第一訓 過去について思い出す時は自然とにやける



「一本!!」

道場に響く審判の声
そして一斉に沸きだす歓声。

客席の中心に
その一本を取り、汗を胴着の裾で拭うがいた。




第一訓 過去について思い出す時は自然とにやける




沙「お疲れ!」

沙希が試合の終わったにドリンクを差出しながら声をかける。

『う〜・・・うん。疲れたぁ・・・。』


久しぶりに暴れた。気分爽快!

は家の道場を受け継ぐ者。
本当は兄貴が受け継ぐはずたったのだが、今は別世界にいるので俺が引き受けた。

だから俺を負かす奴は現れない。
だが今日、骨のある奴に出会った。

名は沖田総一郎。
名前を聞いた瞬間笑いが零れた。

沙「何にやついてんの?勝つのはいつものことなのに・・・そんなに嬉しい?」

『んにゃ。何もねーよ。』


懐かしいよ。その名前。
かつての仲間を思い出す。否、今でも仲間だけどな。

名前が似てたからいっちょやってみっかと軽いノリで勝負をしてみたら、案の定強かった。
それでも、俺の知ってる奴と比べれば弱い。


体・・・鈍ったかな?


そんなはずは無い。普段稽古は欠かさずやっているのだから。
じゃあ、何でだろう。こんなにも梃子摺ったのは。




もしかしたら・・・



心の中で動揺していたのかもしれない。









・・・総悟・・・…。










会いたいな、総悟に。
会いたいよ、皆に。

皆今頃何やってんだろ〜な。



皆と別れて半年。
短い様な長い様な。


とにかく、寂しくないと言ったら嘘になる。
会いたいよ。



悲しみに触れてる時間、それが嬉しさにも感じていた。
皆を思い出す時間が、俺にとっての幸せだった。


一人懐かしんでいると、辺りが段々騒がしくなってきた。


『ん?どうしたんだ?』

沙希に聞こうとしたが、目の前に居ない。


ありゃ?


え〜っと・・・この状況はどうなんだ?







「死ねぇええ土方ァァアアアア!!」
「お前が死ねェエエエ!!」



ビクッ。体が揺れる。
げ、幻聴か?
土方?・・・土方さん?


後ろで聞こえた叫び声に、咄嗟に振り向く。
だが、其処には俺の想像した人物は居なかった。


其処に居たのは、先ほど負かした沖田総一郎。


「だーかーら!早く死んでくれ。
俺がと戦って勝てたら死んでくれるって言ったじゃねーですか!」

"言ってねぇ!!誰が言ったァ!!つか、お前負けたじゃねぇか!"


沖田総一郎という男の手には携帯電話が握られており、電話の相手は土方という男みたいだ。


・・・まぐれ?


顔は違うし、声だって・・・

「別にんな事関係ねーや。とにかくこの世から消えろ。」

"お前が消えろ。"


ん?似てるじゃん。
口調は違うけど、声と名前がソックリって・・・。


もしかして・・・・・・前世ならぬ、後世?


驚いてボーっと口を開いたまま沖田二世(仮)を見る。


「あ、土方さん知ってますか?
煙草ばっか吸ってるとニコチン中毒になって歯がボロボロになっちまうんですよ。
そのまま体もボロボロにズタズタになって死んでしまえ」

"聞こえてんぞぉ総一郎!!"

「聞こえるように言ったんです。」

"いっぺん死ぬか、コルァ!!"

「土方さんが死んでくれたら」

"死ぬってか?"

「意気揚々とバカンスを楽しみます」

"アホかぁ!!意気揚々とって自分で言ってんじゃねぇ!!"



