『か ん ぜ ん ッ・・・・・・完全ふっかーつッ!!!




午前10:32。
一応女と思われる逞しい声が辺りに響き渡る。

先程町の小さな病院に行ってギプスを取ってもらったばかりだ。
暫くは安静にしろとの事だが、
病院を出た直後からはぐるぐると右腕を振り回し始めた。


痛みの感じない右腕に喜びを感じ
軽やかな足取りで真選組に向かう。

筋肉痛すらない体。
嬉しさのあまり、手当たり次第に出会った隊士にウザ絡みをしていた。


のいる真選組屯所は今日も騒がしい。










第十四訓 調子に乗ると周りを見えなくなるなら調子に乗らなきゃ見えるっていうのか?ぁん?










『長らくお待たせしましたッ!!みんなのアイドルきゅんが無事帰還しましたーッ!!』


真選組の食堂に隊士達がぞろぞろと集結していた。
彼らの手にはジュースのコップが握られ
目の前には美味そうな食事の皿が置かれていた。


そう……。
これは俺の復活ぱーちぃーだッ!!!


ィエーっ!!
ドンドンドン
パフッ♪


心の中で盛り上がってみる。


…だって誰も言ってくれないんだもん。
誰も言ってくれないから仕方ないんだもん。



か、悲しくなんてないやいっ



とにかく今日は俺の復活祝賀会みたいなもんだった。
長かったギプス生活から解放され、全身が楽になって俺はテンションアゲアゲだ。



土「誰も待ってねーが・・・確かにかなり遅かったな」

沖「何せ5ヶ月音信不通でしたからねィ」

『ちょ、そーご君。それ言わない約束★


ちょん、と総悟の鼻の頭に指先で触れてみる。



沖「うぜー・・・触んなキモい」

酷い言葉で返ってきた。
だが俺はそれを華麗に避けて受け流す。



何せ今日の俺はっ

テンションアゲアゲだからッ!!



午後から仕事があるので酒は厳禁。
隊士のみんなは酒が飲めたらいいのにと愚痴をこぼしながらも
なんだかんだで俺の事を放ってわいわいしていた。



近「折角が元気になったんだ。みんな、盛大に祝ってやろう」

榛「良かったですね、副隊長」

『うん、れーちゃんありがとうな』

近「え、俺は?俺は無視ッ!?」



いやーホント。
料理うめーしジュースあるし
さらにはれーちゃんの笑顔っ

サイコーだねッ



近「なあ俺は?」



そんなこんなでパーティーは楽しいまま数時間で終了し
隊士達はそれぞれの自室に戻って行った。


近「なあって・・・泣くよ?」



俺も午後から早速仕事があった。
市中見廻りと軽い警備だ。
なのに酒を飲ませようとする総悟。


ヤツを振り切り走って自室に向かうと
その道で険しい形相をした鬼の副長に出会った。



『土方さん・・・?』

土「あ?ああ・・・か」

『どうしたんですか?今にも血管が千切れそうな顔してますが』

土「そう簡単に血管は千切れねーよ。じゃなくて、見ろこれ」

『え?』



土方さんが指差したのは副長室だった。
促されるまま部屋の中を覗いてみる。



土「ひでーだろ」

『確かに酷いですね・・・』



中はめちゃくちゃだった。
引き出しという引き出しが開けられ
中に入ってたであろうものは外に散乱していた。



『これって・・・泥棒っすか?』

土「わからねぇが、可能性は高いな。
俺が普段肌身離さず持ち歩いていたライターが無くなってる」

『え、あのマヨライターですか』

土「そうだ」



あんなマヨライターいる人いるんだろうか?
真選組屯所の中で最も危険な場所に潜り込んでまで
そんなヤニ臭くて油ぎっとぎとなライターなんて欲しいもんだろうか。



土「ヤニ臭ぇのはまだいいとして、油ぎとぎとなワケねーだろ」

『なんで聞こえてんすかエスパーっすか』

土「なんかそんな感じしたんだよ」

どんだけ凄いんすかアンタ。
俺はてっきりいつもの如く口に出してんのかと思いましたよ』

土「珍しい事もあるもんだよな」

『ホントっすよね。ここに来て俺の設定殺しですもん』

土「それこそタブーだろ、オイ」



まあそれはさておき・・・



土方さんの部屋に泥棒が入った。

盗まれたのは土方さん愛用
マヨネーズ型のライター(全体に油仕様)だ。



誰がそんな不必要なものを……。




これは調査してみなくてはっ!!


