記憶を無くして巡る過去




第三十三訓 記憶を無くして巡る過去



あーあ。
もう皆と会えないや。



、知ってたかィ?」
『何を?』
「土方さんって実はヅラでさァ。」
『いや、俺は信じないね。信じないね。』


人をいじる事が生きがいのドSでいっつも俺と賞も無い事で張り合ってるけど

、お前らしくねーや。」
と慰めてくれる様な強い心の持った奴とも・・・




「オイ。真面目にやれコラ。」
『え〜面倒ですぅ』


堅苦しくて煙草くわえていっつも怒ってばっかなのに

「お前頑張りすぎだ。偶には休め。体壊すぞ。」
とっても優しいところのある奴とも・・・



「チョコレート風呂に入りてぇなぁ。全身チョコ塗れ。」
『ぶほっ!!』
「ちょっ、何想像しちゃったワケェ!?きゃ〜のえっち!」
『ばっか。B●のチョコレートを思い出しちまったんだよ。』


いっつもバカやって楽しんでる時もあれば

「仲間は俺が護るから」

とても頼りになる兄貴みたいな存在で俺を助けてくれる奴とも・・・



ゴリラみたいだけど、すっごいお人よしの奴とも
凶暴なチャイナ娘だけど、凄く可愛い性格をしている奴とも
眼鏡をかけててツッコミしか能がないけど侍の心を持っている奴とも
凄く地味で、ミントンとカバディしか能がないけど、癒し系の奴とも・・・



もう

皆と会えないのか・・・。




最後に、一度だけ笑ってみんなと過ごしたかったな
笑顔で別れたかった。
三人のあの顔を見ながらお別れなんて嫌だ。
万事屋とも・・・ちゃんとお別れしたかった。

こんなにもくよくよくよくよ。
ああ、兄貴はどうだろう。兄貴も捕まったのかな。
それとも俺だけ?


自分の目から涙が流れ落ちる。
俺ってこんなにも弱かったんだ。
皆と別れる事に悲しみを持って泣いてしまう程。

いつか会えるじゃないか。そう思いたいのに体がさせてくれない。
頭からも思えない。俺は、次に会うときは敵同士だと思っているから。


すると、ふと声が聞こえた。起きろという、やけに頭に響く声。
そっと閉じていた目を開ける。眩しく差し込む光。
俺は眠っていた様だ。


皆と別れてから俺は無言で此処まで連れていかれ、そと後は・・・・・・

「これを飲め。」

と赤い薬を飲まされた。突然やってきた睡魔に犯され死んだように眠った俺。
今目覚めると先ほどの男が俺を見下ろしていた

「何を泣いている?」

俺は・・・。

「ま、分かっているがな。」

男の名は矛重。昨日俺が無言で歩いている時に一方的に語っていた。

矛「そんなに悲しむ事でも無いだろう。ま、二度目会った時は戦いの中だろうがな。」

『・・・お前は・・・・・・俺を戦争の道具として使いたいのか?』

矛「いや。俺達は戦争とかそういった大それた事しない。
ただ、世の中を征服したいだけだ。」

『なっ!んな事俺は絶対に嫌だ!!』

起き上がろうとする。だが、体に力が入らない。

『何!?』

矛「無駄だ。お前には今力が無い。」


は?力が無い?
まさか、あの薬の中に毒か何かが・・・。


矛「お前の考えてる通りだ。あの薬にはエミオタと言う体の力を抜く為に編み出した成分が含まれている。
今やお前は操り人形だ。力の無いお前は怖くない。今のお前が幼児を殴ったって幼児にとっては痛くも痒くもない。」

