世の中は予想もつかないことでいっぱいだ
日当たりのいい縁側を歩いて移動し、何度か曲がったりして歩くと取調室に辿り着いた。
俺は未だ一回もここで聴取をした事がない。
俺には無理だ、という土方さんの意見だった。
だから俺は戦うのに一生懸命になってた。
ここに足を入れるのも、思えば初めてな気がする。
――ガ、ガララッ――・・・
少し動きの悪い木の引き戸を開くと、まず目に着いたのは茶色い毛玉だった。
そしてそれの前と横には、俺の上司である沖田総悟と密偵の山崎退がいた。
「おぉっ!!元気か、金時っ」
銀時を見つけた途端、坂本の目の色が余計に輝いた気がする。
いつもテンションの高い坂本辰馬。
銀「金時じゃねぇ、銀時だ!何回言ったらわかるんだよ!!」
銀時は素早い動きで坂本へ近づくと、
腕を斜め上から振り下ろし、スパンッ、と爽快な音と共に頭を思いっきり叩いた。
沖「ちょ、旦那ァ・・・。この話の重要人物を出だしから気絶させないでくだせぇ」
山「沖田さんっ!!何か視線を感じます!何いけない発言してんだコルァって言われてる気がします!!」
沖「我慢だ、ロッキー」
山「セリフ勝手に作ってんじゃねぇよ!つか誰がロッキー!?」
銀時の力が強すぎたのか、ひと時だけ気絶した毛玉。
その横からちょっとした会話が聞こえていたが俺の耳には入っていなかった。
マジで坂本じゃん!
生毛玉、じゃんっ!
俺自身も坂本を見た時から目を輝かせ、視線を離さず見つめている。
その視線に気づいたのか、坂本もこっちを向いた。
坂「ん?そっちの子は誰じゃ?」
どれくらいなのか上手く伝えられないが、とにかく凄い笑顔を向けて問うてくる。
銀時にとっては気持ちが良いを通り越してウザさが溢れている笑顔だが
俺にとっては未だこれくらいが丁度いい。
そのうちウザくなってくるんだろうが・・・。
『あ〜・・・。俺は。銀時んとこで世話になってんだ!』
にかーっと笑うと、坂本はおお、そうじゃったか!とデカい声でまた笑った。
無駄に明るい奴は嫌いじゃない。
そのうちウザくなってくるんだろうが・・・。part2
坂「よし!!このメンバーでいいじゃろう」
いきなり立ち上がった毛玉。
その行動と発言に疑問と驚きを表すその他諸々。
「『・・・・・・は?』」
一寸置いて発した言葉がハモり、何重にも重なって聞こえた。
メンバーって・・・ここにいる奴らの事か?
俺と土方さん、総悟、ザキ・・・
それから銀時と神楽・・・?
あれ?そういや新八どこにいったんだろ・・・。
坂「この円の中に入ってくれんかの〜」
坂本が指したのはいかにも怪しげな魔法陣。
いつ書いたんだと誰もが疑問に思う中、坂本だけは自慢げで、楽しそうだった。
坂「ほれほれ!!さっさと入るんじゃき」
―ドンッ ――
一番後ろにいた者の背中を思いっきり押したのか
その前にいた者を皆道連れに・・・
勢いついたまままとめて俺達は円の中に入れられた。
そして間髪入れずに懐から何かを取り出す坂本。
坂「行くぜよ〜」
言うと同時に、怪しげなボタンを押した・・・。
ちょ、おいおいおいおいっ!!
―ピカッ――
焦っている暇は無かった。
気づいたらものすごい光が身を包んでいて
気づいたら俺達の意識は飛んでいたのだから。
坂「よい旅を〜じゃよ〜」
***
『ん・・・』
ゆっくり目を開けてみると、ぼやけた緑一色だった。
体を起こして見渡してみると自分は木の幹を背にして眠っていた事が分かった。
ここは・・・何処なんだ?
何で木の陰にいるんだ?
アレ?俺はどうしたんだっけ?
『オイ・・・皆起きろ』
少し大きな声で呼びかけると
一人一人言葉を零しながら起き上がってきた。
「・・・いったい何が」
「どうしたんだ・・・?」
皆思い思いに周りを見渡し、混乱している。
マジ、ここ何処?
