コンプレックスがデカイ奴は成す仕事もデカイ
近「う…あ…あ・・・赤い着物の女が
…う…う・・・来る。こっちに来るよ」
魘されている近藤さんのまわりにはも含めて6人。
真選組の土方さん総悟、俺と、
万事屋の銀時、神楽、新八だ。
沖「近藤さ〜ん、しっかりしてくだせェ」
『近藤さ〜ん』
そんな天人如きに魘されるなんて・・・ゴリラだな。
と、意味わかんねー事を思いながら、近藤さんの様子をずっと見ていた。
沖「いい年こいてみっともないですぜ寝言なんざ」
近藤さんの一番近くに座る総悟。
だけど、心配してるようには見えない。
銀「昔泣かした女の幻覚でも見たんだろ」
土「近藤さんは女に泣かされても泣かしたことはねェ」
確かにそれはないな。
銀「じゃあ、オメーが昔泣かした女が嫌がらせしにきたんだ」
『あ、それだ!』
土「殺すぞテメー!!」
銀時と土方さんが話している間、
近藤さんの首を締めて鳴らす沖田。
ちょ、死ぬ!!死ぬ死ぬ!!
入ってるよ、それ入ってるよ!?
土「そんなタチの悪い女を相手にした覚えはねェ」
銀「じゃあ、何?」
土「しるか。この屋敷に得体のしれねーもんがいるのは確かだ」
第十訓 コンプレックスがデカイ奴は成す仕事もデカイ
新「…やっぱり幽霊ですか」
銀「あ〜?」
鼻クソを穿りながら話し出す銀時。
銀「俺ァ幽霊なんて非科学的なモンは断固信じねェ。
ムー大陸はあると信じてるがな。」
その手で神楽の頭を強く撫でた。
いや、撫でたというか・・・拭いた?
神「?」
否疑問符じゃねーよ!!
汚ねーよ!!その鼻クソ穿った手で頭触られたんだぞォ!!
銀「つき合いきれねーや。帰るぞ」
新「・・・・・・何ですか、コレ?」
銀時は新八と神楽の手を握っていた。
その様子を痛い目で見る全員。
銀「てめーらが怖いだろーと思って気ィつかってやってんだろーが」
神「銀ちゃん手ェ汗ばんでて気持ち悪いアル」
無言になる皆。
そして総悟と俺はにやりと笑いあった。
「『あっ!!赤い着物の女!!』」
指差して同時に叫ぶ俺達。
それを合図に銀時は大きな音を立てて押入れに飛び込んだ。
新「・・・何やってんスか銀さん?」
銀「ムー大陸の入り口が・・・。」
沖「旦那、アンタもしかして幽霊が…。
土方さんコイツは・・・アレ?」
隣にいると思っていた土方さんがいなかった。
土方は床の間にある壷の中に入っていた。
沖「何をやってるんですかィ。」
土「・・・マヨネーズ王国の入り口が…。」
「「「『……』」」」
俺達は一斉に後ろを向き、歩き出した。
銀「待て待て待て!コイツはそうかもしれんが俺は違うぞ」
土「びびってんのはオメーだろ!
俺はお前ただ体内回帰願望があるだけだ!!」
体内回帰願望って何?