くーっw
なんか楽しそうだぜ。

って、他の部屋や俺の部屋が無事かどうかも一応調べないと。
自分で言うのもなんだが、危機感ないな。




土「そういえばだな・・・」



思い出したように土方さんが口を開く。
俺は何だろと思い、土方さんの顔を見た。



土「この頃誰かに見られてる気がするんだ」

『なんですか、被害妄想ですか

土「ちげーよ、ホントだっつの」

『やだなぁ、自分がちょっと・・・いやかなりイケメンだからって
ストーカーに付き纏われてるなんて錯覚起こしちゃうなんて』

土「けなされてんのか褒められてんのか微妙だぞ、おい」

『ただの皮肉っす』



どうせっ
どうせ俺はっ

誰かにストーカーされることはおろか
モテたり誰かに惚れられた事すらないんだからなッ

告白とか・・・されてみてーッ!!!




自分のモテない悔しさと空しさに脱力し
一気に全身から力が抜けた。





土「しかしまあ・・・どうにかしねーとな」



床で這い蹲ってる俺を無視し土方さんは考え出した。
俺はそこでやっと生きる気を取り戻し、立ち上がる。



『部下に捜査させんのもなんか・・・面目ないですもんね。
みすみす侵入者を許してしまうなんて』

土「言うな、アホ」




これはやはり・・・
さり気なく確認してみて他に被害がなかったら
土方さんのプライドの為に少人数で捜査すべきだな。



『んじゃ行きましょうか』

「どこに行くんでィ」



え。――・・・



『ぅおッ!!?』



気付かなかった。
俺のすぐ後ろ、振り向いたらそこに麗しい顔があった。

驚いて若干飛び跳ねてしまった。
我ながらリアクションが古いぜ・・・。

おっと、いつもの事とか言うんじゃねーよ?
結構気にしてるんだからっ



『総悟、いつから?』

沖「が来る前からでィ」




んなアホな・・・。

だって・・・え?
隠れるとこなんてなかったよな!!?


見てみると、土方さんも驚いている。
どこに忍んでたんだコイツ・・・。




沖「で、どこに捜査頼むんでィ?」

『・・・・・・忍者かυ』



本当に気の抜けないやつだな、と改めて思った。










***





『というワケでここに依頼に来た、と』

銀「というワケって・・・話はしょり過ぎだろ。
来て早々コレだもの。何も説明してないよちゃん」



土方さんと総悟を連れ
屯所を出た俺は事件解明を万事屋に依頼しに来ていた。

市民の泥棒被害は警察が対処するなら
警察は誰に依頼すればいい?

と考えた結果俺の頭の中で出された答えはこうなったのである。



土「何でよりによってコイツらなんだよ。もっと他にいいとこあったろ」



連れてこられた土方さんは何やら不機嫌そうである。
まあ、犬猿の仲というか、腐れ縁というか。



『いやー近かったから』


てへ★
舌を出して首を少し傾げてみた。
おまけに頭にコツンと1つ。


土「てへ★じゃねーよ!!古ぃんだよ。
つかかわいくねーんだよ、鳥肌が出たわ」

沖「俺のHPが半分くらいにマイナスされたぜィ」

『HPなんて、そんな目で見えないアバウティーな・・・』

銀「聞いた事ねーよアバウティーなんて言葉」



銀時のさり気ないツッコミが入る。
さり気なさすぎて、
そこら辺に漂う空気にナチュラルに溶け込んでしまった。


というか・・・
万事屋久しぶりじゃね!?

銀時いつ振りに喋ったよ!?



『まー、皆さん。
そこまで言わなくたっていいじゃないすか。
てかなんかいつもより よーツッコミしはりますな』


土「どこ出身だテメーは。
だいたい近くに新しく探偵事務所できたろ。
オープン記念的な感じでまけてくれんじゃねーか?そっち頼めバカ」

『あ。』




そうだった。

そういえば俺が療養中に、近所に探偵事務所ができたらしいのだ。
そんな噂を小耳に挟んだ覚えがあるが、スッカリ忘れていた。




土「あ、じゃねーよ。あーまじ萎えるわ」

『土方さんイライラしすぎです。キャラ変わってません?