『んな事あるわけっ・・・。』

思いっきり殴りかかる。だが、平然とする男。

矛「なんか蚊が止まった感じだな。思ったよりも効いている様だ。」


っ・・・。これじゃ歯向かったら俺が殺されるどころか・・・
その後仲間に向けられた時助ける事もできねーじゃねぇか。


『・・・っ・・・こんな・・・こんな体で俺にどうしろと言うんだよっ!!』

壁に打ち付ける腕。激痛が走る。咄嗟に腕を引き戻し小さく唸る。

矛「はっ。俺はお前の様な強い体が欲しかっただけだ。
兄貴でも良かったのだがな、意思の弱いお前の方が効率良かったワケ。」

つまり何かで俺の意思と共に力をコントロールして幕府の人斬りをしろと言うわけか。やられたな。

俺の意思が弱いばかりに・・・。
くそ・・・くそ・・・くそっ!!

歯を食いしばる。血の味がした。小さい痛みが口内を走る。



矛「明日から仕事をして貰う。今はお前に渡す刀が届いていないのでな。
ま、お前の最後の日を存分に楽しんでおけ。」


出て行こうとする男。俺は咄嗟に呼び止める。

『待て!!ザキは・・・山崎はどうした!?』

矛「山崎?あの男か・・・。今は監獄に閉じ込めてある。
お前を操る為の、真選組の弱みを握る為の人質だからな。そう簡単には逃がさない。」


つまり、俺が歯向かった時がザキの最後か。

『なら、会わせてくれ!!ザキに会わせろ!!』

矛「あ?会わせろだ?無理な話だ。」


男は嘲笑うかの様に言い切ると部屋を出て外から鍵をかけた。
ガチャッと重そうな鍵の音を聞く。そのまま部屋を見渡す。

意外と広いんだな。
自分がちっぽけな人間だと思う。
俺のせいで皆に迷惑をかけてしまうんだな。



薬を飲まされ、弱くなった俺。子供を殴ったって、全く痛くない。
世界制服を目指す奴らが俺にそんな薬を飲ませたのは俺を操るため。
元の力があったら操れないと思ったのだろうか?
こんな弱い体でどうするんだ?
どうやって俺を操っていくのだろうか。

そんな風に思っていた。



此処に連れて来られて一日が経った。

『あ〜・・・腹減った。』

俺何も食べて無いんですけどっ!!
腹減ったんですけど!!誰かァ!!飯くれぇ!!


閉ざされたドア目掛けて叫んでいたら矛重がやってきた。
目の前には差し出された刀。


『んだ、コレ?』

矛「とにかく取れ。」

持たせられる刀。ずっしりと重く、鞘は黒紫色をしていた。

『コレで人を斬れと?』

矛「ああ。鞘から抜け。」


気が引けた。これを抜いてしまってもいいのだろうか?
こんなもの抜いて俺は大丈夫なのだろうか。
だが、抜かなければ・・・。

俺は大きく息を吸うとゆっくりと抜いた。

『っ!!』


意識がもうもうとする。
前ははっきりと見えるのに自分が自分じゃないみたいだ。

人を斬りたい。そんな感情が芽生えてくる。
考えたくない考えたくない。


矛「目には見えてるのに体が思うようにいかないだろう。
今お前の体はその妖刀に操られている。」


途端に冷たい目になる。そして、にっと笑った。

矛「なっ!?何を笑っている!?」

持っていた刀を振り上げる。

矛「ちょっちょっと待て!!お前は俺に歯向かえないは」


ずざっという音が鳴り、辺りが血の海になる。
矛重が言い終える前に、・・・じゃなく、妖刀が斬った。


”良い体を手に入れた”