その時、遠くの方からだんだん近づき、そのまま通り過ぎていく大きな音が。
―ブロロロロ・・・・・・――
車の音が聞こえる。道路に近いのか・・・。
音のした方は後ろだった。
そっと木の陰から覗いてみる。
俺に続いて皆も覗く。
土「何!?」
沖「ここはどこでさァ・・・」
見覚えの無い町並みに戸惑いの隠せない皆々。
だが俺は違った・・・。
『ここは・・・』
目を見開き、瞳孔が徐々に開いていく。
頭上で鳥が鳴きながら羽ばたいていった。
銀「知ってるのか!?」
銀時が俺に問いかける。
そう。俺は知っていた。
知らないわけがなかった。
何故ならそこは・・・
『・・・平成の歌舞伎町・・・・・・』
第十一訓 世の中は予想もつかないことでいっぱいだ
銀「平成の・・・」
神「歌舞伎町?」
俺の言葉を繰り返す銀時と神楽。
皆、聞き覚えの無い場所に先ほどよりもざわめき出した。
沖「歌舞伎町って・・・俺らの住んでるかぶき町じゃないんですかィ」
土「平成って何だ?」
みんなの質問は最もだった。
平成なんて、知るわけがない。
俺がずっと住んでた、江戸の200年も先の未来なんだから。
何故戻ってきたのかが分からない。
俺だけ戻ってしまうのならまだわかる。
でも何でコイツらまで・・・。
その時、俺は一つの出来事が思い立った。
―ピピッ――
『ん?』
右側のズボンのポケットから音がする。
意識し出すと、小さな重みも感じられた。
戸惑いながらも、ポケットに右手を偲ばせる。
指先に感じる、四角く硬いもの。
『何かある!!』
その音がするものを出してみた。
黒く、手のひらサイズの平べったい液晶画面・・・。
『何だコレ』
側面に変なボタンがついていた。
それを試しに押してみる。
小さな音と同時に、何かが浮き出した。
『うわっっ!!』
異様な光景に、そこにいた者は皆目を取られた。
銀時が先頭にやってきて、俺の手の中の物を覗き込む。
銀「・・・坂本?」
坂”どうじゃ?未来はどんな感じじゃ?”
銀「未来って…」
『ここは江戸の未来、平成だから・・・』
坂”おんしゃよくわかっておるのォ〜
そうじゃ。おんしらがいるのは2006年じゃ”
銀「何で2006年なんかにいるんだよ!!!」
坂”時空移動の方法を生み出しての〜実験台じゃ”
銀「辰馬ァ!!次にあったら殴るぞゴラァ!!」
坂”はここ詳しいようだきに案内してもらえばいいの〜
未来をたっぷり楽しんでくることじゃ”
―プチッ―と軽快な音で画面が消える。
同時にアホ面も消え・・・
「「あの毛玉野郎ォォオオオオオオ!!!」」
そこにいた俺以外の者が一斉に叫んだ。
『・・・・・・』
俺は一人、考え込む。
まさか、ここにこんなにも早く戻ってこれるなんて。
驚きが隠せない。
と同時に、どうしたらいいか迷う。
うーん・・・
そういやさ、俺もう皆に言ってあるよな?
アレ?でも新八と神楽は知らなかったっけな?
あれ?あれ?
とにかく・・・もう言ってもいいよな??
銀「そういえば何でが未来に詳しいんだ?」
黙っていた俺に話しかける銀時。
やっと俺も顔を上げ、銀時に向かって言う。
『忘れた?俺未来から来たんだよ?』
あ、そういえば・・・という声がハモった。
今日はみんなの声がよくハモる。
『つーかよ・・・俺丁度この時代から来たんだよ』
だが、今日は一体何日なんだ??
あの祭りから何日が経ったんだ?
今の時間がわかんねぇと、俺もどうしたらいいかわかんねぇ。
再び考え込んでしまった俺。
だが、すぐにまた顔を上げる事になった。
チャララ〜♪
聞き覚えのある音が聞こえた。
そう・・・まるで・・・携帯の着信音の様な・・・。
未だ鳴り続けるそれを探し、きょろきょろと辺りを見渡す。
すると、下から聞こえることが分かった。
『あ・・・』
これ・・・やっぱ携帯だ・・・しかも・・・。
俺の声に反応して、総悟も下を見る。
沖「・・・携帯?・・・それがどうしたんでぃ?」
拾い上げて、俺に見せる。
俺はそれを受け取って、じろじろと見つめた。
『これ・・・俺のだ』
沖「・・・お前の?それがなんでまたこんなところにあるんでィ?」
『分かんねぇ・・・』
この携帯・・・祭りに行くときはあったのに、江戸に行ったときはなかった。
どこに行ったのか、凄く謎に思っていた。
・・・なんでこんなとこに・・・?
