悲しみと嬉しさは比率する



第二十二訓 悲しみと嬉しさは比率する




俺を狙ってきた男…

殺人鬼の中の一人と言った
少なくとも2,3人いることは確かだ






俺に用があったのは別の一人…


じゃぁ何故自分から攻めてこない?

何故別の奴に俺を連れてこようとする?



顔を知られたくないのか?






真選組には身元が知られちゃいけない人物


俺の事を”お嬢さん”と言った

俺が女だって知ってるのは真選組の奴と万事屋だけ



スパイか!?




まさか…な

真選組にいるわけがない

話が矛盾している









は病室の前の座席に座って考えていた




!!」

『!!』




土「襲われたって本当か!?」


土方さんの声により我に帰った



『ひ…土方さん…』




沖「榛原がやられたって聞きやした…大丈夫なのか?」

近「まさか…榛原がやられるなんて…」


『総悟……近藤さん……大丈夫ですよ
首下の関節をを外されましたが命の別状はないですから』


近「…そうか……だけでも怪我無くてよかった」

『ありがとうございます』





沖「・・・・・・元気無いでさァ。オメーはアホじゃねーと俺もやりにけーや」

土「・・・・・・そうだな…」






土「お前今何悩んでんだ?自分の所為で榛原がやられたって悔やんでんのか?」


『!?』


その通りですよ

俺が悪いんです


土「確かにオメーが関わってる事だ。オメーの所為でもある…」


『っ………』


土「だが…




オメーが悪いワケじゃねェ」


『…?』


土「オメーが何した?確かにボケッとしてた所為だ
だが、アイツらに狙われた事に関してはオメーは悪くねーだろ」


『土方さん……ぅ…ぅぅ…』


は初めて涙を見せた

泣いた事は今まで家族以外に見せた事がなかった




とんっ

総悟は俺の頭を胸元に引き寄せた

沖「今日だけ胸貸してやっから…」


『…そ…ぉご……ぅぅ……ズズッ』

沖「鼻水つけんなァ!!」

ベシッと頭を優しく叩く




『つけてないから!啜っただけだから!!』

もっとキモいわァ!!

今度は思いっきり叩かれた。頭が痛い。


『い…いだい……』


総悟から離れ、しゃがみ込む。



近「…」

視線を合わせて座る


『近藤さん…?』




近「…お前はまだ子供だし、第一女の子だ
それを自覚しろ。普通お前みたいに強い奴ァいねーぞ」

『そりゃ俺は怪力女だよ』


その発言に対して近藤さんは少し吃驚した表情を見せてから優しく笑った



近「目に見えたものじゃない・・・心だ。は心が強いだろ?
素直に自分を攻めてる所も…お前の心の強さを表してる…
一人で考えるな、・・・。もう一人で悩みこむな。俺達仲間がいるだろ。」

『こ・・・近藤さぁぁあああん!!』

近藤さん目掛けて突進する。

近「グェッ」

近藤さんは俺のタックルを受け止めてくれた

ちょっと卑劣な言葉も聞こえたけど

近藤さんの顔は娘を心配する父さんの様だった








***





近「まず・・・お前の推測している事を話してくれないか?」

『・・・・・・はい。』



復活した近藤さんが俺に問う。
少しためらったが仲間には全て話すことにした。



『俺を狙ってきた男は殺人鬼の中の一人と言っていた。だから、少なくとも2,3人いるって事です。
それで俺に用があったのは襲って来た奴の仲間で、そいつではなかった。』

一息つく。そしてもう一度口を開いて逆に問う。

『何故自分から攻めてこないんでしょうか?
其処で俺、または俺の仲間に顔を知られたくないのではないかと推測しました。
例えば…真選組には身元が知られちゃいけない人物…とか。

奴は俺が女だと知っていた。だから元々俺の事を知ってる人。
調べたってのはスパイがいる以外おかしい。・・・でもそれじゃぁ矛盾してるし・・・。』


沖「スパイがいる以外おかしい…ってどうしてでィ?」


総悟は理解できず、の言葉に口を挟んだ。

土「ありえねーんだよ。」

沖「?」


総悟は首をかしげる。自身だけが分からないのだろうか。

『そう。ありえない。俺はこの世界の住民じゃないし、真選組としての履歴書も無い。
あるのは契約書だけど幕府が持ってるし、其処にだって書いてある正しい事なんて年齢と名前と顔しか無い。
俺が女と知っているのは真選組と万事屋だけ。つまり、仲間と思ってる奴の中にスパイがいる・・・しかない。