は自分の意思を手放した。






***





・・・。」

呟く男が一人。の上司である沖田総悟だった。
自身の前で眠る男。コイツは別に知り合いでも何でもない。


土「・・・こいつがに襲われた男か・・・。」


が人斬りとなって幕府の人間を斬って行く。
皆が皆幕府の人間ではなく、の姿を見たものは皆斬られていた。


沖「・・・どうしちまったんでィ。」


俺達から離れていった途端。に襲われたという者が現れた。
被害にあう人間は増えていく一方だ。

土「だが、皆急所は外している。命に別状は無い。」

沖「誰かに操られている可能性がありまさァ。」


抵抗はしているみてぇだ。
・・・。今まで一緒にいて分からなかったが、いざいなくなると苦しい。
戻ってきてくれ。太陽みてぇな元気な笑顔を見せてほしい。

俯く。上から土方さんの声が聞こえた。

土「ところで、山崎の行方は分かったか?」

沖「・・・いいえ。しかし、こんな物があの時傍に落ちてやしたぜ。」


懐から取り出した物。それは矛重がに見せた山崎の身分証名書だった。

土「・・・もしかしたら山崎が捕まっているのかもしれねーな。」


可能性はある。
ついてこなければ山崎を殺すと言われれば、なら行くだろう。
それでまんまと操られてしまった。

は苦しみながらも必死にを探してる。
今操られているのは自分だったのかもしれない。何でなんだと苦しんでいる。

ああ、俺達はをちゃんと護れなかったんだな。
あの時止めておけばよかった。俺もついていけば良かった。
そうすれば・・・。

歯を食いしばる。手を強く握る。口も手も痛かった。
だが、そんな事どうでも良かった。を取り戻したい。






土「総悟・・・。」

沖「・・・なんですかィ土方さん。」

俯く総悟に土方は呼びかけた。

土「を取り戻しに行くぞ」

沖「!?居場所が分かるんですかィ!?」

土「ああ。が見つけた。」


が・・・。スゲェなやっぱ。
兄貴って奴ァ妹が危ない時にすぐに動けるのか。


沖「万事屋の旦那を呼びやしょう」

こんな事を言ったらいつもの土方さんじゃ怒られる。
だが、今回は”ああ”と一言言った。

を助けるには旦那や、気が引けるがチャイナ娘も必要だと思った。




***




銀「・・・・・・がな・・・。」

神「銀ちゃん。私助けたいヨ。」

新「僕もです。こんなの絶対さんじゃないですよ!!元のさんを取り戻しましょう!!」


万事屋三人に事を話すと、当たり前の様に力を貸してくれると言う。
無言の。そんなを気遣っているのか、銀時が口を開いた。


銀「チンピラ警察に力貸したくないとか言ってる場合じゃねぇ。直ぐにでも助けに行くぞ。」

新「でも銀さん。山崎さんが人質に捕られているんですよ!?」

銀「んなもんは真選組に任せりゃいい。俺はと一緒にあくまでを助け出す。いいだろ?お前らもそれで。」


近藤に問う銀時。だが近藤は総悟の方を向いた。
目が合うと、総悟は呟く様に口にした。


沖「・・・・・・いいですぜ。を任しまさァ。」

土「!?いいのか総悟!!」


土方は知っていた。総悟の気持ちを。
総悟にとっては掛け替えの無い存在だった事を。
誰よりもを助けたいと思っている事を。


沖「いいんでさァ。絶対ぇいいトコ取りしやすから。」

にっと笑う総悟。なんともたくましいものだった。

近「じゃ、行くか。」

刀を腰に挿して・・・いざ参る!!




