刀を放り投げた。
刀はカシャンと音をたてて地面に落ちた。
沖「あいつどっかで・・・」
の後姿を見つつ思う沖田総悟。
何処かで見覚えがあった。
沖「アンタ何者だィ?」
先ほどまでのアレは何だったのやら。
野次馬も消え、後処理も終えた後残った俺達のところへ沖田総悟がやってきた。
『へ?』
拍子抜けな声で返答する。
そして振り向いて目を丸くした。
沖田だァア!!
きゃぁぁああああああ!!
沖田に話し掛けられたァア!!
頭が暴走する俺。
其処に「いいですかィ?」という
ちょっと切れ気味な声でツッコまれた。
恐ろしい!!!
固まった俺に近づいてきたもうひとつの影。
土「てめーただの男じゃねーな」
ひ、土方だぁ!!
再び心臓がばっくばく。
ああ・・・カッコいい。
『そりゃ俺は高いぜ!!
俺が欲しくたって100万じゃ足りねーぜ』
友達に女として売るより
男として売ったほうが2倍儲かるって言われたんだよ。
ちょっと虚しいわ!!コノヤロー!!
「そんな話してねーよ」
という三人の声が被った。
アレ?銀時いつからいたの?
沖「アンタどっかで…」
俺の顔をじーっと見ながら言う沖田。
『あぁ・・・そいやぁ・・・』
会ってたし!!
なんかプライバシーの侵害やらなんやら口走ってたな・・・。
やべぇ・・・
あの頃をやり直してぇぇえ!!
沖「あ、昨日会いやしたね」
ぽんっと手をつく沖田。
うん。可愛い。
じゃねぇよ!
お、覚えてたァア!!
嬉しいけどなんか嫌だぁ!!
なんか・・・本当にやり直してぇ!!
銀「何?コイツら知り合いなの?」
疑問符を頭に浮かべて俺に問う銀時。
あ、今俺って逆ハーじゃね?
イケメンに囲まれてね?
うっはう!
心の中はすっげぇハイテンションだったけれど、
不振がられるのでとりあえず落ち着いた素振りを見せる俺。
大丈夫。落ち着け。
『沖田・・・さんとは昨日どこぞのバカにはねられる前に。
土方・・・さんとは知り合いではなくて一方的に知ってる』
銀「どこぞのバカとやらは俺のことですか」
『ったりめぇだろが』
銀「・・・なんか、お前今黒いんだけど・・・」
その時沖田が「仲間ができた」と思ったのは言うまでも無い。
***
とりあえず軽く挨拶をしつつ、
自己紹介も終わったところで話が切り替わる。
沖「お兄さん、って言ったよな」
沖田が俺に名前を確認する。
うん。好きなキャラに名前呼ばれるとか・・・萌える・・・。
土「真選組に入らねーか?」
『・・・え?』
固まった。
俺と銀時は固まった。
息を呑む。そして、確認の眼差しで二人を見た。
沖「あ〜・・・土方さん。それ俺が言おうと思ってたんですぜィ」
土「知るか」
え、ちょ・・・マジでか!!
真選組に?
え、本当に!?
銀「ダーメ!!銀さん許さないぞ」
『黙れ天パ』
銀「・・・ハイ」
銀時が小さくなったところで俺は二人に向きなおす。
沖「どーですかィ?」
沖田の笑顔が凄い可愛い。
俺、こんな笑顔でナンパされたら絶対ついていくな。
『もちろん!お願いします!
あ、万事屋と掛け持ちっつー事で』
沖「・・・わかりやした」
局長の悟罹羅勲さんに・・・じゃなくて近藤さんに話を入れなくてもいいのだろうか?
すんなりと話が進んでしまった。
沖「ところで・・・苗字何だっけ?」
『だからさっき名乗っただろ!!だって。
アレ?そういえば俺、二刀流?』
銀「いや、知らねーし」
俺の言葉に反応してくれる銀時。
でもさ、俺も知らないもん。
土「!?」
土方が大きな声を出した。
沖田を見れば沖田も驚いている。
え、なんか俺、しました?
銀「何?真選組サンの事知ってんの?」
銀時の問いに、土方はコイツは知らねーが、と言う。
土「家は幕府が仲間にしたいと言っていた重鎮だ」
沖「もしかしてアンタ…家の末裔かィ?」
『否・・・知らなんだけど』
確かに俺はだ。
でも、この世界のとは何も関係ねぇ。
同じ苗字の人間だっているわけだ。
未だに疑いの目を向ける二人。
俺が何者なのか知りたがってる。
『・・・二人になら・・・言ってもいいか・・・』
俺は二人に此処へ来た経路を話した。
俺が言葉に悩んでいると毎度毎度銀時が助け舟を出してくれて、
なんとか一通りを話し終える。
土「信じられねーな…」
土方の言葉に少々残念さも残りつつ、当たり前だよなと思う。
だから銀時のあの言葉に感謝を覚えた。
沖「なるほどね・・・未来から…。
俺は信じまさァ」
『・・・本当に?』
驚いた。簡単に信じてくれる人がいた。
実はこいつ、優しいのかな?と思う。
いや実際優しい事は知ってたけど・・・。
沖「で、掛け持ちで入ってくれるんですねィ?
真選組にきてくれるかな?」
『いいとも!!』
大きく手を上げてバンザイする俺。
凄く凄く、嬉しかった。
「「パクリかよ!!」」
土方を見れば、彼も微笑んでた。
ああ、これからなんて楽しそうな日々が始まるんだ・・・。