大切なマヨライターを盗まれた上に
出会い頭に喧嘩が始まる銀時のところに連れて来られ

土方さんが完全にイライラモードである。


そろそろ何とかしないとリミッターが・・・。




土「とにかくこんな奴らに頼むのは癪だ」

沖「いいじゃねーですかィ、アホでも駒くらいにはなりまさァ」

銀「ちょ、蚊帳の外にされてそこまで言われるとなんか傷つ…」

『まー体だけは丈夫なんで、よしとしましょうよ』

土「・・・それもそうだな」

銀「人の話聞いてる!!?





さっきから視界にちらっちら映って突っ込んでくる銀時を
完全にシカトしながら俺は土方さんを宥めた。


それにしてもよー
本当にマヨライター・・・・・・いらなくね?



『面倒だけど、つーわけで頼んだ』

沖「万事屋の旦那方、頑張ってくだせぇ」

『そうそう、頑張れよ万事屋・・・て、あ。俺も万事屋だった

銀「あ。」



やっべー
そうかそうか・・・俺も万事屋だったんだ。

最近めっきり真選組の仕事ばっかやってたし
療養中も反省文だったり書類整理とかやらされてたし

あんまり帰ってくる事なかったから
自分が万事屋でもあるって事、すっかり忘れていたみたいだ。



うん。
うん。


う・・・・・・・・・ん?



今、『あ。』つった!?





ちょっと待て。
俺も自分の事ながら忘れていたが

銀時さん・・・?
銀時さんもしや貴方・・・貴方までも忘れていらした・・・?



鋭い眼光を走らせた俺の顔は
ぐいんっ―と勢いよく銀時に向けられた。

一瞬銀時の顔が引きつった様に見えた。



銀「そ、そうだよ、忘れんなよ

沖「・・・旦那も忘れてたんじゃねーんですかィ?」

銀「な、なんの事かなー・・・υ」




完全に忘れてたよコイツ。

そして今度は土方さんの存在も忘れてたよ俺。



思い出して土方さんがいるであろう場所を見てみると
先ほどと一寸違わずその場に立っていた。



ちょっとくらい動こうよ、土方さん・・・。






銀「とにかくよ、も万事屋なんだ。手伝えよ」

沖「貸出料は?
ギャラは?

銀「何で依頼者がギャラ求めてんだ




今日の銀時はツッコミ率が高い。

そうは思った。




土「何でもいいが、やるからにはちゃんよやれよ」




『仕方ないですねぇ・・・。



この名探偵くんが

どんな不可解難問事件も万事解決だッ★』






というわけで・・・。


万事屋としての久しぶりの仕事が入りました。


土方さんのストーカーを探し出し、
捕まえた上でマヨライターを取り返す。

これが今回の依頼・・・――。






追う者と追われる者の壮大な闘いが・・・いま、始まるッ!!!






『みんな、次回をお楽しみに★』




銀「誰に言ってんだ、おい」





スパンッ―・・・

スリッパの爽快な音と共に頭が揺らいだ。





『何もスリッパで殴らなくとも・・・』




ベタだなとは思いつつも

ツッコミの人達は一体どこからそれを出しているんだろう

という疑問が揺れる頭を過ぎった。





NEXT



〜後書き〜

またもやまたもやお久しぶりです。
約5ヶ月ぶりの更新でございます。
品岡建設の話が始まってからあと2ヶ月で2年になりますね。
一体どんだけ長い間怪我負ってんだよってね。
そんな大怪我だったら入院しろよってって話ですよね。
更新しろよって事ですよね、本当すみません。

本当はこの話1話で完結するつもりでしたが
管理人の諸事情により、分ける事にしました。
忘れないうちに書きたいと思うので・・・早く更新するように努めます。


では、第十五訓もよろしくお願いします。





良ければポチッポチッと。二回お願いします(*´∇`*)
感想下さると嬉しいな〜なんて・・・思っちゃったりしてます。


2010.12.24 風雅 漣