沖「まァよくわかんねぇが、見つかってよかったじゃねェかィ」
『ああ・・・』
二つ折りの携帯を開け、画面の時計を見てみる。
そして驚いた。
日付が俺がトリップした日付。
しかも・・・時間が俺がここから消えてから約10分しか経っていない。
つー事は・・・
銀魂の世界からこっちに来て、10分くらい経ったわけで・・・
つまり俺は、この世界から消えたと同時に戻って来たと・・・。
あー・・・どうなってんだ、こりゃ。
・・・ま、深く考えねーようにするか。
ま、今日が土曜日だから、明日は日曜日だよな。
学校とか、今日はまだ考えなくてもいいし
ゆっくり1日使って考えよう。
周りにいるこいつ等を見渡して、思う。
・・・格好おかしいよな・・・。
浮くよな、こんなんじゃ。
じーっと見つめていたのか、銀時になんだよ、と言われた。
『まずは、服が変だから変えよーぜ』
銀「あ?俺の格好がダサいってゆーの!?」
波模様の袖を引っ張り、俺に訴えてくる銀時。
おいおい、その萌え袖やめろや。
襲われてもしらねーぞ、俺に。
『違う違う、この世界ではあーゆーのが普通なんだって』
そう言って木の陰から歩いている人を指す。
流石、都会なだけに人通りが多く、沢山の服装を見せることができた。
『つーわけで、今から服装チェンジ&変装してもらうから』
「は?何で?」
『その説明は後で』
そう一方的に告げて、俺は隊服の上着を脱いでスカーフをとった。
土「おい、何いきなり脱ぎ始めてんだよ」
総「まさか、変装ってここですんのかィ?」
俺の突然の行動に驚き、問うてくる皆。
俺はあえて何も言わず、もくもくとゆるい格好にしていく。
ズボンを緩め、腰の位置で穿き、できるだけ現世の格好に近づける様にし
シャツも上のボタンを外し、軽く首下を緩めると、まるで新社員みたいな格好になった。
『ちょっと待っててな。動かないように!つーかぜってぇー動くな!』
後ろ目で皆を見ながら、木の陰から出る。
いきなり木の陰から人が出てくると怪しく思われるだろう。
少し警戒しながら草を跨いだ。
『よっと・・・』
本当は飛び出して道路を渡りたい気分だが、
怪しく思われないよう、歩いて横断歩道まで行き、青になってから渡った。
とりあえず・・・どこでもいいよなぁ??
つーか、金あったっけ、俺?
やばいかも・・・。
先ほどの機械が入っていた方とは逆のポケットに手を突っ込んでみる。
少しやわらかい素材の物に、紙のようなものの感触があった。
あ〜・・・なんとか少なくても千円くれぇはあるな。
極力安そうな店を目で適当に探し、悩むことなく入った。
『ま〜・・・適当に選ぶか・・・』
とか言いつつ、キャラを考えながら真剣に選んでいた。
俺はコレでよしっと。
銀時はコレとコレ…とコレ…。
総悟は爽やかチョイスだな・・・ヘアバンドとかもいいかも。
土方さんは・・・似た者同士だし銀時と似たような感じでいいよな。
ジーンズにタンクトップに軽いジャケットとかでいいでしょ。
ザキはまあ・・・そこらでいいや。
神楽は・・・・・・やべぇっめっちゃ悩むっ
ひらひら系にしようか?でもおとなしい系でもいいな。
あえてボーイッシュでもいいかも。
そんなこんなで神楽に一番時間かけて選び抜いた。
さあ、ここまできて会計で金が足りないとかだったらどうしようか。
おい、確認しとけよって言うなよ。
『あ、これバーコードとってもらえますかね?』
店「は、はい・・・//」
レジを見ると、そこにある金額はなんとか財布の中身に収まっていた。
良かった・・・足りて。
俺だけとりあえずコレに着替えてから行くか。
店員に試着室を貸してもらい、素早く着替えると
一言お礼を言って走り出した。
同じ道を通るが、行きとは違い、できるだけ急ぐ。
いう事を聞かないだろうあいつ等は今頃何をしているかが心配だ。
『よっと・・・』
ジャンプしてまた木陰に入った。
『とうちゃ〜くwwお待たせ〜』
「!?」
『・・・・・・どうした?』
思ってたのとは違い、誰も動いてはいなかった。
また、俺が戻ってきたと同時に驚いた様子を見せる。
神「、そういう格好似合うネ!」
『・・・そうか?あんがとな!』
実際似合ってるかどうか分かんねぇ。
適当に基本安さで選んだからなυ
『ほれ、皆コレに着替えて』
俺は袋から服を一着一着丁寧に取り出し一人一人に渡す。
皆それぞれ受け取っては、少しの間それを見つめていた。
沖「コレ・・・どうやって使うんでぃ?」
『ヘアバンは・・・好きなようにしろよ。頭に巻くのが普通だけど』
順調だ。
服の着方まではそこまで変わらない為、少し戸惑いつつも順調に着ていった。
だが・・・
俺は一人そわそわしてならなかった。
だって・・・
だってよぉ・・・
皆似合いすぎだろぉぉおおおっ!!!!!