どーゆー願望だよ…
神「ムー大陸でもマヨネーズ王国でもどこでもいけよくそが。」
神楽はさげすんだ目をして二人を見据えた。
だが、同時に視界に入った物に固まり、瞳孔が開いてゆく。
神楽に続き、新八、総悟と・・・同じ物を見て固まる二人。
土「なんだオイ」
銀「驚かせようとしたってムダだぜ 同じ手は食うかよ」
あ…ご登場だ・・・。
「……しつけーぞ」
二人の声は今の彼らの耳には入らない。
新「ぎゃああああああ!!」
新八は悲鳴をあげ、
彼ら三人とも、そのまま走って逃げていった。
「「オッ…オイ!!」」
呼び止める二人。
だが、誰も止まらない。
やっぱり俺も行かないと不自然だから驚くふりをしてその場から逃げてみた。
「「ギャアアアア」」
少し離れたところから、二人の悲鳴が聞こえた。
だが新八は落ち着いて物事を判断する事だけでなく、周りの音もろくに聞けていなかった。
新「みっみっ見ちゃった!ホントにいた!ホントにいた!」
神「銀ちゃああん!!」
後ろを振り向かず、ひたすら走りながら自分の上司を呼ぶ神楽。
沖「奴らのことは忘れろィ、もうダメだ。」
総悟の言葉に付け足すように、俺は神楽に向けて親指を立てた。
四人の中で、一人だけ平然としている。
なんとも奇妙な光景だった。
―ドォンッ―
後ろから爆音が聞こえた。
咄嗟に同時に振り向く俺達。
「「うおおおおおおお!!」」
さっきいた部屋から二人が雄叫びを発しながら必死に走ってきた。
新「きっ…切り抜けて来た」
驚きを隠せない新八。
だがその二人の背中には・・・・・・
新「いや待て、しょってる!?女しょってるよ。オイ!!」
それを見た瞬間恐怖に怯える新八。
神楽も総悟も、必死に走り続けていた。
新「こっち来るなァァ!!」
自分達から逃げる様に走る彼らを見て、銀時と土方は疑問に思い出す。
土「なんで逃げんだお前らァァ!!」
後ろで聞こえる二人の口論が段々遠くなって行く。
必死に走って数分後、
屯所を走り回って、倉庫の様なところに逃げ込んだ。
「「ギャアアアアア」」
二度目の彼らの悲鳴を聞いた。
先程よりも、恐怖が募っている。
新「やられた・・・今度こそやられた」
座り込み、頭を抱えながら呟く新八。
沖「しめたぜ。これで副長の座は俺のもんだィ」
新「言ってる場合か!」
沖「誰か明かり持ってねーかィ?あっ!香取線香あった」
カチッとライターで蚊取り線香に火を付ける総悟。
ライター持ってるならそれでいいじゃんか・・・。
香取線香のどこが明るい?
その淡い蚊取り線香の光を見つめていると、総悟が俺に言った。
沖「は怖くねーんですかィ?」
『へ?』
沖「だってさっきから一度も驚いたり恐怖の傾向がねェ」
『あ〜…怖すぎて逆に怖くなくなった…みたいな?』
最初から結末を知っているものを怖いとは思わないだろう。
確かに、襲われたら怖いものは怖いが。
『って事で俺ァちょっと見てきます』
蚊を捕まえにね。
後ろから呼び止める声が聞こえたが、俺は聞こえなかったように無反応で出て行った。
沖「・・・いっちまった。ホントに女か?」
沖田がつぶやいた言葉は誰も聞いてなかった・・・。
***
「ぎゃああああああああああ!!!」」
俺が彼らを離れて数分後。
そこから大きな悲鳴が聞こえた。
あぁ新八か・・・。
惜しいことしたな・・・。
あの二人が気絶するとこ見たかったな。
そんなことを今更思いつつも、
さってっと…
蚊の天人は何処にいんのかな?
『あぁ、うぜェ…』
庭を探し回っていると、
目の前をプンプン飛び回っている蚊に苛立つ。
そういえば、蚊が煩い時にあいつら同時に叫ぶんだっけ?
確か・・・
「「うるせーって言ってんだよ。プンプンよォォ!!」」
あ・・・・マジでジャストタイミングで出てきた・・・。
池と草の中から出てきた二人。
それは・・・え〜っと・・・一応隠れてたって事だよね?
二人の様子を見ていると、何やら口論が始まったのでとりあえず行くことにした。
だってアイツらんとこに来るはずだから…
『オーイ!!銀時ィ!!土方さーん!!』
「「ぁ゛あ゛?」」
口論が一旦途切れ、睨みつけられる俺。
怖ッ!?
めっちゃ威嚇の目だったんですけど!!
「「なんだ・・・か…」」
さっきまでの表情は何処へやら・・・
つか、なんだとは何だよ…。
『折角助けにきてやったのに…』
なんか、不満いっぱいです、俺。
わざわざ助けに来てあげたのにさ。
まあ、別に俺がいなくてもすぐ解決するんだけど・・・。
楽しそうだったからってのが本当の理由。
土「ぁあ!?誰が助けてほしいっつったよ!!」
『俺がいー事教えてやろうと思ったのになァ〜』
「「いー事?」」
俺のセリフに食いつく二人。
やっぱり、幽霊怖いのね、貴方達。早く倒したいのね。
そのとき、一段と大きな蚊の羽音がした。
「「『なんだ、うるせーな!!』」」
叫んだ声が綺麗に重なった。
だが、そんな事感動してる場合じゃなかった。
で、出たっ!!!