・・・ププッ
この二人のコントが懐かしく感じる。
オイオイ、マジでソックリじゃんか。

沙「ね、

沙希が俺の袖を掴む。いつの間にか戻っていた。

『沙希、何?』



沙「・・・総一郎君って、銀魂の沖田にソックリだね。」

『・・・だな。』

にっと笑う。思い出させやがってコノヤロー。
でもま、この会話を暫く聞いているのもいいかもしんね。


『じゃ、そろそろ帰るかな』

更衣室に向かおうと歩き出す。だが、それは沙希によって阻止された。

沙「待って。そうじゃなくて、言いたい事があったんだって。」


あの会話聞いて腐女子としてどうしてもその話題についてと話したくなったのと言う沙希。

あ、俺気持ち分かるかも。
本題から反れてでも、自分の言いたい事を言いたいんだろう。

沙希も、それで本題から反れてしまったらしい。


沙「・・・なんかね、怪しい人がの事呼んでるの。」


沙希は声を潜めて言った。表情や声からして真剣だという事が伝わる。
きっと本当なんだと悟った。


『怪しい人?どんな?』


別におかしいわけじゃない。時代の後れた道場破りなら俺を狙って学校まで来た事はあるんだ。
いつかはヤクザがやってきたりもした。

だけど、ソイツら皆捻り潰したんだ。怪しい奴だって別に怖くない。


沙「・・・なんか、黒いサングラスにスーツを着たいかにも怪しいって感じのオッサン」

『うっわ。ソレ、そうです私が怪しさストライクゾーンのオッサンです。敵な?』

沙「、例えが分からないよ。
つか、ソレが今考えた言葉だよね?」

『あ、バレた?』

沙「はバカだもん」

『いや、理由になってねーから』


呆れた顔をしてみる

でも、最初にボケたのは自分であるから、なんか異様な感じ。
ま、いっか。







沙「とにかく、肛門で待ってるって。」

『なあ、校門な。校門。それじゃウ○コ出ちゃうから。
ウ○コが出るのを待ってるみたいだから。女の子がそーゆー事言っちゃダメ。』


沙「否も一応女だから。」

『正しいツッコミありがとう』


俺はそう言うと沙希に背を向けた。
そして首にかけていたタオルをその辺に掛け、歩き出した。


胴着汚すの勿体ねぇから着替えてこ。
別に俺が行くと言ったワケじゃないから時間かかってもいいだろう。


『海斗ぉ!!』

俺の親友の片方である榛原海斗を呼ぶ。

海「ん?何だよ。」


海斗は小走りでやってきた。同じ剣道部である海斗は半年だけで身長がまた伸びていた。
黒い胴着がかなり似合っている。

俺も黒が良かったな。

白色の胴着を着ている俺は結構羨ましかったりする。

あ、どうでもいいことを考える暇じゃなかった。


『ちと出るから後はよろしくな』

古臭いポーズ。ピースを頭の上で作りウインクをした。
海斗はああと一言呟くと、俺のピースをしている右腕を掴んで下ろさせた。


海「また来たか。」

『ん〜・・・なんかお初の相手みたいで・・・。』


俺が苦笑いを浮べると、海斗も笑い返した。


海「へぇ〜ま、怪我すんなよ〜」


海斗は俺の頭をポンッと叩いた。
今度は俺が背を向けられ、海斗はしゃきっとしろ〜と叫んでいた。


ま〜海斗は俺が居ない間主将を努めてくれたんだ。
俺よりも向いてるかもしんねぇ。


『さてと。行くか。』









***

胴着を脱ぎ、この世界に帰ってから制服を着る様になった俺はズボンを穿き、シャツをだぶだぶに着る。

俺はキツいのが嫌いだ。
しかも、スカートなんて真っ平御免被る。
だから俺は学ランの前を明けて着ていた。


『校門つったよな・・・・・・。居ねぇじゃん。』


は?何?騙された?
え、嘘?
沙希が?沙希って人を騙す人だった?
いや、確かに騙すけどもね
でもねでもね、此処までこったことはしないよっ。
ね、言って。本当だと言って。


校門の外に出て辺りを見渡してみる。
右を見る。誰も居ない。
じゃ、左か・・・?

そう思って振り向いた時だった。
黒い影が視界に入る。明るさが消えた。
一瞬見えた光景が遮られ、俺は目隠しされた。


『んなっ!?何だ!?誰だ!!』


振りほどこうとする。
やはり、一応は女の体。男の力には負ける。
解こうとしても解けない。


『バッカ。誰だテメェ!!』

暴れる。無理矢理解こうと試みる。


「ちょっ、暴れんなバカ。俺だ俺っ!!」


男が口を開いた。と同時に視界が明るくなる。
そしてその男を凝視した。


ゲ・・・。


「も〜。折角だ〜れだ?つって再会を祝そうと思ったのに。」

『コレの何処が再会を祝すだ。クソ兄貴っ!!』



そう。
俺に会いに来たのは

今江戸にいるはずの
今銀魂世界にいるはずの










クソ兄貴だった。





NEXT



〜後書き〜
始まりました!!「Positive thinking」続編「Malicious」
連載から離れてまだ1ヶ月とちょっとしか経ってないのに書き始めてました。
これからもぐだぐだとのんびり更新していこうと思うので、よろしくお願いします!!



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2007.07.15 風雅 漣