俺の事を元々知ってる人がいるなら話は別だがな』

近「なるほど・・・」

俺の推測に納得する近藤さん。

土「・・・・・・。なんでアンタ局長の癖に知らねーんだよ。」







『・・・迷惑かけるかもしれないけど、よろしくお願いします・・・・・・。』

頭を下げる。

土「ふっ・・・。」

そんなを見て土方はの頭をくしゃくしゃにした

『んぎゃぁ!!』

突然の事に驚き奇声を上げる。だが土方は至って普通だった。

土「安心しろよ。認めたくねェが
総悟がを護るってんなら傷付く奴は誰一人いねぇよ。」

『土方さん・・・。ありがとうございます。』






あぁ

なんて俺は幸せ者なんだろう…






沖「そういやァよォ」


一人幸せな気分に浸っていると総悟が口を開いた。


沖「ココ最近何でシリアスばっかなんでィ?つまんねーや」





『・・・・・・。
NOォォオオオ!!!

ビクゥッ
の突然の叫びに三人同時の驚く。


土「なっ!?いきなりなんだよ!!」
沖「吃驚するじゃねーか」
近「どうした?」


『総悟ォ!!何問題発言してんだァ!!何裏情報的な発言してんだよォ!!管理人に謝れェェエ!!』


叫ぶ俺に途端にパンチが飛んで来た。


土「オメーも十分問題発言だ。
否、お前の存在自体が問題だよ




『酷いッ!!酷すぎる!!土方さんそんなキャラじゃなかったのにィ!!
いっつも俺にいじられて悲しんでた寂しいキャラだったのにぃ!!』


土「はっ!なめんなよ」


『ふんッ!大体マヨネーズを必要以上に摂取している土方さんは異常過ぎだ!!
いつか体が黄色くなりますよ!そしてコレステロール数値が非常に高いから肥りますよ!!』

土「黄色くなるかよっ!○ーさんかッ!!」

『はちみついりますぅ〜?』


は”Huney”と書かれた壺を差し出した


土「要らねーよ!何処から出したんだ、ソレ!!
まるっきし○ーさんじゃねぇか!!何で態々"honey"を"huney"にすんだよ!!」

『だってプーさんの壺、実際こーじゃん』

土「お前なぁ・・・。折角俺が隠したんだからオメェも隠せ馬鹿っ!!」

『ぅぉう!しまったァァ!!煤i ̄□ ̄;)』




沖「顔文字使っても誤魔化せねーよ」

『おおお沖田君〜?元はと言えば君の所為なんだからね〜?』

沖「あっれぇ?何の事だろ〜わかんないな〜。近藤さん分ります?」

近「ん?………ん〜っと…わかんない。」

『ゴリラに同意を求めんな』


近「ちょっ!?酷い!!そりゃ酷いよちゃん!?」

『ちゃん付けすんなや気持ち悪ィィィイイ!!!』

沖「決まったァ!!アッパーカット!」

土「解説せんでいい」




いつも騒がしい真選組。
今日もまた騒がしかった。


騒ぐ同士の奴らを見ながら土方は呟く。





土「ったく・・・心配もいらねーか。」







***






あれから数日が経った。
榛原も回復し、仕事に復帰すると言う時、ひとつの情報が入った。


山「副長ォ!大変です!!」

土「何だ?山崎」

潜入操作に行っていた山崎が副長室に駆け込んできた。


山「先程まで潜入していた密売が行われているという噂のある倉井店に、例の殺人鬼の仲間と思われる人物が現れました。」

土「何!?」



乗り出す土方。山崎は坦々と話す。


山「調査をした所、殺人鬼の集団は沙吟と言い、
沙吟には今まで大犯罪を繰り広げてきた者が集まっています。」

土「沙吟・・・聞いた事ねーな。」

山「今まで極秘で行動していたようで。
今までそんな集団、あたかもいなかったと言うようにある期間に数回・・・と繰り返していました。

理由はわかりませんが、最近多発に殺人を繰り返しているもようです。
を探している奴はある特定の者だけの中で極秘に探しているようで・・・。」


土「其処まで調べ上げれば上出来だ。」

山「後ひとつ…」

土「?」


一息おく。山崎は一呼吸した。


山「奴等の潜んでいる場所を特定することができました!!」

土「何!?」

山「俺が分ったのはこれくらいです。」