総悟とか爽やかすぎで腹黒だなんて分かんねぇよっ
なんなんだ、なんなんだコイツら。
今までと全然印象が違ぇーぞ。
神楽はすっげぇかわいいし、
銀魂キャラって皆イケメンと綺麗な人ばっかだよなぁwww
ブスはブスで、俺みたいな中間はいねぇんだよな。
極端すぎて笑えねーよ、悲しくなってくらぁ。
みんなの着替え終わった姿を見て
俺は何度もため息をついた。
***
『さてと・・・服装もよし!顔も良し!
さあ行きますか!』
「顔も良しって何だよ」
銀魂キャラのこいつらが都会をブラブラ歩いてたら
普通はやばいと思うかもしんねぇけど
実際二次元キャラが実在するとは思わないし
うん、絶対思わねぇ。
だから、うん・・・
通りすがりの人は
あれ、どっかで見たことあるような・・・
あれ、似てる!
とは思うかもしんねーけど
ただのホストか何かにいそうなイケメンだって思うよね!?
そう頭で自己解釈して歩き出す。
久々の我が日本に来て、懐かしく思う。
いやー本当、、懐かしいわぁ。
都会っていいなぁ。
・・・・・・あれ、都会を懐かしむって変だな。
大体、俺の地元って都会なの!?田舎なの!?
ねぇ、どうなの!?
って頭ん中で誰かに聞いたって答えてくれるわけねーだろうよ。
・・・・・・。
あ、ちょいとそこの君!
今誰かが「誰も知らねぇよ」とかツッコミしてくれると思っただろ!!
思っただろ!!
ふっふっふ。
いつもみてーに思った事が口から出るとは限らねーんだよっ
ふっふっふ。
銀「誰も思ってねーよ、そんなもん」
・・・・・・。
・・・・・・。
『あれ、もしかして結局いつものパターン??』
銀「お前って本当学習能力ねーよな」
・・・・・・。
結局声に出てたそうです。
『まっ』
銀「ミー、パピーとか言うんじゃねーぞ。
あと、お嫁にいけないとかいうフレーズももうなしだ、飽きた」
・・・・・・。
マン、ダディー・・・・・・
言い訳がもう思いつきません・・・。
てか、ダディーっで合ってたっけ??