「「……」」
開いた口が塞がらないとはこうゆう事だろう…。
二人の時は一瞬止まっていた。
土「あんなんありかととと飛んでんじゃねーか!」
銀「おおおお前ひょっとしてびびってんの?」
瞬時に地面に体を伏せ、
怯えてしっかりと声が出ない中、会話を続ける二人。
土「バババ馬鹿言うなおおお俺を誰だと思ってんだテメェ」
『あらあら、二人ともびびっちゃって・・・。
コレだから今時の若いモンは・・・』
ただ一人、其処に立つ俺は胸を張り、目標を目で捉えていた。
「「びびってねェ!!お前俺より若いだろがァァ!!」」
怖いのに、ツッコミご苦労様でした。
刀にしようか・・・それとも・・・。
そんな風に考えつつも、久しぶりに暴れられる事に欲望が生まれる。
そんな中、ゆっくりと立ち上がった二人は未だ口論をしていた。
銀「じょ…上等じゃねーか。
じゃあお前は奴をひきつけろ。
俺はあの、アレするから」
土「おいイイイ!!
アレするからって何だァァ!エスケープか!?」
銀「ちち違うってあの・・・バズーカで撃つ」
土「バズーカなんてどこにあんだよ」
この言葉を待っていた俺。
聞いた途端に声を強く発した。
『任せろ!!俺が何とかすっから!!』
だが不満そうな土方さんは俺に言う。
土「お前が何できるってんだ!!」
それはもちろん・・・。
『バズーカで撃つ』
土「だから言ったろ!!バズーカなんてどこに…―――」
―バゥウウウウンッ――
俺は天人に向けてバズーカを撃った。
天人はバズーカに直撃し、鈍い音を立てて落下した。
撃った衝撃で一瞬倒れそうになるが何とか体勢を戻す。
そして、気取って銃口に息を吹きかけた。
「「・・・何でもってんの?」」
本当にこいつらはなんでこんなにも似てるんだろう?
似すぎてるよ、本当に。
『準備したから』
天人に背を向けて話し出す俺達。
だが、再び奴の気配を感じた。
冷や汗を掻きながら、そっと振り返る俺。
「「『ゲェェエ!!起き上がったァ!!』」」
天人はしっかりと起き上がり、
さっきのはよく効いたのか、よれよれになりつつも空を飛んでいる。
銀「何で生きてるんだよォ!!」
『土方さんが総悟の撃ったバズーカで死なないようにコイツも死なない・・・か・・・。』
ふぅん、勉強になった。と呟く俺。
隣で焦る二人がいた。
銀「やっぱりさっきの作戦で行こう!!」
土「テメーだけ逃げようたってそうはいかねェ!」
土方が銀時を掴んだ。
同時に俺はわくわくしてきた。
アレが生で見れる!?
銀「何してんだテメッ―――」
土方さんは銀時を掴んだまま、蚊を巻き込み・・・・・
決めたァ!!
銀「ごぶェ!!」
銀時は異様な声を発しながら気絶した。
あちゃー・・・ちょっとあれは痛そうかもしれない。
大体・・・・・・”ごぶェ”って何?
土「敵前逃亡は士道不覚悟だ。
もっぺん侍道をやりなおすんだな。」
だが、銀時はゆらりと起き上がった。
驚く土方さん。
アレくらって気絶しないのは銀時ぐらいだろう…。
否…この世界の人はみな平気なのか…。
銀「何しやがんだテメェェェ!!」
銀時は、気絶したアレを肩の高さまで抱えあげ、土方さんに向かって投げつけた。
土「ぶを!!」
銀時力持ちだなァ〜・・・
そんなでっかいモン投げられるなんてェ〜
と暢気な事を考える俺。
あ、もうこのイベント終わっちゃったか。
アレ?俺さっきから状況の感想しかしてないなァ…。
銀時は地面に向かって唾を吐いた。
銀「俺に侍道を説くなんざ百年早いんだよ」
其処で気づく。
銀「…アレ?」
まァ…幽霊なのに実物あるのはおかしいわな…。
そろそろ新八が気付いて皆を呼びに行ってる頃かな?