兄「・・・待ってろよ。」

は一人静かに呟いた。




遠い道のりを歩む。は絶対にあそこにいる。
そう確信を持って歩む。絶対連れ戻してやっからな。待ってろィ。

真選組を出て少し歩んだところだった。


「お前ら、を取り戻すつもりか?」

「「!?」」


後ろから声がした。全員咄嗟に振り返る。

銀「なっ・・・誰だオメェ・・・。」

男がいた。木の上に平然と立つ男。

「悪いが、此処で断念してもらうっ!!」

近「!?」


目の前に現れる数十人の覆面の男。

土「お前ら俺達を止めるつもりか・・・。」

「当たり前だ。あんな良い道具。渡してたまるか。ま、矛重を亡くしたのは惜しかったがな。」

神「矛重?誰アルか?ソイツ。」

「誰でもいいだろう。とにかく死んでもらう!!」


木から下りて飛び掛る男達。
同時に振り下ろされる刃刃刃。

銀「っ!!」

咄嗟に受け止める銀時達。

「長期戦になれば此方が負ける。だが、スピードでは負けない。」

銀「何!?」

銀時の腹を突き抜ける刀。


神「銀ちゃんっ!!」
兄新「銀さん!!」
沖「旦那ァ!!」
土近「万事屋!!」

「お前らも同じ目に遭ってもらう」

「「!?」」



沖「っ・・・ぶふぅっ」

口から吹き出る血。沖田の体は赤く染まっていた。
朦朧となる意識の中、辺りを見渡せばぞくどくと倒れていく仲間達がいた。

くそぅ・・・これまでかよ・・・。

スピードで負けるとは思ってなかった・・・。



そして意識を手放した。







***


妖刀を持たせられた一昨日。
俺は自分の意思とは裏腹に、体が人を斬っていく。
妖刀に頼らないと俺は弱い。
だが、俺はこんな妖刀なんて持ちたくない・・・。
やめてくれ・・・。

・・・いつもいつもいい暴れっぷりじゃねぇか。」

縛り付けられる体。野放しにしていたら自身まで斬られるという事だろうか。
だが、その気になればこの縄すら解ける。

だが、あえてそのままにするのだ。
今は意識を保っているがいつ妖刀に住み着く殺人鬼が現れるか分からない。
このまま食らわれるのだろうか。
それだけは阻止せねば。




***




翌日目覚めた俺にはしっかりと意識があった。
未だ手から話さなかった妖刀を、気力で振り払う。

『ぐっ・・・ぬぬぬぬぬ!!』

離れろ!!離れろ!!離れろォォオオ!!

なかなか離れない。それでも諦めなかった。 数十分力み続ける。
歯を食いしばり、そして念を込めて。
俺の意思が強くなれば強くなるほど、刀は弱くなるんだ

『俺は負けねぇ!!』


すっと軽くなる利き腕。視界に見えたのは手から離れる刀。


か・・・勝った。・・・俺、勝った!!


放り投げ飛ばされた刀。未だ目の前に転がる刀をどうにかしなければ・・・。

再び触れればまた操られる。
奴らの目に留まらないようにしないとな。

まさかこんな簡単に逃れる事ができるとは。
もっと早くから試してみればよかった。

早くザキを救って真選組に戻ろう。
いや、戻る前に此処を片しておこう。

そして、笑顔で戻って


真選組を辞めよう。


もうこれ以上迷惑をかけれない。



例え自分の意思じゃなかったとしても
人斬りをやったんだ。ただじゃ済まない。

誰もが俺を恐れるだろう。おぞましい記憶として誰かの記憶の中に残るだろう。

だから俺は、真選組に会って一言さよならを言う。
そして、兄貴を残して俺は去るんだ。この世界から。

坂本を見つけるのはたやすく無いのかもしれない。
だが、もうこの世界には居られない。


さ、まずはザキを見つけないとな。



縄を解いて歩きだそうとした時だった

「お前、何している?」

チッ見つかったか。コイツ・・・親玉だ。
この組織で一番偉い奴に見つかっちまった。

「妖刀を離したのか!?」

どうやってと驚く男。

「ま、いい。」

敵の親玉が俺に向かって歩く。そしてにぃっと笑う。
そして静かにゆっくりと口を開いた。


「お前の仲間は皆死んだ。」

『!?』

「お前を向かえに来たんだろうな・・・。
黒髪煙草や栗色のさらっさらなのとゴリラみてぇの。
それから銀髪野郎とピンクと黒のガキ二人。」

『っ!?』

奴らが・・・?
そんな、、わけない!!