***
まあ、そんなわけで歩き出した都会の町だが・・・
俺の考えは結局やっぱり・・・甘かったわけで・・・。
―コツコツコツ・・・―
―キョロキョロキョロ・・・―
歩けば歩く程、こいつらの視線という視線があちらこちらへと動き出す。
気を抜けばどこかにいなくなっていたりと
こいつら一人でも大変なものを、こんなに大勢いると溜まったもんじゃない。
『はぁ・・・』
思わずため息が出る程、こいつらは挙動不審だった。
一番大変だったのは神楽かもしれない。
一番都会にあこがれる年頃だもんな。
だからと言って、カジュアルショップやアンティークショップに目が行くわけじゃなく
高級グルメ店のおいしそうな香りに釣られて厨房に押しかけようとかしていたからだ。
その騒ぎを鎮めるのがどれだけ大変だった事か・・・。
俺は地味キャラである山崎退が見守る中
フォロカタ十四郎こと土方十四郎と共に、
騒ぎに便乗する沖田総悟と
それをなだめるフリをしてさり気なくつまみ食いをしようとする坂田銀時を
必死になって止めていた。
非現実的な社会実情に慣れていたこいつらを
今の日本の法律などで簡単に止められるわけもなく
最終的には俺が・・・
『いいかげんにしろよお前ら・・・』
―バキッ・・・―
下を向き、表情の見えない俺の背後からは黒いオーラがどろどろと流れ出ていて
拳が叩きつけられたど太い木製の柵は無残な形になっていた。
『あ、やべ・・・公共物壊しちまったυ』
一瞬のうちに周りの空気がさーっと引いていった様な気がしないでもない。
「「すっ…スンマセーンυ」」
***
俺の家へ向かい初めてどれだけ経っただろうか。
そして・・・俺達ではない、
通行人などの周りのざわめきが聞こえ初めて一体どれくらい経っただろうか。
「ねぇねぇ!!あの人達さァ!」
「凄くカッコよくない!?」
「声かけてみない?モデルなんじゃないの?」
先頭を歩く俺は、
後ろに続く奴らに向かって飛んでくる黄色い声が耳障りで仕方なかった。
歩けばひそひそ
動けばひそひそ
そして、振り向けば・・・―――
「キャー///こっち向いたー!!」
後ろの奴の誰か一人だけでも反応する女性達。
まあね、自分に向けられる歓声ならともかく
他人へ向けられた歓声を浴びなきゃいけない俺の気持ち・・・
・・・あんたら分かる??
土方さんが声のする方を見た途端
そちらの方向で見ていた人達が悲鳴を上げた。
俺もこんな色男に生まれてこりゃ・・・くそぅ、悲しくなってきた。
「あの子かわいいな!!」
「ホントだ!!何歳かな?かわいいーー」
コイツらに興味があるのは女性だけでなく
男性も、神楽を見てはでかい声を上げている。
てめぇら、神楽はやらねーぞ・・・
の意を込めて軽く睨んでやるが、そいつらには見えていなかった。
つーか声でけぇよ・・・名も知らぬ通行人ABCD・・・――
後ろにいるコイツらは建物や風景を見てて気付かないが
通行人達の、コイツらを見て振り返る姿がめちゃくちゃ怖い。
擦れ違う人は目が飛び出すんではないかというほど顔を見つめては見つめ
キャアキャア言い合い叫び続ける。
歩く度に繰り返し起きてんだ
うんざりしてくるに決まってるじゃん!!
俺は深く被った帽子の鍔を掴んで軽く視界を広げてみる。
改めてコイツらを見てみると、
やっぱりみんなの気持ちは分かるっちゃ分かるかな。
こんなにも端整な顔立ちの奴らが一緒に歩いてれば
だれだって食い入るほど見る・・・な。
そんな風に重いながら、奴らの顔を凝視していると・・・
「ねぇ、あの人!あの帽子深く被ってる人!!
顔よく見えないけど、結構カッコよくない!?」
・・・へ?・・・・・・俺?
帽子深く被ってるのは・・・・・・俺だけだよな・・・??
「もっと近くで見たら、ちゃんと見えるよね!」
「近づいてみる??ね、行ってみる??」
えーっと・・・。
なんだか急に恥ずかしくなってきた
端整なこいつらと一緒に今まで並んで歩いていたことに。
比べられたくねぇ。
こんな平凡な中の中の顔を近くで見られたらおしまいだ、うん。
つってもま、、
前から思ってたけど、俺達同性じゃん??
だからカッコよさでこいつらと競い合いたくないんですけどっっ
だからお願い!
近づかないで!!!
土「、この時代の奴はさっきから人をジロジロ・・・。一体なんだってんだ?」
さすが真選組の頭脳・・・鬼の副長。
やっと異常さが分かったか。
『普通は、、見ねぇよ』
土「・・・ならさっきから痛ぇくらい浴びてる視線は?」
『いやーこれはアンタらがちょっと変わってるからっていうか・・・
ま、とにかく!一人で歩くとある意味危険だから離れないでくださいよ』
と土方さんに言った傍から、
ふと見てみると銀時が女の集団に迫られていた。
思わずまたため息・・・。
『はい皆、せいれつー!!』
「「へ?」」
急な掛け声によく分からないといった表情を見せる残りの4人。
『君達いいかい?一人離れると、銀時のようになりま〜す!!