これくらいも何も、上出来だった。

土「よくやった山崎、至急隊員を集めろ」

山「え!?でも全員其処にいるという確立はないんですよ?」

土「仲間を捕まえて吐き出させばいいだろうが」




山「…所謂いわゆる、ご、拷問ですか?」

土「あぁ。」



土方は間を与えずに答えた。
人を傷つけるのは気に食わねぇが、仲間に関係あるんだってぇなら話は別だ。

は俺達で護る”
そう近藤さんと総悟と約束したんだ。アイツは誰にも傷つけさせやしねェよ。
総悟だって同じ気持ちのはずだ






”全隊士に告ぐ、全隊士に告ぐ。至急集まれ!!至急だ!至急!!”

屯所中に放送が鳴り響いた。


『至急?』

沖「なんでィ?」


庭で一緒に話していた三人は放送に耳を傾ける。


榛「とにかく急ぎましょう隊長、副隊長」

『おう』
沖「わかってらァ」




すぐに向かうと、皆もう揃っていた。
土方さんを中心に固まっているのが見える。



土「いいか皆耳の穴カッポじってよく聞け。山崎が先程殺人鬼の仲間を見つけた。」

辺りがざわめく。は身を乗り出した。


土「話によれば集団は沙吟という極悪人が集まっているそうだ。場所は此処だ」


地図を広げ、場所を示す。住民があまり居ない地域だった。


土「を探している奴はある特定の者だけの中で極秘に探しているようだ。
適当な下っ端に聞き出しても無駄だ。だがとにかくできるだけ生きてひっとらえよ!」


「「「おう!」」」



一斉に外へ飛び出す。

隊士数人を念の為屯所に残し、後の多数は現場へ向かった。






『総悟、行くぞ』

沖「おう」





はこのとき

物凄い事が起きるなんてわからなかった


わかるはずがない



だが

この出来事がの人生を大きく変える









達はパトカーに乗り込み現場へと急ぐ。


『なぁ総悟』

沖「……なんでィ」

隣の総悟に話しかける。
のいつもと違い暗い表情を見て沖田の心が少し痛んだ



『もしまた仲間が傷付いたら。』

沖「・・・・・・。」


そんなを取り出したスリッパで殴る。


『痛ッ!?普通スリッパで殴る?てか何処から出したんだよそれ!!』


だがの言葉に沖田は答えなかった。







沖「俺達はいつでも命をかけて戦ってんだ」

『っ…!』


沖「そんな甘い考えで真選組なんかやってねぇ。誰かが傷付くのは当たり前でィ。
何処か現場で転ぶかもしれねぇ。たったの擦り傷でも傷付くって言うんじゃねぇのか。」


『総悟・・・。』


アンタはいつもサボってるようで

本当は真剣なんだ…



沖「大体この前敵の前で転んで怪我してたしなァ」


『!?酷い!!今その事言う!?折角総悟が良い奴だって思ったのに…』


前言撤回

アイツは最低な奴だ








***






沖「ここだ」


総悟は俺よりも先にパトカーを降りて指示を出す


沖「一番隊此処に待機!二番隊三番隊は各隊長の指示に従って突入!!」

「「おう!!」」




一応アレでも隊長なんだよな

今更だけど

なんかしっかり仕事してるところ見るとなんか…





沖「!!」

『え!?あ、はい!?』




沖「何やってんだ!行くぞ!!」

『おう!』


刀に手を添えて侵入する。

重くずっしりとした頑丈な扉を開く。土方を戦闘に乗り込んだ。


土「真選組だ!神妙にしろ殺人鬼共!!」



土方さんの姿を見て怯え始める男達。


「し…真選組!?」
「何故だ!?」
「何故此処が分った!?」



近「悪いな、お前らと違って優秀な人材がそろってるのでな。」

続けて近藤さんが乗り込んだ。


「クソッ!」

『大人しくお縄につけバ〜カ』


俺はひょこっと顔を出してバカにする。


「コイツ、ムカつく野郎だ。
フンッ。しかし此処は本拠地でもねぇ。それに俺達を倒せるか?幕府の犬よ。」


『幕府に忠実な犬ねぇ・・・・・・生憎俺は好きで其処にいるんでねぇ。
言わせてもらうけどテメーらの方が上に逆らえないんでしょ。
逆らったら殺される・・・狼に怯える子羊じゃねぇの?』