ただの心理作戦だ。
第一、俺の周りの関係を調べれば特徴くらい分かるだろう。

絶対嘘だ!!

「そして・・・お前の兄貴。。」

!!兄ちゃん!?
そんなっ!!兄ちゃんに限ってそんな・・・


「惜しかったねぇ、あんな強ぇの仲間にしたかった。
だが、今はお前で十分。俺の最強の駒を使わせてもらった。」

『嘘だっ!!奴らはそう簡単に死ぬタマじゃない!!』

「その怒りを心にもっと打ち秘めろ。そして、妖刀を抜け。
そして、俺にかかってこい。妖刀に勝ったお前なら、俺に勝てるだろう。」


だんだん、心の奥底から闇が湧き上がってくる。
ふつふつと怒りが込み上がり、俺の芯を熱くする。

悪いな近藤さん。土方さん。総悟。銀時。神楽。新八。ザキ。・・・兄貴。

俺、再び暴れるよ。


俺は刀を握る。途端に、自分の意思を手放した。


頭の中では俺が存在する。今まで見えていた光景も見えない。真っ暗だった。

体はもう則られていた。

「気持ちが揺らいでいる今、刀を持てば操られる。そんな事もわかんなかったのかね、。」


暴れる体。俺は前よりも人を斬った。俺は大悪人だ。

何故か妖刀が喜んでいるのが伝わる。

予想外だった。再び意識を取り戻せるかと思っていた。
だが、体が言う事を聞かない。元の自分に戻る事は一度も無かった。


うぁ・・・ぅっ・・・。

俺はどんだけ人を苦しめればいいんだ。

泣きたいが涙が出ない。体は則られたままだった。








あれから数日が経った。
まだ俺の体は則られたまま。暗闇の中を苦しみに耐えながら過ごしていた。

『此処から・・・出して・・・。』

心の中で喚く。だが、妖刀の主が笑った様に思えた。

いっそのこと、精一杯力振り絞って一瞬だけでも戻れたら・・・腹を斬り自害するか?
いや、ソレは痛い。痛い。無理。無理。
俺には到底できないな。

はぁ・・・と暗闇の中でため息をついた時だった。
揺れる体。同時に鳴った爆発音。外からの音だった。

「何者だ!?」

外から声も聞こえる。俺、元に戻ったか?
外部の音、衝撃が伝わると言う事は戻ったのか?

そっと目を開けてみる。確かに光が見えた。

『やった。』

でも何で急に・・・


向こうから俺に向かって走ってくる男。

「お前の出番だ。奴らが攻めてきた。復讐の可能性が高い。」

俺の前まで来ると呼吸を整えながら一息で言う。
は?復讐?奴ら?




「オイ・・・分かってねーみたいだな。お前の元仲間が・・・お前を斬りに来た。」

『なっ!?』


んなワケ・・・あいつ等が俺を?
そんな・・・

でも・・・無理も無いか


「早く来い!!」

嫌だ。行きたくない。そう思ったのに・・・体が思うように動かない。
勝手に歩く足。脳内で喜びの感情が芽生える。
俺、相当イッちまってるみてーだ。目には見えている。でも、体だけでなく能まで則られちまってるみてーだ。


外に出る。すると・・・目の前には俺の仲間が・・・
俺の昔の仲間が戦ってた。

其処には・・・自身の兄貴でもあるもいた。

戦いの中で再会だなんて・・・。
しかも敵同士。酷な話だな。


奴らと目が合う。

っ!!」

俺を見ると叫んだ。そして・・・襲い掛かってきた。

『なっ!?』

咄嗟に刀で受け止める。襲ってきたのは総悟だった。

・・・お前もうこの世から居なくなっちまった方がいいんじゃねぇの?」

総悟が俺の間近で刀を振り上げながら言う。

同時に土方さんや銀時・・・兄貴までも・・・


『っ!!』







***




かつての仲間に襲われる
視界に入る奴らの目には仲間としての俺が映っていない。
今は奴らにとって、俺はただの敵なんだ。
邪魔な存在・・・?