ということで、みんな。絶対離れないで、みんな集まって、ここで待ってろ!!』
いいな、と念押しをして俺だけ一人離れていく。
ガヤガヤとした場所の中心にいる銀髪に向かって
俺は人と人の中の小さな隙間を通っていった。
「お兄さん、かっこいいわぁ」
「ねぇ、一緒に遊びましょうよぉ」
銀「あの・・・ちょっ・・・」
『お姉さん達・・・ちょっといい?』
見た目20代のお姉さん達が、銀時を囲んでいた。
人の中を掻き分けて出てきた俺は、一瞬で注目の的になった。
「あら??あなたも結構いい顔してるじゃない?」
『あー・・・えーっと・・・。
ごめんね姉さん達・・・俺達急いでるんだ…。コイツはもらってくよ。じゃ!!』
一気に言い放って、銀時の腕を掴んで走り出した。
無理矢理引っ張ったので、
銀時が曲がってはいけない方向に体が曲がったらしく、悲鳴を上げている。
「あ!ちょっと!!」
皆の元に戻るまでの遠くもなく近くもない微妙な距離。
とりあえずお姉さんから逃げた後、銀時が申し訳無さそうに言った。
銀「すまねェな、。なんかこっちの女って結構しぶてぇ」
『いいよ別に』
銀「それにしてもよく振り切れたな」
『え?あぁ・・・慣れてるからな』
銀「え?あぁ・・・お前ここの人間だったな。
お前意外と結構女にモテるもんな…………女の癖に…」
・・・・・・え?
『は?おまっ・・・・・・今、なんて・・・?』
銀「……お前、女なんだろ?」
・・・・・・バレてた・・・??
『・・・え〜っと、その・・・いつから…?』
銀「昨日から。お前の上に落ちた時言っただろ?」
"お前女みたいな触感だな・・・"
銀「それからお前は女なんじゃないかって。
ま、よくよく考えてみたら、お前のその顔・・・女かもなって」
『なっ・・・』
こいつ・・・意外と鋭いのかもな。
俺、男装してて見破られたのって、コイツが初めてかも。
睨むように見ていると、銀時は、にっと笑ってこっちを見た。
銀「大丈夫!!誰にも言わねーよ」
『・・・さんきゅ。でもま・・・
別に隠してたわけじゃないから気にしないけどね』
銀「・・・え、そーなの?」
『俺もともと男口調でこういうスタイルだったから
一言も男だなんて言ってないのに男だとみんな勘違いしてたんだよ』
銀「・・・確かに…言われてみれば…」
『・・・まーどーだっていいだろ。戻ろうぜ!』
銀「・・・・・・ああ」
***
皆と無事合流した俺達は、
早速本来の目的である家へ向かい始めた。
『よォし!!行くぞ!!』
「「何処へ?」」
『・・・・・・は?』
あーそうか。
そういや目的地何も言ってなかったっけ??
ははっ・・・しくった。
『俺の家。他に行くとこなんてある?』
銀「ない」
土「ねーな」
神「ないアル」
沖「ないでさァ」
山「ないですね」
同時に同じことを言うこいつらってやっぱ、案外似たもの同士なのかも。
何だかんだ言って、こいつら仲いいしな!
『もうすぐだから!!』
俺は思わずにやりと笑って歩き出した。
それから数分後。
市街地に入っていくと、俺の家はすぐに見つかった。
『はい到着!我が家だよ〜ん!!!どうぞお入り!!』
ガチャッと玄関を開け、俺は誰よりも先に家に入る。
後から続々と、興味津々な奴らが入ってきた。
銀「へェ〜…ココが…」
山「結構広いですね」
・・・そう・・・だよな・・・。
一人暮らしにしては・・・・・・。
『・・・・・・兄ちゃん・・・』
俺は俯いて誰にも気付かれないように静かに涙を流した。
銀「・・・・・・」
はずだったんだが・・・銀時は気付いていた。
銀「俺たちじゃ・・・・・・ダメなんだな」
ぼそっと呟いた言葉は、周りの声にかき消された。
沖「さてと!!話してもらえませんかィ」
『・・・ああ、そうだな!!』
銀「・・・・・・」
いつも誰にも迷惑をかけないように・・・コイツは一人で泣いてる。
俺がいつもそばにいてやるよ
お前の兄ちゃんの代わりにはなれねーかもしんねーけど・・・。
NEXT
〜後書き〜
これからかなり続きます!!否…かなりではないけど…
とにかく!しばらくこの世界で続きます。