「っ…」


あ、図星みたいだ。
俺達は野放しにされた野良犬だ。


『オイ其処のつるっぱ!!』

「なっ!?俺はハゲじゃねぇ!!」

『お前に言ってねーよ!反応したって事はお前実はヅラだな?』

「ち…ちちち違ェ!!コレは本当の髪の毛だ!」


『チッチッチ…其処がつるっぱの証拠なんだよ。
大体、道端で”ヅレてるぅ”つって振向いた奴は実はヅラだったりしてるし。

今のもそう。ハゲてなかったら”コレは地毛だ”って言うんだよ。
”本当の”なんて、いかにも俺はハゲですって言ってるようなモンだろ』


「っ…ち…違うぞ!皆騙されるなよ?」


と男が言い合ってる間

それを見守る土方と沖田




土「なぁ総悟」

沖「なんです土方さん」

土「って本当にハゲ好きだよな」

沖「今更ですぜ、アイツがいじる奴は大抵ハゲでさァ」

土「…そうだな」

沖「…そうでさァ」










『は〜いじゃあハゲの人手ェ挙げろォ!!』

誰も手を挙げるはずはない。
大体三下の奴だって、俺に異常さを感じて殺気を止めない。

だが俺は手を挙げる奴を探してるわけじゃない


絶対いるんだ。誰があげるか気になる奴は。
三下ってのはいくら気ィ張っても其処は気になってしまうんだ



すると、大抵の奴らは周りをこっそり見渡し始めていた。



『この時を待ってたぜ』

「!?」

土沖「?」


風が靡く。自身の髪が揺れた気がした。

一瞬の出来事だった。が動いたのは分った。
だが、物凄いスピードで残像しか見えなかった。





二ヤリと笑う


『オイ、茶番はやめて早く俺達倒せよ』

「お前の所為で目的を忘れそうだった・・・。野郎共!!早くやっちまえ!!」



三下の奴等が真選組に襲い掛かってくる。

三下の奴等と言っても弱くはない。



「普通に戦ったら真選組の誰かが傷付くんじゃねぇのか坊主」


に向かってくる男が問い掛けてきた。


『そりゃ…普通に戦ったら…な』

「!?」

もそいつに向かっていく


「どーゆーつもりだ?」

『さぁね?ただの真っ向勝負じゃねぇか、一騎打ち、お願い申す!!』

「いいだろう…」


刀の柄を掴む。
相手も柄を…掴もうとする・・・・・・が


「!?」



刀が…無い!?




再び二ヤリと笑う。


掛かった



『だ〜からダメだね〜お前等三下はよォ。気付くの遅いんだよ』


刀を抜かず、鞘で殴る。

相手は気絶。俺はソイツを縄でグルグルに巻いた。
真選組隊士達も同様に、敵を縄で巻いていった。

刀の無い侍は侍じゃない。子供を倒す様なモノ




あぁあ〜意外と早く終わっちまった。



縄で繋がれた男達を見下ろし言う。


『此処が違うんだよ、此処が』


頭を指差しこんこんっと軽く叩く。


沖「やるじゃねぇか」

土「にしては良い案だ」





榛「副隊長…凄い…動揺策戦だなんて。
動揺させて出来た隙をついて見えないようなスピードで相手の懐へ潜り込み刀を奪う。
凄い・・・並大抵の力じゃできない」

『サンキュ、れーちゃん♪』

沖「だがその心理作戦の内容が幼いけどな。」

『黙ってろ。とにかく、先に進もう』

沖「当たりめぇでィ」



だが、ソレがはばかれた。

「何者だ!!」


後ろにざっと30人ぐらいの男達。


『まだいたのか…』



数分後




周りを見渡せば

他の奴等も今倒したところだった

三下よりも強いと言ってもそう変わらず

直ぐにキリがついた







パチパチパチ


「「「『!?』」」」



一段落したと思ったら

背後から異様な拍手




「ブラボ〜ブラボ〜」

『!?』



後ろを振向けば天人と侍


『お前がボスか?』

「…ボス…?まぁ…そーゆー事でしょう」






『大人しく縄に入ってるつもりは……』



天人は笑った
まるで俺達を見くびるように


『…ないよな』




力量は三下の奴等より遥かに上


「私もアンタらには用ないのですがね?それにどう足掻こうったって、私達に勝てるはずもないのですから。
でも…いくら三下でも好きにやってもらっちゃ困るのでね。三下の奴等を捕まえようがどうって事ないが、この場所を知らされた以上は死んでもらう」



『じゃぁ俺と相手してよ…オッサン』

「ムカつく譲ちゃんだ…まぁいい…よかろう」



ザッ


「面白そうだ」



土を硬く踏みつける

戦闘開始!