・・・もしかしてあいつら操られているのか!?
俺を操ってる奴らは戦いを高みの見物をしているのだろうか?

殺される。
総悟達には敵わない。

必死に避ける。妖刀が勝手に動いて避けると同時に振りかぶる。


だが、相手は強く、全く当たらない。


よかった。
どちらも怪我なしなら、それでいい。

だが避けているだけでいいのだろうか。
俺が当たればそれで終わる。そう思う。

だけど、終わらなくても互いに怪我無しの方が気楽なのかもな。



操られた体が刀を振り回していながら思った。
だが、耳に届く声。掠れた声が耳にびんびんと響く。

!戻れ”
”戻ってこい!!”

聞き覚えのある声。他にも俺を呼ぶ声がする。

”本当のお前はそんな奴じゃねぇだろ!!”

”お前はそんな冷てぇ目はしてねぇ!!”


何の・・・何の事を言っている?
目の前には襲ってくる奴ら。
目がいつもの奴らじゃない。

口も動いてないのに、耳から聞こえる声。

その声を聞いて、操られたはずの視界がぼやける。
そして、目から薄っすらと流れる涙。
何故?何故涙が出る?

『えっ!?』

途端に意識が戻る俺。体が自由になる。
肩が楽になった今、視界も順調だった。だが、目に映るのは・・・



傷だらけの皆。
体から出血しており、ポタポタと地面に落ちていた。
肩から荒い呼吸をしながら、をじっと見つめている。
その悲惨な姿は刀を構えて今にも倒れそうだった。


『ぁ・・・ぁ・・・ぅぁぁああああああ!!!』


さっきまで目に映っていたのは元気の体。
俺を引っ掻き回して斬りかかって来る姿。
あれが偽りの姿で、本当は此方だとしたら・・・

あれは俺のつけた傷だとしたら・・・?



『ぅっ・・・ぁっ・・・。』


どんどん流れていく涙。
頭を抑えてしゃがみこみ、わめく
頭がずきずきと痛む。苦しい苦しい苦しい。

俺は喚き嘆き続けた。

だが、そんな俺に傷だらけのままやってくる総悟。

総悟は無言で俺の持っていた妖刀を斬る。
途端に粉々になる妖刀。

『そ・・・ご・・・。』

兄「酷ぇツラしてんなぁ。」

『兄ちゃん・・・。』

目に涙を溜めたまま二人を見上げる。
そしてそのまま辺りを見渡した。

銀時は肩から血を流しながら右腕を骨折した新八を背負う。
神楽は辛うじて一人で立っていた。
頭からだらだらと出血している土方さんは足を引きずる近藤さんの肩を持っていた。
外傷からして兄ちゃんが一番軽そうだ。

皆ボロボロだった。

沖「そんなところでぼーっとしてねーで、少し休んだら行くぞ。」


親玉を潰す。総悟はそう言っていた。
今頃舌打でもしているのだろう。俺が元に戻った事に。妖刀を砕かれた事に。

総悟はゆっくりと立ち上がる俺を見ながら、一言呟いた。

沖「その前に・・・皆生きてるから安心しな。」


それは分かってる。今、目に映る光景が物語っている。
でも、皆・・・生きてた・・・。それだけで凄く嬉しかった。
死んだと伝えられた時は信じたくなかったが、それでも少しは心配になって妖刀を再び掴んでしまった。
でも、今は大丈夫だ。