原作にはそんなシーンなかったけど、今俺はその世界にいるんだ。
略されるわけない!!
今いる世界がいきなり夜から朝にとんだら変だろ…。
アレ?何で俺論理的考えなんだ?
ん?論理的考えの使い方あってる?
もう訳わからんくなってきたよ…
『さァて・・・天人さんを運びますかァ』
銀時に向かって言うと、驚いた様な顔で問うてきた。
銀「知ってたのか!?」
『おう』
銀「ならもっと早く教えてくれよ…いつから?」
『最初から・・・銀時達が来る前からさ!!』
***
蚊「あの〜どうもすいませんでした〜」
蚊の天人の前には隊士達が。
そして先頭には近藤さんが立っていた。
蚊「私地球でいういわゆる蚊みたいな天人で
最近会社の上司との間にできた子供を産むためにエネルギーが必要だったんです」
自分がしていたことの説明をする蚊の天人。
周りが明るいのに、何でこんなにも怖いんだろう、この人。
蚊「私強くなりたかったの」
先程よりも顔が怖くなった。
一歩退く近藤さん。
近「スイマセンその顔の影強くするの止めてくれませんか」
その時、俺達は・・・
銀「・・・ったく幽霊にしろ蚊にしろハタ迷惑だってぇの」
土「ハタ迷惑なのはテメーだ。消えろ」
やっぱり銀時と土方さんは口論を続けていた。
仲いいんだか、悪いんだか・・・?
銀「オメー俺の一撃が全てを解決したことを忘れたか?」
土「何言ってんだテメーの前に俺の一撃で全て決着ついてたんだよ」
銀「びびりまくってたくせによく言うぜ
まさか鬼の副長と恐れられる男がオバケを恐れてるとは・・・お天道様でも思うめェ。」
『ズズッ』
二人が口論をしている間…俺はのほほ〜んとお茶を啜っていた。
ん〜、いいお茶だ。
土「アレはびっくりしてただけだ。
お前は明らかにびびってたけどな!」
銀「アレはお前企画にのってやっただけだ。
俺はこーゆーの好きだぜこれから毎日やろーか。」
『はいはい…ズズッ』
これをどんぐりの背比べと言うのだろうか?
とりあえず、もういいから君達。
―ガラッ――
「銀ちゃんにお客様…!」
突然襖が開き、中から神楽がやってきた。
二人はそれにビビって、床下に潜り込む。
神「何やってるアルか二人とも」
「「コンタクト落としちゃって・・・」」
『ズズッ』
全く何やってんだか・・・。
こいつら真剣に可愛いな、オイ。
『神楽・・・・・・銀時にお客様?』
湯飲みから口を離して問いかける。
神「そうアル!!毛玉が来てるアルよ!!」
その名前に反応して、銀時は起き上がった。
銀「毛玉ァ??」
あァ坂本か・・・。
え、坂本!?なんで!?
銀「坂本のことか?」
神「そんなような名前アルな…」
『なあなあ、なんで??』
理由は分からないが、
未だ会ってなかったし、会いたいと思う。
何よりも、なんか面白そうだし。
土「坂本って奴は連行されてきたんだよ」
「『連行!?』」
俺達がよく分からず答えを求めると、
土方さんは煙草をくわえ…火をつけた。
土「そいつの宇宙船が近所に落下してきてなァ・・・。
そばにあった家ほとんど壊しちまったから」
そのセリフで一同皆納得する。
「「『あ〜…なるほど』」」
よくやるもんなアイツ…。
万事屋破壊してないといいけど。
神「毛玉が言ってたアル。
”この辺に万事屋金ちゃんって家があるじゃろ連れてってくれんかの〜”って…。
だから私”ここにいるアルよ”って教えたら連れてきてくれって…」
銀「おいおい・・・…今度は何だよ・・・?ったく・・・」
頭を掻きながら面倒くさそうに銀時は言った。
『何か面白そ〜』
これから起こることを楽しみにする俺。
だが、まさかあんな事が起こるとは・・・。
予期する事ができたのは・・・たった一人だけだった。
NEXT
〜後書き〜
次回は…そんなことあるの!?
トリップ夢ではそうない…否ない?展開に!!