―ザッ―

相手が先に動いた


早いッ!!



刀が頭上に振り下ろされる
それを間一髪で鞘で受け止めた


「ほぉ…やるじゃないですか」

『アンタもね……アンタってこの中では一番強かったりする?』

「なっ!?まぁな…なんで分ったのです?」


『雰囲気…ってのもあるし、俺が女って知ってたところから』

「フンッ…それはしくじりましたね」




『そう、そして・・・俺を相手にしたのも失敗だよお兄さん』


「!?」


は男の腹を蹴り飛ばし後ろへ飛び下がる

刀を左手に持ち替え、もう片方の刀を抜いた。


「二刀流!?」

『そうさ』


まぁこの刀使うのは初めてだけど。

一歩踏みしめて走り出す


「早い!?」



も早かったが、相手も負けじと食らい付いてきた。
だが長い相打ちの末、は一手を仕掛ける。

男の頭上から刀を振り下ろした。



「!?」

咄嗟に男は鞘で受け止める。

だがその鞘は一瞬にして真っ二つになった。
そのまま刀は勢いを無くすどころか上げ、男に向かって振り下ろされた。


『切れ味凄いな…』





「なっ!?ボスがやられた!?」

「ヤバイ!逃げろ!!」

「ヤバイぞ!?」

「いいから逃げるんだ!!」




誰とも相手をしていなかった男達が逃げ出した。


『待てッ!!』


しまった!!



こんなに一度に相手をする事は不可能だ。一人一人足を奪っていく。

足を狙いながら周りを見渡す。
すると、入り口付近に一人、敵の男が立っていた



何をするつもりだ?


「オイ逃げるぞ!!」


男が入り口に向かって走ってきた。
だが男はびくともしない。


!?』



兄貴と同じ名前…

世の中狭いんだな



思い出させやがって……あの男絶対捕まえる!!



「どうした!?早く!!」


必死に呼ぶがそれでも動じない



「チッ…先に行くぞ!」


30人程の男達が一斉に入り口に駆け込む





『待てコノヤロー!・・・・・・なっ!?』


全く動かなかった男が動いた。

集団はもうすぐ其処だというのに、兄と同じ名前の男は入り口を塞いだ。


「どーゆーつもりだ!?」
「まさか…俺達を裏切るつもりか!?」



冷や汗をかく男達。という男は口角を曲げた。

「そのまさかさ…」

ずっと喋らなかった男が口を開いた。

『!!』

この声……



男は刀を掴み一気に引く。


「ぎゃぁぁああ!!」

「うわぁぁああ!!」


断末魔と悲鳴が辺りに鳴り響いた。
そして男達は一斉に倒れた。




一瞬の事だった。
男が仲間を切った。


瞬殺…とはこのことだろう





その場に立っていたのはただ一人…


沖「……!?」
土「……!?」



誰もが口を聞けなかった


仲間を裏切った上、自分自身が奴らを斬った事に対して信じられなかった。
男の考えが何もわからなかった。



『あ…ああ…アンタ……』


もしかして…




焦る
だが男は薄く笑うと被っていた笠をゆっくりと取る。


『!?』

沖土近「?」


隊士達は何なのかわからず首を傾げるが。


ただ一人…だけは違った。

何と言えばいいのかわからない複雑な気持ちだった。





その笠をとった男の顔を見た事によって





「成長したな・・・







自分と同じ茶色の髪に

同じ様な顔つき



低いが整った声は…




に…









『兄ちゃん!?』














NEXT

〜後書き〜

更新遅れてスミマセン(汗
クリスマス企画の所為で忙しかったもので…
次回はシリアスではない…といいな〜(願望かよッ!!煤i ̄□ ̄;)


敵だと思ってた男が実は行方不明のお兄さんだった!?
次回中身が深い!?かも…(曖昧かよッ!!

俺才能ないからね〜
深くできたらいいな〜


何故行方不明だった兄が此処に!?
が此処に来た理由と何か関係が!?


次回も宜しくお願いします!