沖「何言われたか知らねーけどな。
俺達は確かにアイツらに斬られた。でも、急所は外してたから助かったんだよ、皆。」

んでを助けに来た。と言葉を続ける総悟。


そうしたらいきなり切りかかってくる
抵抗をするが、妖刀に操られてるせいでかなり強い。
骨を折られたり、斬られたり・・・。

だが、急所を狙えるのにも拘らず、必ず急所は外していた。


俺達はにはまだ意識があると信じて問いかけた。
そうしたら・・・戻ってきてくれた。

よかった。
マジで良かった。

そう思ってんのは俺だけでなく、も。
旦那や土方さん、近藤さん、チャイナ娘や眼鏡の奴もだ。



沖「・・・・・・戻ってきてくれてよかった。」

小さく呟く様に言う。には聞こえない様に言うつもりだった。

『・・・ありがとう。』


から笑顔が零れた。でも、その笑顔を見てられなかった。
とても、心から笑っているなど言えなかった。
自分を批判し、痛めつけ、憎く思っている。
自分のせいじゃないくらい分かっていても、それでも自分のせいにしているの顔を直視できなかった。

沖「・・・。」

「バカ野郎っ!!」

『っ!?』

大声だった。耳に直に響く声。同時に銀色が視界に入る。

銀時だった。銀時が俺の目の前に立って怒っている。
兄ちゃんでさえ驚いていた。


銀「心配させんじゃねーよバカ。
マジでホント・・・お前の事心配してたんだぞ。」

悲しい顔をしていた。
肩から未だに流れる血をもともせず、ただただ強い目は俺の目をじっと見ている。


銀「俺達がそう易々と俺達が死んでたまるかよ。
お前のお人よしは溜まんねーな。ホント。自分よりも他人か・・・。

でもホント。が無傷でよかった。
後はもう・・・気にすんな。」

微笑む銀時。とても澄んでいて、まるで春の優しい太陽の日差しだった。


『・・・ごめん・・・なさい。』

銀時の顔を見てると涙が出た。掠れた声で謝る
その頭を銀時は優しく撫でた。

沖「誰も怒ってねーでさァ。」

ズキンと痛んだ胸が和らいだ気がした。
総悟・・・ありがとう。

涙を拭く

近「さてと・・・行くか」

いつのも様に軽いノリで言う近藤さん



『っ!?まだ怪我がっ・・・』

土「大丈夫だってぇの。」

土方さんが煙草をくわえて俺に言う。もう十分休んだと。


神「さ、行くアルよ。」
新「これくらい平気です。行きましょうさん。」

『二人共・・・。』


嬉しかった。こんな俺を受け入れようとしてくれるなんて。
でもその前に言っておかなきゃな。


『皆、本当にすいませんでした!!』

地面に付きそうなくらい頭を下げた。


土「ばーか。だから言ったろ。」

沖「誰も怒ってねぇ。それよりも戻ってきてくれた事が嬉しいんでィ。」


『・・・・・・。本当に、皆が仲間でよかった。』


再びポロポロと流れる涙。俺って本当は涙もろいのかもしれない。

沖「バカ。泣くんじゃねーやィ。」

総悟は目元の涙を掬う。皆はその光景をただじっと見ていた。

兄「さ、行くぞ。」

何回目かの行くぞコールの時だった。



ドゥウンというもの凄い音がした。

『ば、爆音!?』

建物が吹っ飛ぶ。同時に爆風に仰ぎよられる。

『なっ。』

唖然とした。何故、先ほどまでいた攘夷派の建物が爆破されるのだろうか。
自爆?それとも・・・。

「相変わらずふ抜けたツラだな、オイ」

『っ!!』

親玉の首に腕を引っ掛けてずるずると引きずってくる男。
危ない香りを引き立たせる派手な着物

崩れた建物の瓦礫から現れた男はキセルを吹かせながら俺に話しかける




『た・・・・・・高杉っ!?』





NEXT

〜後書き〜
高杉終わり二度目っスね〜・・・。
『a deep one』の方でお高杉終わりあったしなぁ〜
こーゆー終わり方が好きなのかもしれない。うん。
さてさて、第一期後少しですねぇ。今回はギャグナッシングですみません。
次回くらいは書きたいな〜(ただの願望